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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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5日目 会議の準備はだるい

 メヌールは私が協力することを聞いて満足そうに頷くと家の扉を開け放ち、見張りの軍人に声をかけた。


「まぁ、聞いていた通りだ。全員で清められたくなければ村長たちと副部隊長殿を連れてきてくれ。ことは正義だとかそういう話ではないのだ」


 立ち聞きしていたらしい見張りは血の気の引いた顔をしている。メヌールは最初から彼に話を聞かせるためにも回りくどい話をしていたようだ。


「見張りより大事な報告義務がでたので離れても良いのではないかな? ダークエルフ容疑者と司祭が手を組もうとしている。君一人が見張るより報告に繋げる方が有意義では?」


 弾かれたように見張りさんが走り去る。かわいそうに。


「かわいそうになってきました」


「邪魔者なしでする話もいるからの。村長宅へ向かいながら話そう」


 教会の枷から解かれたメヌールはなんというかえげつない。




 村長宅へ向かう間にメヌールは私の使える魔法の確認をしてきた。こういうのは使えるかと言う質問に全部イエスで答えると、できないものはないのかと呆れられる。基本的にイメージがあればできないことはそうないので。


「もう小細工なしで教会関係全てを迎撃したら良いのではないか?」


「それどころか小細工なしに魔法で転位して逃げる気でした」


 完全に呆れられた。転位なんてファンタジーだし大規模な範囲魔法を一人で連続攻撃できるのもファンタジー。もはや神話の生物か聖女でも目指しているのかという目で見られる。これ厨二病とか黒歴史をばらされた人を見る目だよね?


「正確な位置はわからなくても北へどれ程、南へどれ程という形で移動できます。メヌール司祭、いやメヌールじいさんは私と組む時点で目的は半分以上達成してますよ」


「逃走についてリスクが低いのは喜ばしいが、本当にもう教会に直接攻撃しても良さげじゃ。しかし、自分の秘技をそうペラペラと話すのはあまり良いことではないぞ」


「幾らでも逃げられますし」


 違和感無くしたり多分記憶操作もできますとは黙っておいた。




 休みをほとんど取っていないと思われる村長二人は私を見ると正反対の顔をしていた。ホラ村村長は力無くも信頼のある笑みで、本村村長は憎しみのこもった睨みである。


「ハラーコと話してきたのだがなんとでもなりそうじゃ。着地点を探そうぞ」


 入って早々メヌールの大雑把なしきりだ。どう見ても反対派のベッチーノは私から視線を外さない。


「メヌール司祭様、私は反対です。教会と争うのは貴族と争うことですよ。どこにも居場所がなくなる。それにハラーコはゾンビ発生の容疑者です。この者の思惑で沈む泥舟にしかならないでしょう」


 来る前に説得はできていないようで、未だに私がゾンビを作って騒動を起こしていると思われている。面倒臭そうなメヌールは村長に視線を向けて話を投げた。急にパスをもらった村長はもう何度も説得をしていたようで首を横にふる。


「ベッチーノに反意があるのであればもう見棄てるぞ? お前さんはもう何もせずにおるだけでいいのだ」


 ベッチーノとメヌールの会話を聞くにどうも本村に帰るなと言っているらしい。今の段階で話の詳細を知るのはホラ村だけなので清め対象もそれだけですむが、ベッチーノが本村に情報を持ち帰ることで清めの対象に本村も含まれる。時間経過によっては他の衛星村にも噂が流れて逃げ出すということが叶わない規模になるそうだ。

 生存率を上げるために村長とメヌールはベッチーノを引き留め、ベッチーノは賭けに出るよりちゃんと報告して点数を稼いだ方が良いという。既に清めの対象に入っているかいないかの差なのかもしれない。


「あの、ベッチーノさんをホラ村から出さなければ良いのですよね?」


 村長とメヌールが頷いたので魔法をかける。対象はベッチーノ、拘束する鎖をイメージ。あっという間にがっちり拘束されたベッチーノが転がった。


「なんと酷い魔法じゃろうか……」


「命かかってますからね、千人規模で」


 ドン引きされているが命がかかっているのに足を引っ張られたくない。外道だろうが酷だろうが、みんな助けて逃げるのみ。


「さぁ、村民の脱出についてちゃんと話し合いましょうか」


 村長とメヌールはひきつりながら頷いた。

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