28日目 妖精がいっぱい
日の出に合わせてルーナ姉妹を連れてくる。フタエ、ヨシミに加えてイツコとムツミと命名。即席妖精パーティの完成だ。ムツミはこの中で一番魔力が低く精霊神殿のお子ちゃま精霊の半分くらいしかないが、神経質で観察眼があるタイプらしいのでこのデコボコパーティの要かもしれない。
自己紹介もそこそこに妖精島からくる妖精が怖いのでファルシーラアリア本島の位置を目指して直ぐに転移をした。
なんというか遅かったっぽい。私たちがファルシーラアリアの港についた段階で二十を超える妖精がふよふよくるくるしており、エルフと思われる人たちが土下座状態でビビっていた。神様いっぱいって考えると天変地異だよなと理解して近場の玉に近付いてみる。
「おい、止めろヒューマン!」
エルフに止められたので人から玉に姿を変えた。失神しそうになられる。
「こんにちは。妖精島の妖精さんたちですか? 私は大陸のです」
自分でしていてあれだがこの声どこから出てるのだろうか。
「おお、サンドラたちに伝えてくれた子か」
「ヤベェ、でけぇ」
「主催者きたぞー」
玉がなんか言いながら集まってきた。お願いだから私が黒幕みたいに言うのは止めてくれ。沢山の玉がふよふよ一斉に近付いてくるのであちこちでビリヤードみたいなぶつかり事故も起きている。
「島の代表者の方っています?」
「いいや。ダークエルフのこともあるから君の話を聞いとけと言われたし強いて言うなら君を代表になんかかんかするとしか理解していない」
すごいアバウトな集まりらしい。これは酷い。
「とりあえずは妖精解放前にファルシーラアリア政府に拉致犯の監視か解体をお願いしにいきます。ので政府に伝えてくれますか? そこのエルフさんたち」
顔がないので微妙だが、エルフ宛と伝わったらしく何人かのエルフが走っていってくれた。話し合いがあれば天変地異回避と思ったかもしれない。
「返事がくるまで待機です」
大人しく待機、できるかな? あっちこっちでピンボールが始まっている。そして雑談も煩い。動けないエルフさんたちはその様子をみて血圧が下がりまくった顔をしている。
おさめたほうが良いのだろうがこんなに溢れる妖精なんて見たことがないしどうすりゃ良いのかわからない。おろおろしているとムツミが一人の妖精を捕まえて会話をしている。内容は拾ってみるに神に核を捧げることについてだ。
それは私も気になる。神とやらへのアクセスに関わるわけだし。
「ハラーコ、君はこっちじゃ。島妖精が港の一部をとうとう破壊したらしい。賠償してあげなさい」
代表者が他にいないのだから仕方がない。泣く泣く仲裁にいく。お願いだから大人しくしてください。
そんなこんなであちこちで上がる破壊報告を聞くたび補填にお金をばらまく作業をしていた。ついに待ち人である政府サイドからの使者がくる。ただ返事は望んだものではなかった。
「なんで会談拒否なのでしょう?」
呟いた言葉に妖精どもが反応した。
「わざわざ来たのになんだそりゃ」
「あれだ、国が何とかしてくれないのならこのまま神殿とやらにいこうぜ」
「政府にも同族いるんだろ? 俺話つけてくるわ」
あれやこれや言いながら一斉に消えていってしまう。
「あの……精霊神様たちは……」
エルフの使者が唖然としているが私だってこんな纏まりのない集団にビックリだ。人の形で待機して事故防止をしていたルーナシスターズも成人の記憶を持つのに自由人すぎる彼らが消えたことで口をあんぐり開けている。
「あー、使者殿。多分幾らかの精霊は城に、幾らかの精霊は神殿に転移したと思われる。私たちも奴隷にされたヒューマンがいる精霊神殿で死傷者が増えないように介入に行くのでこちらに連絡要員を待機させて置いてくれぬか?」
メヌールは死んだ魚のような目をしながら使者に伝えるとこちらを向いた。
「神殿にいこう。妖精がやり過ぎる前に奴隷と研究資料を破棄せねばならぬ」
援軍だったはずがトラブルメーカーが大量にきたでござる。ルーナシスターズを入れて暴れているかもしれない妖精の巣と化した神殿に慌てて転移した。