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27日目 ぬめ怒る

 ルーナちゃん姉妹もおらずメヌールと二人きり。さっき念話で話したことは考える時間がいると後回しにしたので、会話の中心はどうしても精霊神殿になってしまう。


 メヌールが読み取った中に大陸から持ち出したのかダークエルフ研究についてのものがあったそうだ。なので嫌でもまた回収のためにもう一度いかなきゃならないだろうなんて話になる。

 サンドラたちにいってらっしゃいと見送るだけというのもあの神殿を見たあとだと言いづらい。


「というよりも、サンドラたちを行かせたくないのう。妖精の幼さや数だけではなく人種問題が更にややこしくなる」


 ド定番と言えばド定番なのだが、人類から嫌われものを押し付けられたダークエルフを一番嫌っているのはヒューマンではなくエルフらしい。

 私やメヌールは利用価値があるかもしれないが、ダークエルフなんて見敵必殺火炙りの状態。優秀だとか計画に不備がないかとかの次元ではなくリスクが高過ぎるのだ。


「それって私たちだけで何とかするべきこととでも?」


「最新応用技術の中で重要そうなものは粗方持ち帰ったぞ。私の袋に入らぬ分の持ち出しをハラーコがしたあと焼却すればいいじゃろう」


 メヌール、あの情報収集と平行に大泥棒にジョブチェンジしていたらしい。ほら見てみろと取り出されるのは板や紙の山。よくわからない本や機械もある。


「サンドラに拠点を聞いて送ってやってくれ。攻撃魔法と兵器関連しか抜いてないが、まだ探さねばならんものがあるなら燃やす前に言うようにと伝言も」


 いやにメヌールが積極的だ。いつもは参謀ポジションで声がかけられるまで黙っているタイプなのに。


「えらく疑問の顔じゃな?何か足りなかったかね?」


「いえ、やけに積極的なので何に怒っているのかなと」


 機嫌が悪いことも指摘してみたらばつが悪そうに視線をそらされる。


「奴隷の活用法、ヨシミがいる時には言えなかった。ハラーコには隠せないじゃろうが、世に広げたくない話じゃ」


 口に出したくないそうなので手を伸ばしてみるとため息混じりに目を閉じて額を寄せてくれた。


 奴隷の活用法。それは家畜の品種改良に近いものだった。ヒューマンではあまり進んでいない医療分野の実験体である。目的は魔法の追求。

 メヌールがかじったエルフの資料によれば人間に宿る属性も魔力も遺伝による特殊な脳や分泌物を出す機能があるらしい。それさえ解明してしまえば水しか元の魔法素養がないエルフでも全属性が扱えるようになったり、種族全員魔法使いになれるだろうというプロジェクトだ。

 プロジェクト自体は夢のある話で結構だと思う。しかし悲しいかな、ここは機械や医療が遺伝についてちゃんと観測できる場ではないのだ。下等人種の奴隷階級を使い、原始的な交配と処分の繰返しで成り立たせている。


 これはヒューマンで神の僕にはきつい話だろうな。私からしたら野蛮で残虐なんて言葉が出るだけだがある意味他人事で目をそらして生きていける。メヌールは同族だし、染み付いた神職の思考はそれより複雑に襲ってくるだろうから。


「私に何かものを述べる資格はないが、私にとってあってはならないものではある」


 素直に言ってくれてもいいが言いづらいのだろう。代わりに口に出しても良いだろうか?


「ではそうしましょうか」


「うむ。悪いが今回は私の願いを叶えてほしい」


 明確に口には出せなかったが精霊神殿の研究はメヌールのためにも潰して見せよう。そうしないと、メヌールには耐えられないだろうから。

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