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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
203/246

25日目 キレる年寄りになる

 さぁ、吐け! となったわけだが、ダークエルフと妖精、その伴侶については省略した。伝えられるのはガルドで悪事を働く魔獣の宝玉、お伽噺の超悪役が発生したというパニック情報のみである。流石に狙いは私たちですとは言えない。


 会議はディランの拉致が始発だったが、今やガルドの平和について絶望的な方向で踊り始めた。今すぐ捕まえるべきだとか、ガルド大教会から利権は奪うがアデン大教会とは協調しないといけないのではだとか。あちらこちらに意見は飛ぶが纏めてみんな静観はできないと一致している。あまりよく知らなかったがお伽噺の魔獣の宝玉は単体ならソロ勇者が倒せるものもあるが、人と契約したらもうどうにもならない天災が起きるという認識だ。

 それって人を惑わす宝玉っていうのではなくて、伴侶のために頑張る妖精夫婦ってオチじゃなかろうか。だとしたらここにもう伴侶つきの魔獣の宝玉いますが、なんていいたくなる。

 ともかくネガティブな方向に盛り上がり続けて終わりが見えない。一通りストレスを発散させた後、領主はこちらに向きなおした。


「それでハラーコ嬢、宝玉封印の実績がある司祭まで拉致していたのだから当然、魔獣の宝玉についての解決策を実行中と見ていいのか?」


 この中で私との会話が多い領主は情報引き出しではなく、また行き当たりばったりだが何かしてるのだろうと振ってくる。話せないことが多いので適当な嘘を重ねなければならないだろうな。


「ガルドの大教会では魔獣の宝玉を捕獲する道具も方法も手に入れられなかったのでアデン大教会から確実にとれる手段として彼を招いています」


 招くの部分が大嘘である。


「しかしながら本来の職務である魔法使い狩りが大量にガルドに流れてきたら困りますよね? そこで封印の魔道具だけを手に入れようとしました」


「それだとそこにいる彼が持つ腕輪だけがこの事態をおさめられると?」


 村をコピペしたばかりなのでなんでコピーできないんだといいたげである。一瞬魔道具は無理なんですといいかけたが森村にはちゃっかりコピーした職安出張所のコピペ品が鎮座していた。これはなんとしたらいいのか。


「幾つか聞きたい。魔獣の宝玉は何故出現したと考えている? 捕まえる手段である腕輪だけを奪わなかった理由は? もう腕輪を取れば司祭を返せるのでは? 君はもう宝玉と接触したのか?」


 答えられない話ばかりだ。視線を拳に寄せてしまう。領主と目を合わせられない。


「出現理由はわかりません。教会が紛失したものか増えたのか他所から来たのかも。腕輪は……」


 私が宝玉だからです。頭の中でいうしかない。下を向いていると隣のレイが立ち上がる音がした。


「恐れながら私が知っている話を。腕輪を奪えなかった理由はハラーコが触ることができないからです。外せないので司祭だけを返却することもできず宝玉発見時に彼をぶつける予定だと聞いております。魔獣の宝玉はハラーコに直接遭遇していませんが我が弟子ハイラルを殺害するために現地司祭に禁呪薬品の材料を渡したと突き止めています」


 隣のレイを見るとこちらに視線を寄越してくれない。これは、裏切られたのだろうか。領主もレイも利害関係の仲間であったが今はそれも果たせていない。縁の切れ目なのだろうか。レイが私の知るレイじゃないみたいだ。


「レイナード魔導師、それは纏めるとどういう意味だ?」


「私が知る最大の秘密を吐く前にその腕輪を貸していただけますか?」


 ダメだ。これ。最大の秘密って私が魔獣の宝玉って話しかないじゃないか。レイはもう私の敵だ。捕獲されてしまう。もうここにはいられない。私はディランと一緒にメヌールとダークエルフが待つ場所に、いや、それらとも別のあれこれから逃げるために転移した。レイが何を言いたかったのかちゃんと聞く前に。





「ついに逃げてしまった……」


 今までなんやかんやで踏みとどまっていたのに! 途中で抜けてしまうとか争いを激化させただけだし。指折り数えてみると耳障りのいい大義名分なしだと相当数の罪を重ねてるじゃないか、私。これはまずい。お伽噺の再現してるぞ、私。頭をかきむしるが関係者の頭をリセットしてやり直せるターニングポイントが見つからない。

 これは詰んだのか?急に調子悪くなってないだろうか? 調子よくガンガン力押しで行くのがなんとなくうまくやれていたのに。精神不安定が原因なのだろうか?

 レイから念話のワンギリが続く。


「なんていうか、いっぱいいっぱいだわ」


 メヌールに会いたい。責めずになんかうまくいくように変わりに考えてほしい。でも一緒にいると伴侶の変化が進むだろうし。にっちもさっちもいかなくなったとこの世界にきてから最大に追い詰められている。


「いや、追い詰められてもごり押してきた。うん、もう災厄一直線なら更にごり押ししてから考えよう。とりあえず目下の敵、妖精を取っ捕まえてから逃げよう」


 独り言が増えてきた私は腕輪人間ディランを担ぎ、一人で何の考えもなしに次に向かう予定だった村に転移した。

 現地に着けばレーダー全開、村全域に覆うように逃亡防止の結界をひく。


「さぁ、出てこいよ。性悪妖精。お前が出てから散々だわ」


 ハイラルが反抗期しはじめたのも、死にかけたのも。吟遊詩人にねちねちいじられるのも、領主サイドに私の秘密がバレたのも。


「全部お前のせいだ、疫病神め!」


 わきあがる私の魔力が結界内に充満する。そして不自然に私の魔力を弾いている異物がマップに表示された。

 多分ものすごく悪い顔をしている。悪人面のまま私はニヤリと口を歪めてからその場所に出現した。

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