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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
191/246

24日目 伴侶

 腹の探り合いの向かない私たちが仲良く会話していると最初は埴輪顔をしていたメヌールが混ざり、次第に魔道具の話にシフトして私の方が除け者になった。サンドラもメヌールも魔道具が専門の魔法使い。数百年分枝分かれした技術は相当会話が弾むらしい。


「ところでサンドラさん」


「なんだい?」


 話に割って入る形だが、大体夜が活動タイムの私はやることを確認しなければならない。


「あなたのお仲間って話を進めないと会えないんですか?」


 私の中では欠片ちゃんよりサンドラたちダークエルフの敵味方認定の優先順位が高くなっている。よって、いるなら会っておきたい。


「あー、仲間ね。王都組は別行動だが、君を追いかける担当で他に二人いた。実は一人ずつ張ってたんだが、少年担当とじいさん担当は魔力酔いしちゃってなぁ。私は消えた君が帰ってくるまで宿待ちしてたら君らも仲間も帰らず朝になってた。酔っぱらいに聞いたら君ら転移してるし、今日は村を出るっていうし。それで私だけ追跡して妖精の君がいなくなった所で接触にきた」


 ニュアンス的にアルコール酔いに近いのだろうか?


「サンドラ、ハラーコは魔力酔いを知らぬのじゃ」


「妖精なのに常識足りないのな」


 なんか貶されている。後回しにされていた魔力酔いについてサンドラの説明が入った。


 想像通り魔力酔いはアルコール酔いに近い。魔力は血液に含まれる物質で強い奴は濃度が上がってもいけるが、弱いとへろへろになる。魔法を使えない者は諸に酔っぱらうが、魔法使いは常に血液に混ぜているせいか強いのが普通だ。


 昨日の教会の話に戻るとハイラルとメヌールの担当は長期戦覚悟で内部で息を潜めていたらしい。ハイラルが捕まった時点で助けてよと思うが大陸にきたダークエルフは魔法使いばかり。魔法が使えないので最悪の場合乱入と協力でうやむやにして腕力で押さえつけようとメヌールが飛びかかるのをまったそうな。メヌールは物理攻撃しませんよ? そんなこと考えない面子のようだ。


 そんな教会で私が魔力を放つ。魔法攻撃を禁止する結界があるが、仕組みは完全レジストではなく、プログラムを抜くものらしい。簡単にいうと攻撃の炎を出したとしたら炎という現象をすっぽり抜いて魔力だけが放たれる。暴漢が錯乱している場合武器も削っておこうねという魔法使い対策だ。というわけで、魔法は使えないが魔力は放たれる。

 前にサンドラも述べたが妖精の魔力は膨大だ。ダークエルフの十倍以上の魔力がある私が人種ごとの許容量なんて知ったことではないとばかりに教会に魔力をガンガン放つ。


「そして教会内部は人類が生きていくには限界値の魔力濃度空間になりました。こういうわけだ」


 それは酷い話だったね。


「のう、サンドラ。ハラーコは良いとして私はあの中でハイラルを担いで脱出できたんじゃが。ヒューマンより君らの方が魔力に強いのではないのかね?」


 ハイラルはお魚中で全くわからないがメヌールは酔っぱらいの気配などなかった。確かにおかしい。


「ああ、じいさん。気付いてないというか知識がないんだな。うーん、生殖機能が違うから厳密に言うと違うんだが、その」


「歯切れが悪いのう」


「じいさんはこの妖精の伴侶になってる」


「「はぁ?」」


「厳密に言うと違うんだってば」


 サンドラの住む島では、極稀に妖精と仲良しのダークエルフが伴侶になる。妖精同士なら何の変化もない。ダークエルフが伴侶になると人類の枷的な物がなくなり、魔力も他要素も限界はこなくなる。


「わかりやすく言うとあの少年が飲まされた水中毒薬を飲んでも何の変化も起きない。魔力酔いもない。やったね、毒なんて何もないよってところだ。既にヒューマンにしちゃあ魔力多いなくらいは気づいてるだろ? 自然排出せず溜め込んじゃうから魔法使わないとガンガン馬鹿魔力になる」


「確かに魔力の許容量が上がったと思っておったが」


「伴侶として子を守るための変化だと推測される」


 ダークエルフも妖精も人類の歩んだ知識しかないので妖精についてはこの二つが出会ってから始まった研究分野。まだまだ謎は多い。

 妖精が分裂して記憶を徐々に無くすことから、分裂後から伴侶に面倒を見てもらい、記憶や自意識のなくなる妖精を守らせているのではないかとのこと。最初は記憶があるのでそこから自意識を失う前に保護者として刷り込むようだ。


「伴侶というより親子?」


「分裂後は親子と呼ぶぞ? 君は養育される方じゃなくてパートナーを強化している。だから伴侶」


 私の頭は日本人女性なので、いきなりこんなじいさんが伴侶とかへこむ。


「まぁ、人類同士の伴侶とは違うんだ。自分の精神が終わるまで一緒で、勝手に強化されるパートナー。別に夫婦的な行為をしろだとかはない」


「寿命は?」


「分裂するまでひたすら強化されて生きると思う。残念ながら島には古くて二百年ぽっちのダークエルフ伴侶しかいない。妖精の一生分も観察できてないんだ。元々のダークエルフも数百年はいきるからね。じいさんが最初の伴侶寿命のサンプルになるだろう」


 伴侶発言も衝撃だが、寿命の話になると口が出しづらい。私が意図的にしたものではないがメヌールは老い先短い気でいたので悪い気もする。寿命が伸びるかもというと良い話に聞こえるが、みんながみんな喜ばしい話ではないのくらい察す。


「ハラーコの付き添いで人生を終えるつもりじゃった。ヒューマンから見れば不老不死のじいさんなど大陸上じゃ生きていけまい。早めに出て妖精島を知れたのは幸運じゃったな」


 メヌールは気にしていない素振りを見せてくれる。


「大陸にも無いこともなかったんだよ。ただ百年前くらいからヒューマンの教会が妖精の乱獲をしててな」


「それ魔獣の宝玉じゃないですか?」


 妙な所で話が繋がった。話を擦り合わせて行くと島の妖精の中に教会関係者の記憶持ちがいた。妖精に人の記憶や自意識があるなんて知らずに高圧魔石の魔獣ということで乱獲されている。


「妖精の記憶は最近の死人のもんじゃないからな。百年二百年遡った古い記憶だ。最近魔獣の宝玉と呼んでるのかもな。最低でも数十年経たなきゃ確約はできないが。とりあえず見た目が浮いてる魔石だからな妖精って」


 玉だとは思っていたが魔石なのかこれ。


「それよりこっちでの魔獣の宝玉について聞きたい」


 まだまだ知識がお互い不足している。サンドラとのすり合わせは深夜まで及んだ。

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