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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
188/246

24日目 ぬめ、解説する

 昼近くになって起こされた。残念ながら体力が消耗したハイラルは眠っているまま。先に起きたらしいレイは経緯確認のあと軍の引越し準備ででかけている。


「それであれは何だったんですか?」


 あれとは勿論ハイラル魚になる事件のことだ。


「君の知識外だったようじゃのう。あれは水中毒じゃ」


 私の知識にも水中毒はあるが全然違う。水の飲み過ぎで色々体内バランスを崩すあたりが同じなのか? 水で?


「前に君はゾンビの寄生虫にも水汚染、火汚染をかけたじゃろう。あれの人間盤じゃな」


 教会知識なのかメヌールがいうには人は人として、魚は魚としてというように決まった器があるらしい。肉体には容量が決まっていて、人は人として存在できるだけの水しか接種できないことになっている。

 しかし、魔法が使えれば?

 魔法で作り出された圧縮された水なら容量を超えて蓄積できる。人が人として存在できる量を越えた水を。


「中毒は体に取り込めるどんなものでも起こりうる。水しかり、痺れ薬しかり。全てその容量を越えた現象をさす。今回ハイラルは水の魔力を過剰摂取させられた。水の中毒と魔力中毒が合わさる状態じゃな。本来水だけで中毒はそうそう起こせないのでこの二つが合わさる中毒を水中毒とよんでいる。」


 つまり二要素のアレルギーが起きていたと。


「寄生虫を観察していたのではないのかね? 重度中毒を続けて生命力が枯渇すると本来人は人として、寄生虫は寄生虫として肉体を保持できなくなる。そしてその容量に合わせた肉体に神が作り変える」


 いきなり神がでてきた。けど言いたいことはわかる。新種の肉体ができてしまうって結果だけが。


「それなら寄生虫の時に光汚染が新発見になるのはおかしいのでは? 研究しているでしょう?」


「見ていたじゃろう? 水中毒のハイラルは水と魔力が人より多い魔魚になりかけた。人の肉体を人以外に人の都合で変質させるなど神への冒涜じゃ。神の怒りに触れないように軽い汚染の段階で治す。第一、光を操れるのはヒューマンのみ。変質させる魔法干渉ができるほど魔力はない」


 つまり軽度の祝福がマックスであると。メヌールが汚染できるのも重ねがけの結果である。


「けど魔法でなく薬でしたよね?」


「大昔、宗教統一ができていない頃に開発された禁呪の一つじゃ。ドワーフに水汚染をかけたエルフがいた。ドワーフにエルフと同じ水魔力を与えればエルフになるのではと。他種族を殺さず取り込む大規模兵器じゃな。結果は見ての通り。それを真似てあちこちで魔法が使えなくとも無力化できる武器として魔法薬が出来た。終戦後全て禁じられたのじゃよ。研究は止まり、結果的に歴史と知識だけ残る。私は土汚染の獣人の患者と君の寄生虫実験しか目にしてはいない」


「じゃあ光汚染の薬も」


「当時かかったエルフがいたらしい。光汚染には闇の薬がいる。ダークエルフが使えるという闇魔力。あの寄生虫でも煎じれば助かったじゃろうな」


 研究が禁じられた分野なのか。うまく研究が進めば汚染と同じようにゾンビも防げるようになるのに。ただなんとなく肉体が変質してしまう汚染兵器はバイオテロを思わせて、コミュニティーや法整備が進まないといじれないことも理解できる。


「まとめると現象も原因もわかっている。汚染が中毒を起こすとな。しかし、魔力が少ないヒューマンや祝福なんてされた動植物を見かけぬ光と闇の汚染は謎が多い。そしてその知識を蓄積することは禁じられた。

 空論であの時祝福された魚を配ったが、ちゃんと研究すれば即処刑ものじゃ。たまたま発見したプロセスと対症療法的に使う領主と利害関係が一致したことから取引もしている。

 今回のハイラルも水中毒だったから火中毒薬で治療できるので、医療機関としてレイナード魔導師が申請することで可能な処置。あとは領主サイドが適当に処理してくれる」


 今までで気にしていなかったけれどメヌールは治療の他に政治面のフォローもしてくれていたらしい。

 医療に法に歴史に宗教。話があちこちに飛んだが、ややこしいところは全てクリアにして解決できた。


「残るはボケ老人だけですか」


 今までで頼もしかったメヌールが天井を見つめる。


「宿屋に帰って乗り込まれても困るのう。そもそも禁じられた薬を治療ではなく健康な人間に使うなど気がふれている。大教会が混乱している今、処罰も後任も決まらんじゃろう。放って村を出て良いのかイマイチ決まらん」


 一応予定通り村を出るつもりはあったらしい。


「ハイラルはここに置いて幻影で出村しても良いですけど。放置するとあそこ年単位で医療もゾンビ対策もない村になりますね」


 これから教会はガルドと争うわけだし。


「胸が痛むが医療は諦めてもらうとしてゾンビはのう」


 ゾンビがでたら焼き払う。領都のための引越なしの定住村で内戦中に焼き払い。


「地獄絵図ですね」


 争いの激化や物流の停滞。悪いことしか浮かばない。


「教会では死人になる私では伝も使えん」


 ん? 今、教会に使える人がいたような。


「メヌールじいさん、レジーナに頼みませんか?」


 教会を抜けた事を知っていて、教会組織が神のために働くべきとばく進する人物。しかも今回の中毒は神への冒涜行為。


「レジーナを?」


「今日明日にでも魔信復活するそうですよ」


 記憶にないだろうレジーナの前に転移しても念話してももめる。メヌールがレイナードの名で魔信を一つ送るだけで何とかしてくれるのではないだろうか?領主が敬虔な信徒で腐った教会を切り捨ててでも大地の平和を守ると信じているし。


「ふむ。貸しにも思わず何とかしてくれるかもしれんのう。村は先に出て、魔信復活に合わせて通報するか」


 こうして一つの村の惨劇は免れたのだった。

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