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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
184/246

23日目 杖を手に入れる

 ハイラルが何を考えているかわからない。会議も出演時間にも帰ってこない。立ち直る予定だったんじゃないの? 少なくともハイラルは出演時までにはそうすると昨日の夜は考えていた。


「まさか帰って来ないとは思いませんでした」


「成人といえども身元保証人から預かっている子じゃ。迎えに行かねばならんじゃろうな」


 仕事を休むなんてその日暮らしの吟遊詩人にはミスマッチ過ぎて悪目立ちする。最終的に幻影ハイラル君を出して乗り切ったがこれはいただけないと思う。


「アンコールはハイラルの不調を理由に断ろう。宿屋の主人も奴等にぼこぼこに心を折られて教会に担ぎ込まれたハイラルに同情的じゃ。最悪教会に泊まるくらいに言っておくので君は領主館を優先してくれ」


 ハイラル待ちで後回しにしていた領主館も完全に日が落ちた今が限界だ。彼の心情は読み取ってあるので予定ではハイラル和解後に済ますつもりでいたのだ。


「私が分裂できたら楽なのになぁ」


「砕くなよ? 君の悪意が独立したらおしまいじゃ。

 とにかく宿屋の主人に話してくる。私はその後、教会を訪ねるので君は仕事をこなしてくれ。合流はこちらか教会かわからぬから私に念話を入れてから帰って欲しい」


 ちょっと領主館に行くのが面倒だと遠回しに言うとさらりと悪口で流された。でもまぁアデンで子育て経験者のメヌールがそういうなら従っておこう。ザカリアスに遅くなった詫びを入れてからアポをとり、魔道具配達へと転移した。




 領主館ではザカリアスだけでなくランドルフも待っていてくれた。日中に偽レイチェルについて問い合わせをしていたので続報があるだろうと夕方から待機してくれたらしい。


「遅くなってすみません」


「いえいえ。ハラーコ様は多数お仕事を任せていますから兼ね合いは難しいでしょう。一報入れていただけただけでも恐縮です」


「本当にすみません。先に依頼品を渡しますね」


 理由の追及をされてハイラルについて話すなんてことにならないうちに本題を進めることにする。領主の部下なだけあって二人の切り返は早い。


「こちられじれじ一号は身に付けるタイプです。魔石が大きいのでポケットにでも入れておいてください。こちらはれじれじ二号、設置型です。案内する部屋の中央などに置いて、なるべくこれを挟み合うように位置取りしてくださいね。効果は」


 とりあえず予備も含めて一週間ぶっ続けで使っても足りるだけ置いていく。不足前には様子を見ることができるはず。


「ありがとうございます。本日領都入りしたそうで、間に合って良かったです。急な依頼に高価な魔道具ですから領主様からこちらを報酬として預かっております」


 偽レイチェルの方に気取られて保留にしていた報酬が渡される。貸しにしておいてもいいと思っていたが、現金その場限りの商法が当たり前というかなぁなぁで終わらせたくない領主の誠意で勝手に用意したそうだ。気に入らなければ交換可能だと私の身長を超す木箱が差し出される。


「何でしょうか? これは」


 よくわからないので手をつけずにいるとランドルフが横から手袋をつけて御開帳してくれた。高価なものなのがわかる。


「これは三百年前の我が領の筆頭魔導師様がダークエルフの村で手に入れた杖になります。亡くなられた後、行方不明でしたが前回ガルド大教会の司教棟をいただいた後の捜索で発見に至りました」


 なにそれ怖い。呪われてそうだなと開いた箱を覗きこむと金属製のどでかい棒が現れた。鑑定してみると『世界の鍵』なんてえらく自信が溢れた銘が見える。もう一度実物を見てみるとどでかい棒というよりどでかい鍵に見えてきた。


「魔導師様の記録によれば現在も巷に流れる木製の杖より威力やコントロールがしやすい杖なんだとか。今後ハラーコ様の身を守るのに今出せる最高の装備になります」


 ここに至る経緯は良い話ではないが性能面ではそうなのだろう。しかし、そんなお宝貰ってもいいのだろうか。


「性能は良いのですが、我々はこれから教会に喧嘩を売る身です。教会側からダークエルフに操られていると言われかねない金属製の杖は使いたくとも使えないのですよ。戦後を見越すと特に。死蔵するより必要な魔道具へと代えることや、あなたの身を守る方が利がある。大教会の神官にダークエルフ製品とわかれども、地方の神官には外国製品にしか見えないでしょう」


 良いように言っているが厄介払いも兼ねているのなら貰っておくか。魔道具職人なメヌールは喜んで解析するかもしれない。約束していた取引はこれで終わりとなる。


「さて、大変失礼ですが私はこのれじれじを設置して部下に説明してきます。いきなり夜に訪問はないでしょうが、一番の懸念事項ですから」


 ザカリアスのいうようにレジーナは怖い。彼女の噂を聞いて胃を痛めながら魔道具待ちをしている部下のためにも早速配布してほしい。もちろん構わないと退席してもらった。


「それでランドルフさん、売りたい情報があるのですが」


 ずっと笑顔で待機していたランドルフは待ってましたとばかりに向かいに座る。


「楽しみですよ。アラリア内戦の話は現在最も価値が高い。魔信が繋がったら中央や他の領地に売っても採算がとれます。さてさてお幾ら必要でしょうか」

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