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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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3日目 住宅会議

 カイトが訪ねてきた頃、私はトイレの住人だった。

 待てども待てども扉を閉ざした私を心配したカイトは先に村長宅へと向かい、事情を知る昨日の面子プラス村長という大人数で窓から侵入。例の宗教のせいでトイレ前に吊るされた布を発見し、「長時間すぎる、倒れているのではないか?」とか「村長夫人か一番近い民家からご夫人を連れてきた方が良いのではないか?」と会議が行われていた。

 一方、少し持ち直した私はそんなこと露知らずで、この村は朝から元気がいいなとか、隣の家の工事かな、なんて呑気に侵入音をスルーしている。

 当然居間に戻った私は驚き、彼らは脱力した。


「司祭様の無事も確認できたし解散するか?」


「なんか……すいませんでした」


「いやいや、何事もなくて良かった」


 夜勤明けや夜更かしに加えて力が抜ける事態になり、解散は言葉のみである。そのまま途中まで伝えていたであろう昨晩の話の再現が行われていた。


「司祭様には大変お世話になったようでして。少ないとは思いますが火葬代と儀式費用を用意いたします」


「火葬代はいただこうかと思います。ですが儀式費用は私の個人的な願いで勝手にさせていただいたこと、いただくわけにはまいりません」


「ですが……星になる儀式だとか。私どもがお支払いできるものでもないのでしょうが……」


 周りの男どもはウンウンと頷いていて圧倒的に逃げ場がない。私の常識知らずを理解しているカイトに目線で助けを求める。


「星になる儀式は光の祝福に包まれる素晴らしいものだったよ。臭いもなく光輝やいてじいさんは天に昇れた。星になる祝詞もあげてくれて、きっと虚無には幽閉されずに済んでいる」


 逆効果だったようで私が説得を受ける構図は変わらない。面々の話を纏めるに神との絶縁は相当救いがないらしく、絶望からの星へのランクアップは奇跡の大飛翔ということらしい。故人もかなり慕われた人物らしく、元の葬儀担当司祭に対する憎しみや、星になる儀式への感謝や救いが溢れており、沢山持っていけ、元の司祭が破産するまでということであった。


「では頂戴しますが……」


 愚図れば愚図る程に、有能なのに謙虚であるとか、布教を押し付けないで慈悲の心で生きる真の聖職者、といったイメージが膨らんで全員の目線がキラキラして怖くなった。まさか今更、星になること自体否定するなんて無理である。彼らはそれで救われるし、謝礼も彼らではなくて元の司祭に請求されるので、と、私は飲み込むしかなかった。


「ところで、私はそもそものゾンビ現象を知らなかったのですが、これって何が原因なのでしょうか?」


「ああ、ハラーコ司祭様の祖国ではほぼ全員火葬して星になるからゾンビがでないのか」


 とうとうカイトからの呼び名まで司祭になってしまった。

 ゾンビどころか魔法もない世界の記憶しかないが、創作上のゾンビの設定は知っている。悪霊のせいだとかネクロマンサーだとかウイルスであるとか。日本人に馴染みぶかいのは某ゲームのおかげでウイルスであるが、マッドな施設や研究者がこの世界にどーんと登場するとは思えない。何が原因なのか知り、今後遭遇せずにすめれば一番である。


「原因はダークエルフによる儀式だ」


 ちょっと突拍子も無いところから話が出てきた。


「ハラーコ司祭様には馴染み無いだろうが話は聖典から始まる。 彼らは原初の神から産まれていない」


 必要な話を抽出すると、アデン大陸は男の神が作り、女の神が子どもの神を作る。子どもたちが猫耳とか知的生物を作り、父親である男の神が傑作ヒューマンを作った。だからアデン大陸の宗教はこの夫婦か子どもを纏めたり絞ったりして別れてはいるが一つの宗教思想に統一されている。

 そんな中でダークエルフだ。彼らだけ異端でカルト宗教らしく、原初の神以外の闇の神を『創造』して自分たちの創造主としている。聖典に無いものを大陸全土の宗教思想に押し込むために闇の神を降臨させて神の位につかせようと奮闘中で、ゾンビもその派生らしい。主神の作った大地に還るまでの間に心は虚無で降臨用の生け贄待ち、肉体は他の神の眷属を襲うと……。

 正直ヒューマンの教会側が作ったとしか思えない話である。原初の神とダークエルフを切り離した聖典の信憑性も疑いの対象だ。聖典著者の主張や執筆時の世相が入っていないわけがない。ついでに反発くらう活動で神として認められても、ダークエルフは白い目で見られるだろう。迫害している自覚がないのだろうな。突っ込みどころ満載なのにみんな信じきっている。親切で気のいい彼らが別の生き物に見えてしまい、また罪悪感に苛まれるのであった。

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