23日目 ファルシーラアリア
少し悩んだ結果、ラッドの家族を探すことにした。理由は先に中央とやらを発見したらまたここに戻ることになるのと、ラッドの家族が中央行きなら二度手間を防げるからである。もし違ってもラッドの家族付近からでも偽レイチェル国内だしそこから中央を目指すのも無理ではないだろうというアバウト勘定だ。
方針は決まったので奴隷商人を大脳内スキャン。一人一人商品群の記憶からたった数人探すのは手間なので大体の子どもの行先と魔法使い系の行先を見る。
ラッキーなことにそれ以外を含めて全体的にアラリア戻りは居らず東進していた。ついでにいえば偽レイチェル人の領土、早くも偽レイチェル国の真の名前が割れる。
ファルシーラアリア教国。
いまいち覚えの悪い現地知識にひっかかる名前だった。何度も何度もメヌールに解説された神様の名前の一つである。
ということはだ。ファルシーラアリアは水だか火だかの神様で、それを国教にしているわけできっとヒューマン以外の国なのだろう。なのにヒューマン至上の戦争を操ってヒューマンの奴隷を手に入れている。混乱させるなり奴隷を手に入れるなり色々あるだろうがどうしてまたこんなことをしているのか。ファルシーラアリア教国について全く知識がない私にはわからない。
『もしもし、ランドルフさん。花子です。念話ですみません。お時間下さい』
ガルドの外交担当者に直接聞いてみることにした。
『念話! これが噂の念話! スゲー!』
少々不安は残るが人選は間違っていないはずなのでファルシーラアリアについてきいてみる。
『ファルシーラアリア教国ですか? 大陸ではなく東海にある島国になります。船で三日もかかりません。簡単にいうと閉鎖的な完全エルフの国でして、幾つかの条約や取引に出ることは出ていますが真面目に外交をする国ではないです。商人も外交官も指定の港の村から先には行かせませんし』
どうにも纏めると色々あって引きこもりの国らしい。ランドルフのフィルターを外して見ると、アラムウェリオ教が宗教同化するのに娘と配役を渡したファルシーラアリアは生まれもっての神様ではないので矛盾し、寿命の長いエルフはかなくなに拒否。代替わりしまくり「同じ神様一家の信徒じゃん」というノリでくるヒューマンとは付き合ってられないんだろうなという所が見えてきた。エルフはこんな主張をするんですよとさも相手が間違っているようにいうランドルフの言葉は文化侵略しようとする教会に染められたヒューマンらしい意見過ぎる。多分これだと国交断絶しないエルフの方が譲歩しているといえよう。
『しかし偽レイチェル国がファルシーラアリア教国ですか? となると、中央って大陸拠点の中央なのか島国の本国中央なのか。後者なら入国できませんよ? それこそ奴隷船に乗らないとルートはないですし』
奴隷船に乗るのは問題ないが三日も移動で潰れるのは痛い。一先ず地道探索をして、見失ったら海を渡るかも程度に覚えておく。
『でもなんといいますか、仲の良い国ではないですが、そんな急に大きく大陸に出る国ではないという印象です。もう少し言うと、ヒューマン嫌いそうなのにわざわざヒューマンを奴隷に? なんていう所とか。ファルシーラアリア教国の国策なのか、一部の暴走なのかを隠される前に確認をとってくれると助かります』
ランドルフではないが私も違和感を覚える。この世界のエルフは知らないが、エルフってイメージがそんなヒューマンに関わるなんてないだろうと思わせるせいだ。私も大概固定概念でしか物事を見れないなと反省しつつ、検問所付近の奴隷商の馬車が明日も出ることを確認して次のお仕事魔道具にこめる魔法を開発することにした。