表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
174/246

22日目 救助指導

「ふぅ」


「このままで良さげか?」


 可愛いハイラルなんていなかった。言いづらい。


「逃げる気はないみたいですし、押し潰されてもないようです。子どもらしく騒いだ後、成長して復活するかくらいしか考えていません」


 何だか面倒臭さが増した。メヌールはよくわからないことを言われたように眉をしかめる。


「それは君の味方にできるということかの?」


「んー。その質問だとハイラルはハイラル自身の味方にしかなれない子かな? 根幹が軍での居場所無くすまいってありまして、そのためには領主とレイが裏切れない相手で、彼らのために私の味方みたいな」


 話せば話すほど扱いが難しい。


「レイナード魔導師から許可はとってあるからこうなる毎に消しても良いし、帰りにまとめて消しても良いぞ。私としては悪いようにする気がないのであれば君のフォロー要員として使いたいがのう」


 メヌールが言っているのは教会の宝玉封じの腕輪のような突発的なピンチが起きたときに周りに誤魔化してくれる人として使いたいという意味だろう。旅をしている身の上なので、メヌール一人で誤魔化すのは厄介だ。特に私がアラリアの内戦にまで首を突っ込んでいるので余計に。


「うーん。ラッドの件が終わるまで保留でいいですか?」


「構わんよ。それよりアラリアじゃ。ここまで荒れておったのか」


 ハイラルはいったん保留で、アラリアの内戦について話は移行した。

 ガルドの田舎ではあるが最北村群は国境に近く軍の受け入れもしていたのでアラリアの噂についてはそこそこ正確で詳しい地域である。ただルートが厳しいので商人や吟遊詩人の民間の噂ではなく、軍に入る魔信を聞いていよいよヤバいなとか、山脈向こうが禿山になりだしたので田舎にまで徴収がきているななどの情報にすぎない。

 メヌールとしては隣の国も内戦中なので山向こう何国かがぐちゃぐちゃして新しい国を作るだろうと予想していた。


 しかし、ここで政府軍と反政府軍が国民を脅して人員徴収しているとわかった。村から何人なんていう話ではなく、殲滅戦状態で泥沼。ついでにガルドの国境山脈沿いでやられている。通常の革命だと反政府軍が軍部を掌握したり、英雄クラスの魔法使いなどを抱えて短期決戦で挑むらしいが、どちらが勝ちそうなんていえない有り様だ。


「決着がつかぬ内にガルド領主と教会も争い始めれば大陸北部は十年で済まない間荒れ狂うだろう。北進するのも考え直した方が良いのかもしれん」


「ラッドの奥さんを探しに反政府軍の魔法使いを見に行く予定なのですが、決着がつきやすいように荒らしてくることもできますよ?」


「またハイラルに力押しと言われるぞ。それにそこに宝玉が居ないとも言えん。そういう心配があるからこそ静かに旅をするべきなんじゃがな」


「生存プラン、逃走でしたね。すぐ忘れちゃいます」


「はぁ……子どもと魔法使いの探索について話すか」


 何だかんだいいつつメヌールは常にプランニングはしてくれる。最初からそういう交流だったのでポジション軍師だと自覚しているのかもしれない。

 アラリアの隣国で反政府軍の財布、レイチェルという国はかなり特殊な国だという。というのもアラリアを挟んだ噂のドワーフ国家が荒れて分離するように流れた民が手付かずの山に作った最近できた国だった。ヒューマン的に外交的に旨味がない山だが、新興国なので大陸奴隷解放条約に加盟していない所が狙われてあっという間に奴隷万歳国にすりかわり、開拓していたドワーフは消えてアデン大陸のヒューマン至上主義聖地のようになっている。ヒューマン至上主義の背景は主神アラムウェリオの作ったヒューマンが一番えらいという暴論だが、少なからず金の臭いはするもので、表向き外交は断絶状態でも賄賂系収入がウハウハなんだとか。

 メヌールが推測するにアラリアの反政府軍はこのレイチェル国が黒幕というより正体。なので個別販売のように見えても実際は戦闘エリアから離れたレイチェル国で選別販売をしているのではないか? つまり孤児院からの足取りはほぼ全員レイチェル国なので、捜索するならレイチェルだという話になる。

 流石に表向きは孤高の国なので内情はメヌールにもわからないが、ドワーフには開墾できてもヒューマンには厳しい土地。狭い土地を探すことになる。


「噂では騎士領三つ程の土地にすし詰めじゃとか。狭さ的にしらみ潰しでも君の魔法なら一月かからず行方は見つかるのでは?」


 最後は安定の投げっぱなしだが不可能ではないようだ。


「次に魔法使いじゃが二種類に別れるであろう。前線にいくか、レイチェルに行くかじゃ。使い潰しか、国で抱えるかの違いしかないが最低二ヶ所には別れているであろう。焼き付けや指導ができる魔法使いがそんなにおるはずもないのでこれも収容施設のしらみ潰しで良い。リストはラビアンとやらがもう一人と別れた魔力検査をした施設で拾えるじゃろう」


 リストさえあればレーダーとスキャン頼みで転移を繰り返せばさほど難しくも無さそうだ。空き時間にガンガン探せば一ヶ月より短縮可能だろうし。


「サクッと見付かればいいですけど。ラッドの家族が見つかるまでここに滞在してもいいですか?」


「もう決めておるんじゃろ?」


「ええ、まぁ。知り合ったばかりの人を助けたり、領主助けたり、自分でも何やってるのかよくわかんないですけれども」


「人間とはそういう生き物じゃろう。ぶれることなく一本木など珍しいから誉めそやすのじゃ。君は普通じゃよ、普通」


「デレた……」


 最近少し優しい気もしていたが、メヌールってデレる生き物だったんですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ