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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
167/246

21日目 農村の現場

「和解されたようで何よりです。夕食後のお仕事も頑張りましょう!」


 メヌールと連れ立って帰るとハイラルが物凄く張り切った。どれくらいかというと私たちの不在の間に村の手伝いをして貰ったお駄賃でお仕事前の腹ごなし食を作って待っていたくらいである。

 ハイラルのご飯は初めての物だった。まだ共に旅を始めたばかりなのもあって彼には本格的な料理を教えていない。軍人として魔法使いとしてレイが教えたのかもしれないが一人暮らしもしたことのない少年。出来たものは薄い塩味がする濁ったおすましだった。嬉しいが悲しい。どうして野菜の味がしないんでしょうと首を傾げているハイラルには明日からちゃんと料理を教えるべきかもしれない。


 塩水で腹を満たした私たちは今から昼寝の時間である。夜は村の大人相手に広場で時事ネタをやり、その後、私ははけて二人が村人のためのカラオケマシーンになる仕事が待っていた。とはいえ、二人の演奏は私の制御。帰っていいと言われるまで三人揃って起きておかねばならないのだ。馬車でたっぷり寝ていたが、徹夜はこの世界では珍しく体はついてこない。よって二人は睡眠魔法をリクエストしてさっさと寝てしまった。裏切りである。私にかけてくれる人はいないので一人眠れない。ついでに寂しくても欠片ちゃん生放送を見なければならない。


 欠片ちゃんたち神官ご一行は対バンした村についていた。相変わらず徴税景気なので吟遊詩人も多く、音楽活動ではなく簡易治療院を開くらしい。本当に多芸なことである。景気には時期が大きく影響しているので無理している旅人も多く、開く前から治療目当ての客が並んでいた。そしていいのか悪いのか暇な彼らはメヌールに禁じられた神罰の炎のサビを歌っている。即効で音声を切った。恥ずかしい。

 広場に呼ばれるまで待つ間、まだ目が赤いタバサが見えた気がしたが気のせいだと思う。




 夕飯時の広場は昼間と違い皆で楽しむために敷物を広げていた。ご飯が終わると集まるらしく、花を見ない花見のように見える。既にほろ酔いのおじいさん達が拍手をしてくれる中に登場した。

 かけつけ一杯を戴いて、まだ疎らな村人のために地味な領都ニュースから始める。


 最初のネタはクルという魔獣の羽を注文したのにただの鶏の羽が馬車一杯届けられた仕立屋の話からだ。コミカルに流れるが値段は四倍も違い、使用感もそれに比例する。冬支度の為に夏から作る仕立屋はかなりの大損。大規模詐欺のせいで店を畳んだ所もあり羽入りの上着や布団が値上がりしている。

 次のネタはお隣ルマンド領の銀山盗掘。ルマンド教会が関与していることは知っていたが、あの後直ぐにルマンド子爵が大捕物をしたらしい。とうとうルマンドから教会が消えた。どうにも子爵はアランを警戒していたようだがそのパイプが切れたことで一掃したようだ。娘が狙われていたしそうなるわな。裏側までは歌詞にないが二十年近い盗掘行為で全員死ぬまで無償労働らしい。

 その後も冬明けからのモフ馬の値段が三年ぶりに少し値上がりする予想なんかを歌っているとぼちぼち人が揃ってきた。同行した商人クアトロさんのリクエストにより『神罰の炎』再演をしてから村人リクエストタイムになる。

 この村は自称良妻の産地という非常にかかあ天下の多い村だ。領都に近い分、森の恩恵や農作物も優れていない中継用の村なので女性の手内職が凄い。よってリクエストは女性向けの曲から始まる。私は村長の甥っ子の家から遠隔操作をするつもりだったが、これ以上監視カメラ台数が増えても憂鬱なのでメヌールが持っていたバルバッドを借りて演奏に混ざった。女性演奏者は珍しいらしくおひねりは上々である。段々慣れてきたので足首に踊り用の鈴をつけて鈴をならしてステップのコピーもしてみた。メヌールがジト目になるがハイラルが楽しげなので問題なし。クアトロさんと別れたら下方修正するので今のうちに楽しい思い出を作っておきたいのだ。


 饗宴は日が昇るまで続いた。この村は北から来る商人ありきで冬支度をするので南から人が来てもやることはなく騒ぐ日となっている。早めに下がらねばならなかったクアトロさんが徹夜を慣行したのでこちらは半日早く出発することになった。次はこの旅初のチェッカーがある本村、領都東村である。

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