表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
166/246

21日目 和解

 歌や楽譜は頭の中に容れてある。しかしながら、全て覚えていて内容を把握しているとは言いづらい。どうにも積読のように曲を放り込んでいるだけらしく、背表紙で大体把握している程度だった。実際に演じてみないと常識的フェアリーテイルは私にインプットされない。

 今回子ども向けに演奏した曲は常識学習という意味でものすごくためになるものだった。


 神様は常に人間を見ているわけではないらしい。善行を重ねて初めて神が近寄ってくる。逆に悪事を重ねると遠ざかり、しまいには魔獣の宝玉が近寄ってくるそうだ。

 魔獣の宝玉は躾的にわかりやすい悪である。悪魔とかなまはげのような感じに扱われた。

 神や魔獣の宝玉の関係性から教会で宝玉管理をしていることが如何に異様か初めてわかる。同時にこの常識だといきなり大々的に探すのは無理だとも知れる。ではどうして戦時状態を教会が許したのか。これもお伽噺に答えがあった。

 何故か魔獣の宝玉は転移だけでなく増殖するのだ。獣のように三つから八つ程度に増える。教会管理していることはふせて、ミニマム宝玉を倒す英雄譚があり、その物語の筋書きだと教会が国や貴族に忠告報告をしていた。それを無視した貴族や国は滅び、教会が用意した勇者様がガンガンいこうぜとなる。史実ではないにしろ、これをなぞらえば人心掌握には使える。常識を知ることで今後の展開が見えた形だ。魔獣の宝玉騒動で政治社会の力を削ぐのだろう。


 そんな今更学習をした後は休憩を挟み、夕飯時に大人向けに時事ネタをやる予定だ。この貴重な休憩でメヌールと和解をしなければならない。





 子どもを解散させた後、宿に帰らずメヌールだけを引っ張り出した。


「ちょっと話が」


「今更ないじゃろ」


 かなりひねていらっしゃるが、強制的に転移で二人になるとメヌールには逃げようがない。久しぶりの国境山脈は既に雪が降り始めているのか山頂は白く染まり、雪の無い川原で吐く息も昼間なのに少し見える寒さだ。


「話さない方がじいさんの負担にならないと判断したので黙っていました。黙っていることも負担になるようなのでお話します」


「だったら黙っておけば良かろう」


 ひねくれじいさんと会話するのは実に面倒だ。話さず見せた方が早い。メヌールの額に手を伸ばし一連の記憶を叩き込む。突然脳をジャックされたメヌールは座り込み口をへの字に歪ませた。


「言いたいことは幾つかあるが、この後どうするつもりなんじゃ?」


 レジーナのことの他に領主の教会介入計画や欠片ちゃんと天恵。現場にいないがややこしくなって動きづらい事だけは理解してくれたらしい。


「神官たちが領都に着くまで様子見しか無いですよ。特に今夜から欠片ちゃんの事情聴取をガンガンやらないと。魔獣の宝玉が人格を持って増殖するなんて知らないと困ることがありすぎです」


「そうじゃな。まずは宝玉について知識を深めるしかないのう。天恵が宝玉関係かもしれぬと欠片が言うのは無関係ではないのかもしれん。それでも数日か」


 いつものメヌールに戻ったようだ。小さくお礼を言われた気もするが気のせいかもしれない。笑顔で迎えてくれるであろうハイラルのために仲良く帰ることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ