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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
165/246

21日目 おとな

 馬車が到着した村は衛生村らしく旅券のチェックも次の本村でしてねという小さなものだった。当然宿屋なんかない。商人達は毎年の付き合いらしく村長宅に、私たちイレギュラー三人組は村長の甥っ子が住む家に泊めてもらうことになった。甥っ子さんは独立三年目、嫁あり、子供一人の家庭。将来の子供部屋をお借りする形だ。

 宿が決まり、荷物を置いたら商人と約束の客寄せの打合せである。麦の買い取りは簡単に決まったらしく、村長を交えて段取りを話し合う。


「比較的領都に近い村ですから、あまり話題性はなくとも領都周辺の時事ネタが嬉しいです。ここ数年アラリアの内戦曲が多いのでちょっと辟易しているのですよ」


「北から領都に向かう吟遊詩人はこちらをよく通過するからでしょうね。逆方向は最近では珍しいでしょう? 彼女たちは領都の噂をかなり正確に作っているのできっとご満足いただけますよ」


 商人クアトロさんが丸でマネージャーのように村長に売り込んでくれる。我々三人がニコニコしている内に前回披露した曲を奨めたり、この村好みの曲を知ってるか訊いてきたりしてポンポン決まった。楽器ができるよりマネージメント能力が必要なんじゃなかろうか?

 この後、雑貨を売るらしくそこでは子ども向けに明るく昔話をすることになった。




 小さな村の広場は村長宅の前にあたる。村長の畑の終わりにだだっ広い開けた場所があり、祭や葬式、冬支度の作業場所としても使う。ホラ村と変わらずこれはルールらしく、クアトロさんちの馬車もここに停めていた。防水性の布を広げて農具や調理器具を並べている。やや場所をあけて向かいで私たちの場所があった。


「ここですね。暫く音あわせして、子どもが来たら操作権貰います。念話繋いどくのでトイレとか休憩はそちらで」


「わかった」


「わかりました。あの、何かありました?」


 いつもなら嫌みを飛ばすメヌールがわかりやすいところでスルー。流石にハイラルも無視できなくなったようだ。


「何が? 何も?」


 どう見ても不機嫌なメヌールに困りながら助けを求められる。原因は私ですけどね。


「ハイラル、レイナードは私が秘密を持つことにお怒りなの」


「そんなものどうでも良い」


 会話を投げ捨てたメヌールは横笛を吹き始めてしまった。


「一体どうしちゃったんですか? 昨日までお二人は仲良しでしたよね?」


 仲良しという言葉には議論の余地がある気もするがニュアンス的にいいたいことはわかる。一番身近なハイラル君でも流石に私が魔獣の宝玉とも言えず相談は不可能だ。


「詳しいことは君にも言えないよ。でも親しくても言えないことが私はあるし、彼は逆にそれが許せないんだ。一概にどちらが正しいとも言えないでしょ? 私もここで折れて迷惑かけたくないし、彼も中身を知らない以上どちらが正解だと押せないし引けないし平行線だね」


「言えないことの一つや二つあるのが普通だと思います。でもメヌ……レイナードさんは人生捨ててまで来ているので普通とも違うでしょうね。

 一年過ぎてお二人になることを考えると早く解決した方がいいとも思います。何が正しいかはわかりませんが、この場合ヴァイオレット様が我を通してレイナードさんが我慢しても何度も同じことを繰り返すのではないでしょうか? ことあるごとに隠し事があるくせにって」


 普段は大人しいハイラルだが真っ直ぐ見つめて意見をくれた。子ども思考だと思っていたが、成人して軍人であるだけある。彼の目にはずっと心に引っ掛かりを覚えて掘り返すメヌールが見えるらしい。言われてみればその通りだ。レジーナで心に引っ掛かりを作らないために私で引っ掛かりを作れば本末転倒。これは私が折れて支えるしかないかもしれない。


「そうだね。レイナードはこれから先も長い相棒だし迷惑かけるしかないのかもしれない。露店が終わったら話してみるよ」


「出過ぎたことをすみません。でもきっとお二人なら大丈夫ですよ」


 少しハイラルのことは大人扱いした方がいいのかもしれない。メヌールと話し合うことを決めて昼営業を開始するのであった。

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