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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
164/246

21日目 壁

 考えることが多すぎた。

 現在特定の役職はないレジーナが領都につくまで二日。それからガルド大教会の内情を精査した後領主に会見を申し込むはずである。狂信者様は魅了を使うのに躊躇いがないのでガンガン責めるだろうから最低三日四日で辿り着く。それまでに天恵を解析しなければならない。それが無理なら魅了対策もいる。

 監視を買って出てくれた欠片ちゃんから網膜情報は届いてはいる。ただ、腐っても欠けても魔獣の宝玉なので欺瞞情報かもしれない。二日以内に祈りの通報がなければどうなるんだかわからない魔獣の宝玉対決になる。

 その魔獣の宝玉って何なのだという根本的命題がぐるぐる答えの出ない頭に定期的にわいてきた。期限付きの課題が優先事項なのだが今回は私から攻めていくのではなくアクション待ち。スッキリしない思考回路が考えろとしつこいのだ。


 そんな答えも出ず、相談しようもなくぐるぐるの私はいっぱいいっぱいで、コミュニケーションを放棄している。メヌールとハイラルは眠らせたまま静かに馬車は次の村に向かっていた。




 昼時になり馬車を停めて休憩を取ることになった。流石にご飯で眠らせたままは悪いので二人を起こす。


「お昼ですよ。休憩なんで起きてください」


「あっ、すみません。寝てしまって」


 素直なハイラル君は飛び起きて謝るがメヌールの視線がいたい。過去に食らった実績もあるし、同時に二人も寝てしまったことから私が魔法をかけて眠らせたと確信している。


「……ハイラル、水汲みの手伝いに行ってくれんかね? 私とヴァイオレットは食材提供と調理に参加しておくからのう」


 完全に怒っていらっしゃる。三人の中で一番力仕事要員だと自覚しているハイラルは何の疑問も持たずに去ってしまった。残されたのは怒りで静かなメヌールと私だけ。誰か乱入してきてほしい。


「他に気取られるので念話で頼もうかのう」


 願いむなしく逃げ道は塞がれた。干した肉や根菜片手に馬車を降りながらしぶしぶ念話を繋ぐ。


『すみませんでした』


 とりあえず謝っておく。


『謝罪より何をしてきたのかの説明が欲しいんじゃが』


 メヌールさんは今日もかしこい。不機嫌や寝不足ではなく何か絶対にやらかした前提でお話される。


 さて、メヌールには何を話せばいいものか。そもそものレジーナに攻撃されたことやら監視の話はするか微妙だ。自己判断で領主サイドに率いれたのは間違いだと言い聞かせたら更にストレス抱えて悩みそうである。教会攻略用に領主が使える手駒として彼女の影響力はハイリスクハイリターン武器だと理解してしまった。うまく回れば話さなくても良いことであるし。世話になってる分メヌールをこれ以上悩ませるのはちょっとやりづらい。残りの人生もらったも同然だし。

次の話題は魔獣の宝玉の欠片だけれど、確定してもないし、何よりどうしてわかったとなる。

 話せることないよね?現時点で。結構切羽詰まった割りに開示できる情報がなかった。


『現時点では黙秘権を主張したいのですが』


『我々は一蓮托生ではなかったのかね? そんな権利聞いたこともないわ』


 確かに身分制度と魔法がある世界ではあるとも思えない。今日も翻訳魔法はいい仕事しているなと遠い目をしてみた。


『ハラーコ、私に話せないとして伝えられる相手はいるのかね?』


『あー、はい。領主には、まぁ』


『身分保証の大本が把握できているのならよい。悪かったのう』


 なんとなくべったりだったメヌールと壁ができた気がした。傷つけたくないだけなのに難しい。暫くしたら内容は伏せて解決報告だけでもできたらいいなと思う。


 ギクシャクして昼食をとった後、馬車は次の村に向かうのだった。

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