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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
160/246

20日目 かくし玉

 レジーナは敬虔なアラムウェリオの信徒である。と、本人は思っていた。しかしながら私から見れば狂信者に近い。

 生まれもっての気質なのか正義感が強すぎて、目の前の悪を許せぬ人間のようだ。そんなレジーナが教会に所属したことは天恵なのか天災なのか。悪も悪意も全てが彼女のための試練らしく、輪をかけて潔癖に育っている。心の中ではひたすらアラムウェリオのためにと叫ばれ、見ていて気持ちの良いものではない。

 メヌールの懐柔はそんなレジーナにはよく効いていた。宿敵アランに苦渋を強いられた神官がアラムウェリオのために全てを擲つのは自身の理想と共感を高めて感動の域だったのである。ついでに領地に教会を沢山建てる領主は既に敬虔な信徒仲間と見られていた。

 そんな彼女には領主サイドであるハイラルは良いとしても、私は異様な存在だった。アラムウェリオの大地を護るためのアラムウェリオの子の巡業に所属のわからぬ輩がいる。教会に所属せず、領主に恭順を示さない魔法使い。魔法使い狩りでなくともスタートが同じなのだ。アラムウェリオからの贈り物である力をアラムウェリオのために使わない魔法使いなんてゴミめ! そんなところである。

 ついでに言うと私の魔法が教会系列の魔法にはないものであったのも悪い。例えばさっきの転移や記憶を消そう発言。常々言ってることやってることが悪役チックだとは思っていたが、レジーナにとって謎の魔法形態が他の情報と絡まった結果、邪神信徒が魔獣の宝玉を横取りするために送った刺客説や、ダークエルフサイド説がでてしまった。


 レジーナは狂信者と結論がでたので、私と相容れないとしても宗教的に正しそうにしていれば問題もないかもしれない。


『想像以上に潔癖なのか』


 メヌールに話すのも微妙なので現在領主と念話中。この後、きっと領都にレジーナ一行は向かうだろうから今後の対策もかねてお伺いをたてている。領主はレジーナを抱き込んで教会の次代大司教争いに介入してパイプを作りたいようだ。


『ちょっとやりにくいかもですが一貫性のあるアクティブ人間なので、今のままでも接待窓口で対応はできます』


『争いは目に見えているからな。緊急時に人員が不足しても機嫌が崩れないに越したことはない』


『崩したら魅了魅了ですからねー』


 こんな狂信者が今も教会に影響力があるのは一重にレジーナの魔法、魅了のおかげであった。操縦者が現場にいないアランや装備充実の金持ち神官以外は逃げようがなかったらしく貧乏神官のレジーナ軍の完成である。言葉のイメージのラブやエロスな魅了でなく、カリスマ系魅了らしい。こんなもん領主の周りでぶっぱなされたらたまらん。


『単純に犬にできるのなら良かったのだが……』


 領主のいう通り、事は簡単ではなかった。記憶を消されても問題なかったレジーナのかくし球。これが響いてくる。


『天恵ですか。これ、絶対何かの魔法ですよね』


 天恵。レジーナがそう呼ぶそれはちょっと普通でない。神官らしく朝昼晩にする祈りの時間、レジーナにアラムウェリオからの天の声がするようなのだ。狂信者にとって祈りに返事をされたら疑いようがない。この天の声さん、何故かレジーナのことをよく知っていたり、周りを理解してお喋りする。大教会を出た辺りから聞こえ出したのもあやしい。記憶を見たところ念話を受信しているように見える。


『天恵とやらがどこまでレジーナ司祭が見たこと聞いたことを共有しているかが気になるな。それの目的がわからぬ限りいつでも如何様にも攻撃される可能性があるというわけだ』


 魔信と同じなら祈りのタイミングで探らなければならない。


『天恵を探り次第また連絡します』


 逃避行中にもかかわらずなにやら密偵めいてきたな。

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