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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
158/246

20日目 丸投げ

 メヌールの記憶の海から抜け出す。レジーナは疑惑が尽きない謎の大物といった印象だが、ここまでメヌールを裏切ったことはなかった。寧ろ仲間でもないのに仲間の知人や被害者として守っている。レジーナがどのような人物かはわからないが行動力の面から見て穏便に忘れてほしいのも理解できた。

 ただ、レジーナの現在の立ち居地がわからない。反アランで田舎に移れども慕われているように見える。しかし教会のためにメヌールを襲う。これはアラン派に潜伏しているのか否か繋がりがわからないのだ。教会というかアランというか、そのために働いている彼女の次の行動がわからない。

 彼女は知らないであろうが領都につけば教会の火災と後継者争いを知るだろう。どちらかの味方になる? トップを目指す? メヌールの首をどう利用するのだろう。知らないであろう事は幾ら脳ミソ筒抜けでもわからない。矛盾のない記憶の繋ぎと、領主に迷惑をかけない方向性が見えてこない今、うまく繋げと言われても無理だ。どこかで綻びが出るだろう。


「メヌールじいさん、難題ですよ。領都について状況把握をした時に埋めた記憶次第であれこれ引っ掛かりすぎです。じいさんの追跡を回避したとしても今の領都についてどう動くかわからない。場合によっては直ぐに私たちに帰ってきてくれって事態になったり、ハイラル君が一年そこいらで帰られないくらいのことにしかねません。だからといって引き返させるのも彼女の性格からしてまた時間を置いてから関わりますよ。指針を立てるなんて無理です」


 それこそ性格とか過去とかを改竄しない限りガルド大教会での火種としかならない。借りがある分、メヌールだってやりづらいだろう。


「撒いた後か。そうじゃの。レジーナはどうしたって大きな存在となるか関わるかするのう。

 ハラーコ、今ここで情報を出してそれを聞いたレジーナを見てくれんか? 確定でなくとも未来予想はできる」


 それでいくか。放置はできないしとレジーナを見る。彼女の視線はメヌールのままだ。了解するとメヌールが語りだした。


「レジーナ、今、ガルド領で起きていることを話そう。いや、アデン全体の問題でもある。大きく分けて三つの流れじゃ。一つはアランの失脚からなる魔法関連の利権の移行。最早教会に魔法を管理するのは不可能なんじゃ。アランが大教会で焼身自殺を行い、全ての機能は止まった。領都につけばわかる。今は半信半疑でも君なら対策を考えつつ向かうじゃろう。魔信だけではなく全て消えた」


 レジーナの瞳は鋭いままだが話を聞く気になったらしく抵抗を止めてくれた。それを見たメヌールがレジーナの拘束から口を解放する。


「あのアランが自殺? いけばわかるとあなたは言うけれどもそこもわかると?」


 素直に情報を聞くレジーナに違和感。聞いたところで記憶を改竄するというのにどういうことだろう? メヌールは先に指針を出すことにしたらしく会話を優先した。


「確かにそれは我々のように一部の者しか知らぬ。ハラーコ、アランの機械はあるか?」


 指示を受けたのでレジーナの前にアランを操縦していた機械を出す。訝しげな顔をしたレジーナだったが直ぐに瞳に魔力を込めてから再びメヌールを見上げた。


「下手人は?」


「焼き切って領主に預けた。大体の悪事はそいつの物だった。もう一つの流れに関与しているので拷問中だろう」


「わかった。そちらを聞いてからまた聞くわ」


「うむ。アランを操りし者はダークエルフに密通していた。もう切られたであろうがダークエルフの存在、ルート、目的がわからん。ただ存在し、教会に波乱を呼んだのは間違いない」


「ダークエルフなんて信じられないわね。邪教徒の幻術だと言われた方がマシよ」


「ハラーコ」


 これはダークエルフのコピーを持っていれば出せって話だな。氷付けにした遺骸を出す。今度のレジーナは余裕や冷静さが抜けた。


「何が起きているの? 他にもあるのよね?」


「もう一つは魔獣の宝玉の紛失じゃ。ガルド大教会にはない。アデン大教会では国で最低三つ紛失していることを把握した。ガルドは魔信が繋がっていないのでかなり先行した情報じゃ。一連の流れが魔獣の宝玉によるものか否かはわからん。ただ大きな災いが始まりつつあるのはわかる」


「アランは宝玉をどうしたの?」


「継いでいない。高度な情報収集を行ったが前大司教から譲られていなかった」


「これらの話はどこから得たの?」


「領主と直接交渉した。私の村にダークエルフやゾンビが出たのだよ」


 暫くの無言が入る。予定通りレジーナの脳内を覗く。混乱の中で各々が真実だった場合と嘘だった場合を組み合わせていた。派閥の長はなかなかの才女で細かいことは後回しにして共通事項と質問を纏めていく。


「それであなたは今、何をしているの? そして彼らは?」


 初めてレジーナがこちらを見た。パリンと耳飾りが弾ける。隣のハイラルは服の中に隠した首飾りが壊れたようで慌てて上着を叩き始めた。


「レジーナ、魔道具を壊しても彼らに君の魅了は効かぬ。生身の魔力で十分に保護(レジスト)されている」


 どうやら操ろうとされたらしい。ハイラルの魔力が上がるように先に魔法をかけていて助かった。アイテムボックスから複製した予備を取り出してハイラルに渡す。


「そのようね。特にその強固な幻を張り付けた彼女が気になるわ。あなたたちは何者なの?」


 アデン人の幻を被っていたお陰で宝玉であることは隠せた。しかしどうしたものか。ここまでぶっちゃけると作っていた設定ともずれてくる。メヌールはレジーナを見つめた。


「外国から来た凄腕魔法使いと領軍の魔法使いじゃ。機能せぬ大教会の代わりに魔獣の宝玉を探しておる。大陸、延いては世界の危機じゃと領主様の御意向じゃ。私は死したことにされてアラムウェリオの大地のために戦っておる」


 こんな場面でメヌール、さらりと嘘をついた! レジーナの方は教会より神を取る行為について称賛している。ちらりとメヌールをさとりんすると、改竄して謎の行動を取られるより協力者にした方が良いと縛る紐に鈍感ちゃんを混ぜていた。逆に操作するんですね。面倒事が増えた気がします。


「レジーナ、私はもう領主様が仕切るのが良いと思っておる。魔法もダークエルフも宝玉も。敬虔なアラムウェリオの子として情報を集めて大地を守る。今、これをしているのは領主様だけじゃ。君も神の子として思うこと、教会の人間として思うこと様々あるじゃろうが強大な危機に対抗するためにどうするべきじゃと思う?」


 畳み込んだ鈍感ちゃんによりレジーナは仲間になった! どうするんだよ、これ。メヌールの内心は罪悪感と全て丸く収まったら解除するという懺悔が浮かぶ。一方レジーナは領都に着き次第、領主に謁見すると返事をして女性を連れてキャンプに戻った。再びややこしくも強い味方が領主陣営に入ったことを、私は領主とレイに念話を送るしかなかった。記憶、消さなかったけどまだ何か火種がありそうなのに。

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