表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
152/246

19日目 遅い連絡

 メヌールの予想通り、部屋に帰ると真っ先に花なしたちがやってきた。そしてやっぱりハイラルの竪琴を責めて勧誘している。泣いてしまったハイラルは自動演奏状態で余計にへこたれているので可哀想だ。


「私の弟を虐めないで!」


 引き剥がせないようにハイラルを抱き締めて適当なことをいう。流石に兄弟を引き裂けないだろうと思ったが甘かった。

 弟君は練習がいる。稼ぎのいい暮らしに見習いとして育てた方が良い楽器も手にはいる。引き抜きができないとなると大グループにしようという合併依頼であった。


「彼らはのう。腹違いの兄弟であるが、それ以上に重責があるのじゃ。悪いがこれより増員して旅をするわけにはいかん」


 メヌールが何かを見せると謝罪をした花なしたちはあっという間に帰ってしまう。


「何をしたんです?」


「ハイラルの軍人証明書じゃよ。最初から使うとは思わなんだが、まぁ、貴族の息がかかっとると理解してくれる。兄弟なんて余計な話をせずともこれで大概はなんとかなるのじゃ」


 そういう使い方をするとは思わなかった。メヌールの魔法の袋から出したので軍人で魔法使いのヤバいグループと認識されたのがさとりんでわかる。


「なんか、ワケアリ兄弟と護衛の魔法使い軍人って思われていますね」


「文字が読めないだろうからの。流石に魔法使い三人など大量破壊集団とは思わんじゃろ。これで魔法使いはさっさと一晩で消えるので、遠慮なく進入禁止の魔法をかけて良いぞ」


 嫌がらせ対策ももう自動防衛でいいらしい。防音と扉に触れたら激しい結膜炎になる魔法をかけて寝る。もう誰も招かないので寝台を複製して横になった。





『ハラーコ、ハラーコ』


 声が聞こえる。目を覚ますと念話でレイが呼んでいた。こちらの魔力で繋ぎ直す。


『はいはい。レイさん、どうした?』


『まだ近いしハイラルが気になってね。泣いてない?』


 先程まで泣いていたなと隣の寝台を見る。


『誰かさんが吟遊詩人にしたせいで下手くそ下手くそ言われて泣いてましたよ』


『それくらいなら構わないよ。ハラーコなら見ようと思えばわかるだろうから先に言っておくよ。ハイラルは前の師匠を魔法使い狩りで無くしていてね』


 おい、それは旅に出る前にいってくれよ。ハイラル思春期なだけじゃなくトラウマ持ちなのか! 一気に目が覚めた。


『そんな重要なことなんで黙ってたんですか』


『ハイラルが言うなっていうからさ。タイミング見てたけど急遽旅立ちが決まってからハイラル抜きで話す時間なかったろ? 初日は無理として今夜辺りなら伝えられるかと思って』


 確かにメヌールが決定してからレイは会議に捕まり二人で話す機会はなかった。レイの念話が繋がるうちに早いところ伝えておくというタイミングだと今になる。


『それでどういう状態で?』


『村に来た狩猟放浪民がたまたま見つけて弟子にした。三日もしないうちにチーム全員が死亡。教会に連れていかれそうなハイラルは無意識でバリアを展開して、魔法使い狩りが誘拐できないうちに僕が確保して養子にしたんだ。だから弟子でもあるけど義理の息子なんだよね。子供を軍人にするわけにはいかなかったもんで』


 彼も養子か。この国養子多くないか?


『魔法使いの確保はそりゃもう先の師匠みたいに血で血を洗うものになる。教会なり軍人なり戸籍で確保しないと生死に関わるから。ハイラルはずっと僕のこと師匠って呼ぶでしょ? 親が死ぬのは耐えられないんだろうね。前の師匠をお父さんって呼んでいたし。ハラーコにはそこの所を気にしてほしいんだよね。家族への情景っていうのか。親しくなるのは嬉しいけど家族への段階は気を使ってほしいというか』


 レイの念話はものすごく遅かった。既に姉宣言している。なんでタイミング悪いんだ。一番自責の念にかられるタイミングじゃないか。


『レイさん、遅かった』


『あー。流石ハラーコと言っておくよ。とりあえずあの腕輪さえ気にしていたら君は死なないだろうしそこまで心配でもないんだ。けどさ、もし僕がハイラルが帰るまでに何かあったら、やっぱり君らにしか頼めないじゃない? 最悪の場合ジル、副部隊長ね。彼に軍内部の処理を頼んでるからそちらと相談したりしてくれ。独り立ちの道筋くらいまでは用意しておくし。そういう所だけ覚えておいて』


 盛大な死亡フラグをたてているがレイは一年でかなり覚悟を決めていた。ハイラルが危険なのもそうだけれども、レイの危険度もそれなり。最悪の場合を気にしている。


『あなたも早々死にはしないでしょ』


『そう願っているけどね。ハイラルに何かあったら連絡してくれる? 成人したけど魔法使いとしてはまだまだだから』


 口調は軽いが大事な連絡事項を冗談混じりで話していく。深夜にこっそりしている割りに長話なのはハイラルへの愛情なんだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ