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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
吟遊詩人編
147/246

19日目 朝練

「おはよう」


「おはようございます」


「おはようございます」


 起きると朝御飯にメヌールが八分粥を作っていた。ハイラルは私が起きたのを確認すると竪琴を取りだし昨日仕入れた曲の練習を始める。


「私が最後ですか。すみません。」


「よいよい。夜間の警戒も任せておるしな。暫くこれが分担じゃ。それより飯が終わればハイラルの竪琴を見てやってくれ」


 優しいメヌールなんておかしいと思っていたが、役割を分担せねば旅グループのバランスが悪いというだけのようだ。今まで朝御飯を食べていなかったメヌールだが、昼にトラブルが起きることを見越して朝はメヌール飯が決定する。レーダー展開しながら寝ていただけなので何だか悪い気がした。多分メヌールの原動力もこれなので気にしない方が良いだろう。

 メヌール特製粥を食べていると、二人は既に済ませたらしく合奏を始めた。昨日の曲だが横笛レベルはメヌールの方が高い。


「メヌールじいさん笛上手いですよね」


 教会で習っただけの割に上手い。音のクリアさもだが強弱も細かくベテラン臭がする。私が褒めるとメヌールは笛から口を離す。


「普通じゃ。バルバットの方がマシじゃが弦楽器だけの伴奏じゃと笛で混ぜろと言われかねんのでしているだけじゃよ。ほれ、バルバットじゃ」


 メヌールは魔法の袋からリュートのような楽器を出してさらりと弾く。確かに笛より上手い。ハイラルも練習をやめてメヌールのバルバットを聴いている。二回ほど同じフレーズを弾くとまた袋にしまう。


「司祭って多芸な職業ですよね。魔法に儀式に治療に楽器。暗殺者や諜報員もその辺修めているわけですよね?」


「教会は貴族の延長じゃしのう。政治か教会に何かあればすぐ戸籍を移して動けるようにする。魔法が使えん貴族も儀式や聖典を学んで利権に手を出す機会を待つ」


 メヌールは私が食べ終わるのを見るとテントの片付けに入った。いいからハイラルを見ろと言われてそちらに行くと早弾きにてこずっている。


「ああ、早くなるところね。ちょっと借りていい?」


 ハイラルから竪琴を借りて軽く鳴らす。現代竪琴より小さいが指の配置はあまり違わない。楽器の使い方はわかったので早速ハイラルが躓く早弾き繰返しパートを弾いてみる。うん、楽器のコピー演奏にも問題はないみたいだ。思考能力を上げて弾いてみるとガンガン早くなる。四回に一回音も上がって転調するので声楽的に聞き苦しい限界までやるかと思ったが、いかんせんコンパクト竪琴。弦の数が先に足りなくなった。ポカンとしているハイラルの横に座り、今度は彼に竪琴を持たせながら運指がよく見えるようにゆっくり弾く。慌ててハイラルも真似をするので弦を譲ったがまだ指がバタバタしている。


「ハイラル君、曲の完成度より運指に気を使って見て。速くなるとついていけなくなってリズムが乱れるよ」


 結局メヌールの出発宣言までには出来上がらなかったが見た目は少しマシになる。私は満足していたがハイラル君、だだへこみ。プロ記憶とチート身体能力者に云十年の奏者、どちらと比べても経験の浅さは仕方がない。慰めながら進んでいたが、これが問題だとは私はさっぱり気付いていなかった。

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