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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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17日目 許可

 夕食の時間を過ぎてレイに呼ばれた。今回領主に会いに行くのはレイ、メヌール、ベッチーノ、フリッツさん、そしてお荷物ラルフである。レイとフリッツさんはラルフの説明とハイラルの話を、ベッチーノはホラ村が消滅して軍事拠点になることで最北村がどう受け入れるべきかを話し合うのだ。

 ラルフが消えたことでどうなったかわからないままの領主に念話を送る。


『領主様、意識戻ってますか?』


『ハラーコ嬢か。良かった。こちらは大変なことになっていてな……』


 どうにも私があちらに乗り込んだのは気付いていないらしい。こちらは更に大変だったせいで再救出に向かわなかったが、首謀者が消えたお陰でトントン拍子に救出されたようだ。


『あー、領主様。そのラルフですが捕縛しました。ついでにラルフ関連で重大事項があるのでレイナード魔導師とフリッツさんを今から連れていきたいです。あと、最北村の再編計画を見ている人に今のタイミングで本村村長に説明して貰いたいのですが』


『構わない。領主館の応接室に直接来てくれ』


 お許しがでたので転移した。ついてすぐにラルフは邪魔になったので地下牢に移し、ベッチーノはノーマンさんが別室に案内。残った私たちは領主を待つ。

 少しして現れた領主は昼見た時のような無精髭もなくいつも通りの完璧貴族様であった。軽く私たちを見渡して「ラルフは地下か?」と言い席につく。礼をしたあと着席をして話は始まった。


「ラルフの捕縛、苦労をかけた。そちらの説明の前にこちらの経緯を話そう」


 今回の謀反は事前調査と同じくガルド教会にいる従姉がらみの動機から始まっていた。混乱中の教会に若い娘を置いておけまいと上級貴族からガンガン帰還が進んでいる。とはいえ教会籍から貴族籍に戻す手続きも取れず身を寄せるばかり。焦れた貴族を中心に何故か魔法が使えるラルフが旗頭になり教会から逃げる見習い達の実家が謀反を企てた。内容としては彼らが最初から教会には関わっていないとして地位や咎めを揺さぶらない保証をというもの。側近ラルフから教会と争うことは聞こえていたので保身のための先攻抗議だったらしい。しかしながらラルフが超暴走特急。ラルフの仲間も慌てたが魔法の力押しで勝てない。ラルフが消えてすぐに領主が保護されたのはそんな経緯だった。


「なるほど。そのラルフはホラ村に現れまして」


 私が領主を見に行ったのは内緒だ。フリッツさんも私を潰しにきたんだと思っているので、そこからバトルに捕縛という繋ぎで話す。倒したあとにすぐ連絡を取らなかった話をしなければならなくなり、レイが引き継いだ。


「ラルフの証言通り、奴の腕には魔獣の宝玉らしいものがありました。ハラーコはアデン教会で実物を見ていますから確かです。

 その宝玉を運ぶも放置もできないため、アデン教会の宝玉捜索隊に回収させています」


 細かな話は質問に答えつつしていく。レイが直接見ているので助かった。勿論私の話は削り、スムーズに進んだ話になっている。魔獣の宝玉と聞いて訝しげに眉を寄せられたが、少なくともアデン教会がそう呼称しているものが原因で回収も済んでいる。領主は一応始末は済んだと判断した。


「後は地下にいるラルフを叩けば出るだろう。レイナード、ハラーコ嬢には報償を与える。他に話はないか?」


 ハイラルの許可に行くかと思っていたらメヌールがテーブルに黒い聖典を置いた。また忘れていたや。


「呪いや疚しいものは解除しましたのでお返しします。もうこの本を追う者に探知はできません」


 テーブルごしに聖典は返された。メヌールは中身については言及しない。


「ラルフの件で理解しました。私たちといいますか、ハラーコは位置を特定されれば襲撃に合う可能性が高い。そして規模も酷い。私とハラーコは先に旅立ち、ホラ村の移転ではレイナード魔導師に連絡を貰い一時的に戻る形にしようと思います。ご理解ください」


 メヌールは決定事項として話をした。領主はまた眉をしかめる。


「確かにハラーコ嬢を最大戦力と見て大規模な被害が起きかねないのはわかる。ただ、我々も大きな計画があり、その戦力を買いたい場面が多いのだ。また個別に依頼は受けてくれるのかね?」


 転移もコピーも戦力というか戦術として手放したくない。気付けば領主ともずぶずぶの関係だったみたいだ。魔獣の宝玉の不幸因果なんて眉唾な話もできないので私は下を向くしかない。


「思えばハラーコは、自分が立ち寄った村を不幸にしたくないとここまで協力してきました。しかしながら、本人にもその火の粉が降りかかったのです。若い娘が意思を持ち外国へ来ている。何か別の優先しなければならない物もあるでしょう。事の重大さによっては助けに来たがるでしょうが、物別れする時ではなく穏便に旅立つ機会が今しかないのです」


 なかなか酷い言い草だったが、メヌールは穏便にと強調した。軽い脅しだ。空気を読めるフリッツさんは睨んできたがなにも言わない。レイがへらへら笑いながらだめ押しをする。


「ハラーコの旅の目的はわかりませんが、一年だけ私の弟子を同行させて貰えることになりました。彼女は部外者ですが弟子は間違いなく軍人です。全て彼女と同じは無理でも魔法の幅は既存の魔法使いとは違うものを手に入れられます。通常幾ら金を積んでも得られない物を我々に無償提供してくれるのです。これは身内ではありませんが、紛れもない友情の証でしょう。外国人に命じられることは退去のみです。これ以上の条件は今を過ぎれば難しいと存じます」


 ハイラルを同行させるのはレイの都合であり、彼の資金が出ているがそんなことは言い出さない。領主サイドへの誠意として育成することになっていた。メヌールもその通りであると頷くのでそういう打算もコミコミなのだろう。


「移動を禁じられてしまうと私は……」


 特に考えていなかったが困っていることを伝える。領主の中でも計算ができたようで苦笑いを向けられた。


「領民ではない君や戸籍を無くすメヌール司祭に私が命じられることは何もない。力で抑えることも不可能だろう。安心なさい。ただ、私は君たちと友人でありたい。すぐに出ていくつもりだろうが一晩待ってくれ。私からの友情の証としては微妙だが、メヌールと君に通行証を発行する。名や職に希望はあるか?」


 私とメヌールは穏便に旅立つ許可を貰えた。明日、朝一番にハイラルも加えて三人に偽名と仮の職を貰い外国行きの旅券を貰う。ほっとした私たちは一晩医務室に泊まり、明日旅立つ。

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