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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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17日目 ぬめ相談

 メヌールが起きた。私が身に付けている呪い避けのアクセサリー類を確認してから一息つかれた。呪い避けは防御札と構想が同じらしく、今後腕輪を近付けられても吸い込まれる前にこのアクセサリーが先に弾け飛ぶ音がするのでその間に転移して逃げろとのこと。心配かけて申し訳ない。破壊前提のアクセサリー作りは面倒なので予備もアイテムボックスに貯めておくことにする。


「ところで、ゲストは返してきたんじゃな?」


 医務室にいるのは未だに魔力不足で寝ているレイナードとハイラル、色々吹っ切れた顔のベッチーノくらい。レイは一人だけ軍属なので軍の会議に出ている。


「一応シナリオ通りに刷り込んで返しました。腕輪も複製して、現場も荒らしたのでそれっぽくなっているかと。あとディランから私の記憶を抜いています」


 最低限の片付けは済んでいる。後は会議が終わったレイと領主の元にいけば宿題は終わりだ。


「他にやり残しはないかのう? 問題なければレイナード魔導師に連絡係を頼んで引っ越し前に旅立っても良いかもしれぬ。正直、長居して人の繋がりを得るほど巻き込まれかねん気がしているのじゃが」


 ごもっとも。宿の礼から派生して問題が巨大化し過ぎた。ゾンビ発生から合流したメヌールなんて最初から逃げ前提の話だったし。


「それは確かにそう思います。残るは手を出せない話ばかりですよね?」


 魔法権益争奪戦とかダークエルフとか。


「魔法やら教会やらはもう領主に戦ってもらうしかないのう。ダークエルフはどうにもならん。コンスタンティンから引っ張れないならもう情報など引き出しようがないからのう。あとはハイラルか」


「そういえばネタバレしたのにハイラルは連れていくんですね」


 私が腕輪にインしている間にそこはメヌールが話し合ったらしい。ガルドに残して死んじゃうより世間から隠れる旅のがマシとなった。私もメヌールも宝玉影響を隠していたいという方向だったのでハイラルにも隠したまま一年だけ動向させようと。


「半年じゃなかったんですか? あと確かにハイラルから宝玉のあれこれは消しましたけど一年も隠し通せると?」


「君が普通の一般人に溶け込む練習台だと思うように。レイナード魔導師からは記憶の抜き取り許可もとっている。

 半年延びたのは宝玉のせいじゃよ。今からアデンに宝玉が納められたらガルド教会に宝玉を返すかもしれないし、しないかもしれない。実際に世に転がっておったのだからそれを理由に敵や勢力がより変化する可能性もある。前回の話し合いより宝玉一つでまた色々と大きくなったんじゃよ」


 話も危険度も上がったと。ハイラルの事情はなんとなくわかったが、私は一般人に溶け込む必要があるのだろうか? 外国人旅人なのに。


「私、溶け込まなきゃですかね?」


「いつかは私も死ぬからのう。金の計算に常識的なマナーは勿論、一人になった時に宝玉についてのフォロー役がいなくなる。今回みたいに腕輪に吸い込まれた時に私がいなければどうなっていたと思う? 芋づる式にことがより難解になる。止める術は覚えねば安息はないんじゃぞ?」


 ああ、これは頭が上がりません。無力化や説明役がなければ軍に広がり全てがパァになっていたかもしれない。


「今回だと君が離れたら自動で周りが魔法にかかる魔道具があれば良いな。ハイラルの教育方針もそういう防衛に応用できる魔道具作成になる。私の専門は元々魔道具じゃしな」


「情報収集とか聖典作りかと思ってました」


「聖典も魔道具じゃ。そういえば昨晩黒の聖典を確認したぞ」


 すっかり忘れていたが昨晩のうちにメヌールは黒の聖典を調べていたらしい。領主に報告する前に軽く話しておくかと語ってくれた。

 黒の聖典は見た目が厨二病の塊だがほぼ中身は正しく聖典だった模様。違いはアラムウェリオの教会が出しているものより加筆や削除があること。これは珍しいこともないそうだ。獣人の主神は風の女神なので、風の女神を讃える文が多かったりアラムウェリオの賛美が足りなかったりする。こういう違いだ。黒の聖典を製作しているであろうダークエルフは闇の神が主神という主張なので、他所にはない闇の神讃歌がかかれていてもおかしくない。しかしどうもそれだけでもないらしい。


「問題点は二つ。一つは闇の神が追加されていること。二つ目はその邪神は神を貶める存在であること。あんまりにも酷い話で領主に話したくもないのじゃが」


 嫌がるメヌールをつついて語らせると、なんだ、ただの昼ドラかという内容だった。アラムウェリオと奥さんの間に沢山産まれた子どもがその他の神だが、闇の神は奥さん以外の婚外子を臭わせているらしい。はっきりとは書かれていないが、ただの人であるエルフに手を出したように感じられるんだとか。ギリシャ神話感覚だと極々普通の神話に感じられるが、メヌールはそうではないようだ。


「一人の男、一人の女で夫婦になり、子孫を残す。光の教会だけでなく大陸では神から学びその様な婚姻や家庭形態でやってきたのじゃ。もっというと、不義や不義の子は異端審問にて処される。大体の国の法にも記載されておるぞ。つまり、自分達を否定するか神の不貞を疑うなどという罰当たりを自らの思想でないとはいえ公に口にするのは耐え難い苦悩なんじゃ。君には一から言わねばわからぬから伝えたが、アデン人同士で話すには酷すぎるんじゃ」


 常識がそれなら仕方ない。しかし話さずにいてもいいのだろうか? 既にダークエルフはガルドに侵入しているのだ。領主には必要な敵の思想だと思える。


「ダークエルフが次にでたら話せばよい。それまで胸に秘めておけ。大陸で目の敵にされる思想じゃ」


 そうまで避けるなら仕方ない。仕方ないが、これ魔獣の宝玉と同じフリだわ。嫌なフラグが立てられた気がする。


「話を戻すが、領主へ報告したらすぐに出るぞ。君も荷を纏めるのじゃ」


 相談ではなく夜逃げ宣言を貰い、私は仮住まいの掃除をしに一旦帰宅をすることにした。

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