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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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17日目 解除

 暗く、手足を知覚できない。これは精神が狂う奴だ。意識が浮上して確認できたのは暗闇だけで、他は自分すらわからない。

 おかしくなる前に立て直そうと絞り出したら、記憶の中の私の一人が、「精神世界って奴じゃないの? お約束ド定番なら」と回答する。仲間と切り離されて一人精神世界にいくと物語のお約束では神や悪魔、もう一人の自分や記憶などと対話してパワーアップをするらしい。これ以上何を強化するのだろう?ただの人になれたりするとか神に怒られるくらいしか浮かばない。

 自分の声すら響かないが心の安穏のために目を瞑って思考しているのだと言い聞かせる。その上で今後の展開を記憶群から引き出したり妄想したりして時間を潰した。自分が自分であるための努力をしているとやっと動きが出る。


『ハラーコ! 返事して!』


 それはレイの念話だ。至近距離でも辛かろうとこちらから念話を繋ぎ直そうとするがうまくいかない。正しくは、日本にいるように魔力なんて感じず魔法なんて使えない状態。宝玉を運ぶ腕輪に吸い込まれたと考えるのが妥当なので魔法を封じられていると見ていい。レイの念話を受信する形で返事するしかないようだ。


『こちら花子。魔法、使えないみたい』


 レイが外から念話を使うということは恐らく私が魔獣の宝玉だとバレているだろう。そして念話の先が腕輪か宝玉かに繋がることも。態度が変わらぬレイはのんびりと安心したと述べた。


『メヌール司祭が腕輪から取り出す方法をドンカチャかけたディランから聞いてきた。どうも長時間一つの腕輪に寄生させていると魔力負けして腕輪が壊れるらしい。今の念話もそれで通り始めたみたいだけれども最初は通らなかったんだ。で、本来一つの宝玉を回収していた場合、三時間で綻び出すらしい。君の場合宝玉二つで今は一時間くらい。三倍早く壊れるとしたら三時間くらい我慢してくれたら出られるみたいだよ』


 全てわかった上でのお話で余計な詮索探りあいがなくて済む。レイの適応力は助かるなぁ。今の所、三人同時に長い話を刷り込ませたり転移させたりの必要性から私が何でどうすべきなんて話は後回しだ。メヌールが保護してくれるのも大きいだろう。場合によっては今日仕事をしたら引っ越しまで雲隠れになる可能性もあるがなんとなくこの穏やかさなら見なかったことにくらいしてくれると信じられた。

 レイの念話は魔力の都合上これだけで、時間経過を待てとのこと。暗いし怖いがなんとかなるなら精神的に楽になる。いっそのこと暫く寝ているかと考えることを放棄した。




 次に目が覚めたら医務室だった。急に体が重く感じて、その違和感で目が覚めたらしい。


「おかえりハラーコ」


 挨拶をくれたのはレイだけだ。


「早速で悪いけど魔力に問題がないならメヌール司祭と代わってあげて。君がいない間、三人を眠らせながら監視をしているんだ」


 メヌールの睡眠系統の魔法は医療向けで麻酔のようなものらしく、ただ眠らせる私と違い完全監視のコントロール必須魔法だとか。三人を三時間、これはかなりしんどそうだ。屏風のように蛇腹式の衝立があり、レイが開けると目が据わっているメヌールが三人を睨んでいる。すぐに睡眠をかけてメヌールの肩を叩くと近くの寝台に横になられた。


「君がいなくなるだけで全て破綻すると身に染みたわ。すぐに呪い避けを作って防衛してくれ」


 メヌールはもう無理だとここでダウンする。


「ご迷惑おかけしまして」


「まぁ、君も司祭も安易に口に出せないのはわかるよ。僕自身怖いのもあるし」


 苦笑いしたレイはそれでも今更梯子は外せないと流されたらしい。


「君自身の人格に疑問はないし、ここまで組んできているんだ。逆に争う方がどうかしているってくらいまではお互い踏み込んでるしね。それにお伽噺はお伽噺。現実どうかなんてまで考える段階は過ぎてるし、向いていない。最後まで知らなかったふりはするから安心して


 ぽんと頭を叩かれた。


「自分でもよくわかってないので助かります。引っ越しまでよろしく」


「こちらこそ。ついでにハイラルも引続きよろしく。

 ハイラルで思い出したけどハイラルとレイナード君はメヌール司祭に無理矢理魔力をとられてあっちで寝かせてるよ。ベッチーノさんは達観してるみたいでラルフと彼らの監視をしてくれている。記憶抜きあっちも頼んだ」


 後片付けに残っていたのは追加された記憶操作らしい。私と一緒に転がりでてきた宝玉はもう一つの腕輪に吸い込まれた後だった。予定と追加仕事をしてから全員元の配置に送る。呪い避けを作ったりして過ごし、メヌール達が起きてきた時には漸く大部分が片付いた。

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