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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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17日目 宝玉封印

 期待せずにいると何故かくじ運が良くなる気がする。木札の中で一番最寄りのアイリス村。そこにいた教会の派遣員八名の中にディランはいた。

 アイリス村は王領東部に位置する村だ。最北村のように三つの衛生村を持ち、ガルドでのマフュブのように特殊生産物に特化している。また、引っ越ししない王領ルールのためか、田舎村とは言い難く立派な宿屋が建っていた。その一室にディランはいる。

 お留守番なのかディランともう一人しかいないことを確認。定番化し始めている睡眠魔法を一気にかけて侵入した。


 バチバチバチッ


 ディラン達についている防御札が幾つも壊れた音がした所で二人は倒れる。無事ディランをゲットして医務室に帰還した。


「ディランいました!」


「よし、ドンカチャで情報をぬくぞ」


「現状報告もさせてね。宝玉回収の記憶も作らなきゃだし」


 憐れディラン。眠る彼を囲んでする会話はどう聞いても悪の組織。目覚めたらバッタ男に改造されてもおかしくない。

 ディランから鈍感ちゃんで引き出した情報はなかなか今の状態をカバーできるものであった。

 まず、魔獣の宝玉の受け渡し方法。アデン教会で管理している腕輪を近付ければ、人体ではなく腕輪自体にくっつくらしい。ただあんまりにも一人が所持していると取り込まれるので交代で運ぶらしく派遣員全員が腕輪を持っている。

 次にディラン達のアイリス村滞在理由。王の物である土地で王の物である民が作った王の物である植物が減っている。王都にあまり届かない。不作だと聞いていたが横流しの疑惑があり、そこに不正があれば悪もいて宝玉の影響を受けているのではと調査にきていた。


「つまり、アデンアイリスを不正に手に入れている者が魔獣の宝玉に操られていて、そこから宝玉を回収したと改竄させれば違和感はないのう」


「実際にそんな人物がいるなら擦り付ければいいですが、いなければどうします?」


「あからさまにいるじゃろう。でなければそんなに滞在せん。ディラン、不正を行う人物の調査はどのように?」


 ディラン証言ではアイリス村とその衛生村の村長達が怪しく、裏帳簿を押収したらしい。


「そこまでいっていれば時間の問題ですね。帳簿の中身で確定はいつ出るんですか?」


 残念なことに裏帳簿は結縄文字であり、不正を隠したい村人から翻訳者を雇えず、正規の帳簿と照らし合わせながら必死で解読中。代官屋敷に派遣員は詰めているが結果がでない。

 もう証拠は置いておいて、宝玉探しをしたらいいのにというと、貴族ではなく教会の調査に家宅捜索権はないらしく踏み込むために必要なのだとか。


「メヌールじいさん、数日のずれは違和感でるし、不正は無視して取り込まれた村長と魔法バトルした記憶でもつけた方がいいかもです」


「ざっくりだが仕方ない。留守にしていたのはディランともう一人いたのう。留守番二人に襲いかかってきたことにして村長一人と留守番二人に改竄記憶を刷り込もう。追加で連れてきてくれんか」


 メヌールのオーダーに従い、村長宅から一人とディラン達の部屋から一人追加で連れてきた。宝玉を回収させたら鈍感ちゃんで刷り込もうと教会知識豊富なメヌールが台本を書く。手の空いた医務室の暇人は台本が出来るまでディランに質問を続けて待つことになった。


「宝玉持ち帰ったら出世すると思うけどどうする?」


「出世は望みません。還俗して婚姻を望みます」


「わお。魔法使い狩りって還俗できるの?」


「現状難しいでしょうが、褒賞であれば可能かと」


  主にレイの暇潰し相手であった。ディランが意外と結婚願望があり見合いから楽しく過ごした話をするたびに私を見てくる。ちょっと嫌がらせかもしれない。理想のタイプを聞こうと言う所でメヌールのストップがかかる。


「何をしているのじゃ。クロイツ流派の魔法と一般村人が見聞きできる程度の魔法で書いてみた。違和感が無ければ戻すときにこれに合わせた戦場痕を作るように」


 板一枚に書かれた文字が読めない。レイに渡して間接的に読む。宿屋に乗り込んだ村長Aが襲いかかり、二人が応戦しつつも押されて、最後に首を絞めに来た村長に腕輪を押しあてて難を逃れる台本だった。久しぶりに短編小説を読んだ気分になる。正直魔法バトルなんて何がスタンダードなんだかわかるはずもない。メヌールが指定した魔法が可能か鈍感ちゃんにかかった二人に確認するだけに留まる。


 準備ができた所で宝玉の回収だ。ディランの腕に腕輪がついているのを確認してお願いする。


「ディラン、そこに転がっている男が魔獣の宝玉を持っています。回収してください」


 頷いたディランは当たり前のようにラルフに近付く。これまでの推移を見守ってきた面々はこれで大体の問題が解決すると見守っていた。

 ラルフにくっついていた宝玉は腕輪が二十センチ程の距離になると震える。震えたように見えたがじわじわと皮膚に上がっていたようで暫くするとちゃんとした玉となり腕輪に吸い込まれた。


「よし、じゃあハラーコはドンカチャしながら三人に台本を読み聞かせてて。僕はラルフを縛っとくから」


 宝玉を失ったラルフは触っても怖くないとレイが早速縛り始める。翻訳を写したメモ帳を開いた私は三人に台本を刷り込ませる作業に入るために部屋の隅に集めた。


「え」


「あっ」


「大丈夫か?」


 ディランに椅子を用意して振り返ると彼とぶつかった。ぶつかった拍子にディランの腕輪がカタカタ揺れてそこにあった宝玉が消えている。


「ハラーコ、大丈夫か? 君に宝玉が吸い込まれたように見えたが」


「大丈夫じゃないでしょ! すぐに回収して! ディランにドンカチャを」


「ならん!」


「なんで?!」


 私には見えなかったが、私が魔獣の宝玉を吸いとったらしい。宝玉回収の腕輪を近付けたとして今の宝玉だけとれるのだろうか? 軽くパニックではあるが自分自身も回収対象の魔獣の宝玉だから不味いことはわかる。私が消えてしまうかも? どうしたものかと停止した私の横でメヌールとレイがもめている。別室で話すとメヌールがレイの服を掴んだのが見えたが、また事態は変化した。空気は読まずに作る男、レイナードがディランから腕輪を奪い、私に押しあててくる。


「あああああ!」


「ちょ……まっ……」


 想像通り私の意識はそこまでであった。

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