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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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16日目 神への挑戦

 毎度お馴染み困った時のメヌールじいさん。共犯者兼現地アドバイザーである彼にお伺いをたてればそれなりになるだろうという安直な考えである。ホラ村医務室に戻り簡単な状況説明をしたら考えといてやるから寝ろと寝台に押し込まれた。


 起きたらなんかやらかした感でヤバい。疲れたり飲んだり怒ったりする度に大雑把なことをやらかしている。ちょっと精神不安定な人になったかもしれない。バツが悪いなと顔をしかめているとメヌールが連れていけというので一緒に山の中に移動した。


「少しは戻ってきたようじゃな」


 メヌールが山の中に来たのは特別な用事ではなく密談のためだったようですぐに石に座る。


「敷物がありますよ。お茶もいれますか」


 既に太陽は昼を示しているのでそのままピクニック状態になり山の景色を眺めながらの昼食も作る。謎の緊張感の中無言ですませてからメヌールの話が始まった。


「ハラーコや、君は鑑定魔法をかけたりじっくり顔をみたりしてはならぬ呪いをかけられていると言っていたが、君自身は調べることはできるのかのう?」


 お約束のように本題とはそれたところから話をふられた。ちゃんと解答には行き着くのでその話にものっておこう。

 さてセルフチェックができるかであるがやったことはない。なんとなく続けざまに二人も倒れているし、本能的に私も嫌悪感があり自分のことは深く探らないできた。つい先程なんでもできちゃう魔法を使い、最大限にどこまでできるか見てみたが二週間を過ぎても私のスペックは謎のままである。メヌールがいうセルフチェックはアイデンティティやスペックではなく、多分鑑定でわかる病気や呪いのことを指すのだろうが、そんなこんなでそこまで行けるほどの余裕はなかった。この場で試してみてもいいが、先の二人のように倒れたら困るし止めておく。まずはそれよりその話の真意から聞いておこう。


「したことはありません。部隊長みたいになりかねないので環境を調えずに試すのは危険です」


「それは私も同意見じゃ。恐らく私もレイナード魔導師も魔力差で弾かれるので治してやることはできんな。

 君が領主の違和感を感じたように、私は君に違和感を覚えることがある。私が考えるに君は兄君に認識阻害の他にも何かセーフティ的な呪いをかけられていると思った。事態を良くしていこうと思えばまずは君がまともに思考できる状態を確保しなければならないじゃろう」


 ごもっともな話だ。毎回展開や優先順位が変わるごとにパニックになる遊撃手は使えない。今もいっぱいいっぱいなのだからいつかしらみ潰しも不可能になるだろう。兄は存在しないが神的な何かに呪われている可能性は高い。


「領主を治すのは事態が昨日と変わらない状態にはなるじゃろう。じゃが内部で揉めるのは爆発的に問題ごとが増える。白日の下に今晒したとして君が耐えられるとは思えん。治す治さないの議論の前に君の呪いを安定させてからにしようと思う。呪いなんかなく君がそういう本質だった場合はどうにもならんので素直に逃げるかのう」


 余計な一言がついたが、今後を考えるとやるだけやった方がいい。

 素直に頷くと既に案はあったようでメヌールは魔法の袋から何かを出して敷物に並べ始めた。何をする気かはわからないが黙って待つ。敷物には魔石や金属などが増えていく。


「まずはアデンで神官がよく使う簡単な呪い祓いを教える。通常は魔力量の低い呪いを祓うものじゃ。よくみているように」


 メヌール先生は呪いの解き方理論から始めてくれるらしい。回りくどい説明と実技を纏めるとこうだ。

 呪いは直接術者が対象にかけるものと、物を使うもの、被害者本人が間接的に関わるものがある。違いは魔力供給源で上から順に術者、魔石、本人の魔力を使う。術者が使う場合は当然術者の魔力供給が切れたら終わるので一過性の物で今回は関係ない。私が毎回行動や思考をトリガーに呪われているとすれば道具や本人の魔力であるが、私自身は最初に着ていた日本のよくある服も封印しているので本人魔力と推察された。

 本人魔力が供給源の呪いは魔法の回路がどこにあるかはわからない。特に私の場合はバカみたいに魔力があるので自身の肉体に刻まなくとも遠隔に供給できるので、呪い自体の破壊ではなく供給源に制限をつけてシャットアウトするのが一般的だという。

 メヌールの実演を見ると電池と家電製品の間に絶縁体を置くのではなく、家電製品の方からより強い電力を流して止めることと破壊を兼ねている作りだ。把握できないものを壊したか修復されたかはわからないので延々と逆流させるそうだ。


「つまり私の場合はどこに何が繋がっているかわからないので全方位に魔力を発散させると」


 理論はわかったがやることはやっぱり力業らしい。


「普通の魔法使いじゃと勝てる魔力かわからぬので補助具を作る。ハラーコの場合も家系的に兄やら親やら親族が君を上回っている場合もあるので保険につけると良い」


 メヌールの考えでは大陸内の人間ならいらないだろうが、私みたいな外国人はバカ魔力かもと警戒している。そんなものいないが実際は神への挑戦なので確実にいるだろう。寧ろ勝てるかあやしい。

 魔力を高出力で発散させるには皮膚の表面に薄い魔力膜を張って常に動かす。簡単にいうと電子レンジでものを温めるように操作してエネルギーを元にエネルギーを作る。補助具はそれをより効率的に行うための装置だ。魔力を電気に例えるとわかりやすいようでわかりにくくなるが、肉体自体に回路を作るのではなく外付け発電所を作って供給しろという話のようである。

 メヌールの指導の元で少しずつ複雑なものをアイテム複製を使いながら増やしていく。できあがりは皮膚接触を意識してアクセサリー類になった。何気に今、この世界にきて一番のファンタジーをしている。


「完璧に防げるかはわからぬ。できることはしたという所じゃな」


 残念なことに私の神への挑戦は勝っても負けてもリアクションは得られない。とりあえずファンタジーアクセサリーを身に纏えたことだけは喜んでおこう。更なる改造は随時行うとして準備ができた。


「君の呪い関連のテストとして今から君の本性を見てもいいかね?」


 メヌールは私の顔を見つめた。彼は倒れなかったが怖いものを見たように表情を歪ませる。

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