2日目 肉好きとの旅路
何かの獣の肉でした焼き肉は、大変盛り上がりました。
鉄鍋に牛脂っぽく切り出した脂を引いて、ひたすらジュウジュウ焼いていく。
焼き上がった肉を私が木箸で皿に乗せる。カイトはわんこそばかというハイペースを見せつけ、それを黒パンで挟み口に流しこんだ。
パン自体はあまりないのと箸も使えないため、何度も同じパンで挟み、肉汁で柔らかくなったらパンも食べる。
軽くちょっとの昼食のつもりが食べ放題の焼肉屋になってしまった。
箸がつかえる私しか焼けないため、カイトはそりゃもう食べることに集中する。
「肉旨かったなぁ」
既に焼肉パーティー終了からだいぶ経った現在も、カイトの脳内は肉だらけであった。
「今夜も同じ肉ですよ、カイトさん」
カイトが食道まで肉を詰めこんだ結果、元々ギリギリのタイムスケジュールを大幅に遅らせ、未だ村は見えてこない。
日も暮れそうだというのに予定の四分の三程の位置らしく、道の途中で夕飯が決まっている。
「ハラーコ、怒ってる? でも肉を焼こうと言ったのは君じゃないか」
「もう少し食べられていたら納得出来たと思うわ」
カイトの食べっぷりが凄まじく、私自身は三枚四枚しかつまんでいない。おかわりコールが鳴りやまず、ひっくり返すだけでも大忙しなのに、追加で肉を切り出したり、溜まった油を棄てたりの作業に費やされたのだ。
「次はもう少し控えるよ。
ところでさ、一つ提案があるのだけれど、ハラーコは信心深い方だったりする?」
突然何の話だろう。正直に答えると無関心を装っていても、神社や仏閣に悪いことをする人がいると聞けば罰当たりめと思うし、親兄弟が死んだらちゃんとしたお坊さんを呼びたいとか思ってしまう。
完璧にフラットな無神論者ではないわけだ。
答えに困っていると返答を待たずに追加情報をいただいた。
「実はさ、流民に見せたら悲しむだろうからってのと、あんまり余所者に見せるものでも無いってので、この先は一部だけ墓地を迂回する形で道を作り直してるんだよね。
夜道も危ないし、ハラーコに問題がないのなら近道できたらなと思ったんだ。
この辺から西にずれたら墓地の横の道に出られる」
墓地の横ですか。それだと信仰心よりホラー耐性を聞いてほしかったな。怖いような悪いような気もするけど通過するときに手でも合わさせて貰えれば通れないこともない。
「大丈夫だよ。むしろ私が通って後で問題にならない? そっちの方が心配よ」
「間に合う時間ならまだしも確実に夜道を強行軍だからね。安全の方が大事だって皆わかってることだから大丈夫だよ」
多少カイトの返答は不安が残るが、早く着くにこしたことはない。
「カイトさんがそれでいいのなら」
カイトはそれを聞くとモフ馬を道から西の方角へと誘導した。