14日目 王都観光②
「ここの細工が限定五店モチーフを売っている場所かー」
クリーム色の煉瓦が組まれて漆喰に塗られた柱や飾りが少し女性向けに見えるファンシーな店構えである。ディラン解説によると限定モチーフことエヴィーリングの竪琴は男女ともに愛されるデザインなのだという。風の女神エヴィーリングと名将エヴィーリングの二つの意味を感じさせるらしくヒューマンにとっては慈愛と果敢さを示す。今回来た店はそういう男女どちらも買いやすく贈られても困らないチョイスなようでどちらも違和感なく入りやすいというのが現地人の感想だ。ニックが切符を渡して降りてきたのに合わせて四人で店内にお邪魔する。
「いらっしゃいませ」
初老に入りかけた上品なおばさんが店員のようで木製カウンターの向こうから笑顔をくれた。
「こんにちわ。日数がないので出来上がっている物を買いたいのですが、エヴィーリングの竪琴をモチーフにした耳飾りや数珠の留め具を見せてもらえますか? 出きればセットであるものから値段帯をバラバラに男性向けで三種」
ショーケースがないのでとりあえず頼むと三人とおばさんは少し驚きながらもカウンターに商品が並べられていく。
「ハンナ司祭、店員のおすすめは聞かないのですか?」
「最初から既製品を出すように言うと侮られますよ」
「予算は話されないのですか?」
最後のニックの言葉に今度は視線が彼に集まる。私とニックは二人して貴族の買い物不合格らしい。小さくなるニックが可哀想に思いながら、話を変えるためにカウンターの商品を見つめる。
「モチーフは揃いですが石の違うものがありますね」
「見本ですので加工済みの石から選んでいただければ直ぐに付け替えられます。司祭様でしたら耳飾りは魔石になさいますか?」
貴族向けに宝石をつけているようで、魔法使いや神官には魔石がデフォルトのようだ。領主に贈るのはとりあえず宝石にして、メヌールとダブルレイには魔石にするかと眺める。値段はわからないがランクの違いは鑑定をかけてみれば明確で、金属の色艶だけでなく耐久力にも違いがあった。どうせなら長持ちするものを贈りたい。
「このランクの物を幾つかお願いします。魔石は持ち込みできますか?」
売買には税金がかかるが持ってる人間が魔石にリボンをかけようが魔道具からつけはずししようがかかったりはしないと教えて貰っている。魔石の加工は宝石より早くに終わるようなのでいけそうなら持ち込みで済ませたい。
「本日中に可能です。持ち込みでしたらサイズが変わりますので先にお見せいただけますか?」
領主からの袋をあけて耳にしても違和感が無さそうな物を探す。肩凝りしそうなものだらけだ。勿体ないのもあるが加工に時間がかかりそうなのでアイテムボックス内のローウィの魔石を出す。ちょっとましなサイズレベルだ。一つから切り出すとダース作れそう。ごとりとカウンターに石を乗せる。
「凝縮させても大きいですよ」
「そうですわね、凝縮させて大体このサイズでしょうか?」
またよくわからない言葉が出てきた。魔石はそのまま削らず小さくできるらしい。魔力が減らないで小さくなるなら便利過ぎる。店員のおばさんがサイズ見本として渡してくれた玉や雫は耳から提げると肩に当たりそうだ。
「じゃあ半分カットで両耳お揃いで」
見習い三人に反対されたがでかい耳飾りなんか魔法使いが下げてはいられないと思う。五十肩で杖が上がらないとか言われたら贈り甲斐がなくなるじゃないか。
店員のおばさんは客の注文なので今度は半分サイズの見本を出してくれた。丸いのより雫の方が魔法使いっぽい。ティアドロップ型を選ぶとそれにつけれるピアスとイヤリングの金具を並べてくれる。竪琴が留め具のモチーフだったり、石を覆うデザインだったり面白い。
「ねぇ、魔法使うのに落としにくいのはどれだと思います?」
外でヒャッハーをしているであろうディランを中心に三人に問いかける。意外なことにニックが一番説得力のある意見を出した。
「師匠は落ちても音がしなかったとなくしてきます。派手な音がしそうな金具が擦れあうこれがいいと思います。室内限定でしょうが」
結局、金属飾りがじゃらじゃらしそうなデザインをダブルレイナードに。領主とメヌールにはシンプルな耳飾りと数珠留め具を頼んで帰り取りに来る約束をした。三人に支払いを頼んで魔石を置いて先に店の外に出る。正直差がわからないオプション関係も含めて任せるに限る。