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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
110/246

13日目 魔法使い狩り狩り

 突然の訪問だがガルド領主は快く面会をしてくれた。彼は今、一蓮托生である私たちには無駄に偉ぶらない権力者である。彼に何かあればみんながみんな困るのだ。絶対に守るべき人物だとメヌールも信じている。

 魔法使い狩りが目標として黒い聖典を追いかけている説明をして、コンスタンティンがアレに死霊術が載っているとどこで知り得たのか聞くべきだと話す。領主は顎を撫でながら少し考えてこちらに目を向けた。


「黒の聖典は私の先祖がダークエルフから奪った品に幾つかあるのだ。使用人が燃やしたとされる闇の技術の倉庫には三十冊近くあったらしい。当時の記録にはダークエルフの信仰する闇の神について加筆されているが中身はほぼ我々の聖典と変わらなかったとあるのだよ。ダークエルフも魔法使いばかりではない。何故聖典に魔法の指南が載っていることになるのか? 開かなくとも鑑定結果は聖典であり魔導書ではないのだ。コンスタンティンは周りに魔導書のように吹聴しているがコンスタンティンが偽りを述べているか誰かに誘導されたのか? 少なくとも開かぬ内はわからぬが、私は黒の聖典にそんな秘密はないと思っている。それより鍵など何時誰が何の目的でかけたのかそれが気になる」


 領主の話では少なくともダークエルフは聖典に物騒な鍵をつける文化はないらしい。コンスタンティンが黒の聖典を魔導書扱いする原因は開かなかったことにあるだろう。


「だとするとその鍵を調べたいですね」


「こちらに持ってこさせる。本と一体化しているので我々には鍵だけ調べるのは不可能なのだ」


 領主の命令で現れた本は黒々として年月を感じさせない革表紙だ。八つの頂点に金具を取り付けがんじがらめの怪しい姿である。分離させなければ調べれないそうなのでアイテムボックスを使って別けてみた。


「素晴らしい。黒の聖典の中身も調べたいが預けた方が良かろうな。鍵の鑑定を頼む」


 領主から任されたので本はアイテムボックスに、鍵を鑑定する。


「怨念の鍵。深い怨念を蓄積しなければ開かれない。五割程蓄積されていますね。制作者サンドラ・イシュー……どこかで聞いたような」


「私にはわからぬが、貴族名簿で調べさせよう。ヒューマンではあまり家名に使いそうにない音だ」


 ヒューマンではないかもしれないで思い出した。あれだ、人避けの標。ダークエルフの上にあった石の魔道具の制作者だ。


「領主様、サンドラ・イシューはダークエルフを埋葬したと思われる人物です。コンスタンティンに尋問の許可を」


「わかった。直ぐに転移して調べてくれ」


 許可を得たので地下牢にとぶ。見張りが驚いたがコンスタンティン自体は寝ている。寝ているコンスタンティンの脳を直接探るとダークエルフの姿が見えた。

 サンドラ・イシューは闇の技術を使うコンスタンティンに聖典を渡し、死霊術を得ればアランが死んでも操れると唆し……。


「ハラーコ嬢、何が見えた」


停止していた私の肩を領主が揺する。振り返ればあの強い瞳が現実に引き戻す。


「サンドラ・イシューは間違いなくダークエルフです」


「そのダークエルフはコンスタンティンに何を?」


「死霊術を授けると」


「見返りは?」


「ヒューマンの魂を一万」


「どのようにしてコンスタンティンは払おうと?」


「魔法使い狩りが魂の回収も兼ねて清めも行うと」


 アランに成りきったコンスタンティンは魔法使い狩りたちに道中清めよと指示している。


「領都とホラ村の間にある村は……」


「調べさせる。ハラーコ嬢は魔法使い狩りを探してくれないか? 移動ですら何をしでかすかわからぬのならば悠長に待っているより即押さえることを選ぶ。追加報酬もだす。ここの牢はいつでも追加してくれて良い」


 領主の決断の早さにあまり驚いたり呆けたりする気がなくなった。報酬は王都で使える貨幣で頼むと言い、ガルド大教会に転移した。




 あちらには送信オンリーだがテレパシーを使う司祭が混じっている。先程の魔獣対策室のおじさんの脳みそを見張っていれば受信時にはきっと魔力の糸が伸びるだろう。起こして鈍感ちゃんでぼんやりさせたおじさんの横でアイテムボックスから聖典と鍵を出したり入れたり繰返した。発信器はついていないがちゃんと追いかけることができているようなので出たり消えたりがガルド大教会で起きればそこにあるのかと問合せくらいはしてくるはず。


『室長! どういうことなんだ!?』


 傍受しているおじさんの脳にちゃんと連絡がきてくれた。文句を叫ぶテレパシーの糸を辿りマップに座標を重ね合わす。カルアの村からやや西寄りの草原でキャンプを楽しんでいるらしい。

 テレパシーが続く中、発信者の上空に転移した。テントに焚き火が確認できる。あそこに魔法使い狩りという名の大量殺人犯が五人もいるのだ。暗黒微笑の魔法弾きのように何か防御や対策は持っているだろう。こちらも安全策としてレイにかけた以上に付与魔法を浴びておく。バフは充分。人間か怪しい私の脳内にもアドレナリンが溢れてきたようだ。


「こんばんは」


「お前ら起きろ! 魔法使いだ!」


 焚き火の前に降り立つと火の番をしていた二人が即反応した。挨拶から入ったが全く聞いちゃいないようで仲間を呼びながら杖を向けてくる。ただの威嚇ではなく本気の殺る気だったみたいで中々大きな火柱に視界を奪われた。火の対策は水だよな。魔法のシステムがゲーム脳の私は火柱に水をかけるとすかさずもう一人が小さな雷を私に放つ。転移で彼らの後ろにとぶ。水を出させて感電させる連携のようだ。イメージしていた以上に対人戦闘能力を感じる。


「どこだ!」


「何人きた?」


「一人、黒髪の女だ」


 五人は三人と二人に別れて背を守るように周囲を見渡す。気配遮断と光学迷彩で私の姿は隠してあるが何の魔法をもっているかわからない。息を殺してテントの裏で最初に火柱をくれた男に鈍感ちゃんをかけた。


 バチッ


 やはり暗黒微笑と同じ魔法対策はしていたようで弾かれた時の音を拾う。


「攻撃だ。三つも飛んだ、残りを確認しろ」


「隊長、予備をとってきましょうか?」


「動いたら勘づかれる。相手は空から降りてきた変態女だ。きっと見張っている」


 確かに見張っているが変態扱いは悲しい。それより飛んだと言うのは魔道具か何かを使い捨てして身を守ったようである。物量で圧せば全て消し飛ぶか? そう考えていたら一人の女と目があった。見えている。直ぐに転移したが、転移以前の場所には氷のよく尖ったものが沢山地面に刺さっていた。


「いたのか?」


「逃げられました。魔力探知で見えます」


「全員魔力探知!」


 ヤバい。見つかる前に全ての防御を物量で飛ばすしかない。五人の足下を丸く半径五メートル、火柱を特大でお見舞いする。


「予備を取りに行け!」


「行きます!」


 そうはさせない。テントをアイテムボックスに収納。次は雷を五人に落とす。五人は地に伏したまま動かなくなった。診療鑑定で五人を調べると三人死亡、二人は瀕死。生きている方を治療して遺骸も纏めて地下牢にとぶ。


「流石、ハラーコ嬢。仕事が早いな」


 即時捕縛をしてくると謎の信頼を戴いていたようで領主は見張りと共に酒を飲んで待っていたようだ。少しイラっとしたが、アデン人はもうとっくに寝ている時間。無理矢理起きていてくれたのだと良いようにとっておく。


「三人は殺してしまいました」


「一万人殺す奴らなんだ。誇りなさい」


 領主は私にも杯を渡して黄色い色をしたアルコールを注いでくれる。


「これを飲んだら朝まで寝られる。王都に帰ってよく寝るといい。報酬も明日だ」


 軽く私の頭を叩いた領主はそのまま振り返らずに地上への階段を昇っていった。私のための寝酒だったらしい。若い頃はきっと女泣かせだったのだろうなと見送り一気に杯を空ける。きつめのアルコールが胃に流れ落ちた。酔いが現れる前に王都の寝台にさっさと帰ろう。


『ハラーコ、マッピング終わったよー。迎えに来てー』


 忘れていたレイから連絡がきたのでさっさと医務室に帰してから私も王都に帰還した。締まらないなー。領主様、レイにハードボイルドさを分け与えてください。

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