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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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13日目 見合い①

 金持ち施設にも時計はないのでこの国は朝日が見えて一日が始まる。つまり深夜に起きたら日付が変わってたなんて表現は意味不明なものなのだ。しかしながら下働きは主人より早起きしなければならないのは万国共通なので日付が変わる前に起きると言われる。現代地球感覚がぬけない私には日が昇る前の早朝だが、アデン人には深夜に起きると表現されてややこしい。

 どうしてくこんなだらだらとモノローグで時間概念について語っているかというと目の前の人物達のせいである。


「深夜に女性宿舎に入るなど穢らわしい!」


「マイルズ室長から許可というか命令が下ったのだぞ? 深夜だろうが出頭命令は優先すべきだ」


「取り次ぎを頼めば良いのです! 宿舎中の女人が怯えています!」


「お前のせいで起きたのだろう、声を抑えろ」


「静かにしたら無体なことをなさるでしょうよ!」


 男性神官が私の部屋のドアを半開きにしており、女性神官が怒鳴る。ばっちり彼らに起こされたのだが何が起きたのか教えて欲しい。覚醒しない頭で朝なの? 夜なの? と混乱しながら窓の外の朝焼けを眺めていた。よくわからないけど朝だわ。

 起き上がって窓辺まで歩いたが二人は全く気づかないし私もタイミングを逃した感がすごいので二人を無視して魚を炙り始めた。朝御飯はあっさり塩味の魚に麦飯にしようかな。時間を巻き巻きにして麦飯を炊く。味噌汁も欲しい。

 もうすぐ食べられそうだと思った頃に口論は止まる。匂いで気づかれたか。食べ終わるまで待って欲しかった。


「ハンナ司祭、何をなされて?」


「朝食ですか? 立派な魚ですね。申し訳ありませんがマイルズ室長がお呼びです。お早めにお召し上がりくださいませんか?」


 女性は融通が効かなそうだが、スマイルの男性は話がわかるタイプのようだ。他におかずがないので二つ焼いた魚の内の一つを笑顔君に進呈する。益々の笑顔、嬉しそうにかぶりつく。


「いや、もう、ハンナ司祭、施錠系の魔法はかけてお休みくださいまし。この男が怪しい動きをしたら叫んでいただければ一同駆けつけますのでご注意下さいね」


 口論ではきつそうだったが女性の方も意外と優しい子のようだ。ようし、いい子には魚をあげよう。新しい魚を出して炙りながら焼き上がった方を渡す。多分、寝起きで判断能力が鈍っているがもりもり食べて悪いことはないはずだ。




 ご飯が終わり覚醒してくるにしたがってなんとなく状況が読めた。この男性は昨日の室長からの逆ハニトラ要員であり、今から他の候補者と顔を合わせる。暗いうちに呼びに来たら女性に捕まったようだ。女性はこの女性宿舎に住む人で日の昇らない男子禁制タイムにきたチャラ男許すまじというバトルである。チャラ男扱いされた男性の脳内を見てみると、なるほどチャラ男というレベルの楽しいことに流されたい願望を持つ。逆ハニトラも朝ごはんも危ない香りがして参加したようだ。そういや朝ごはんない文化でしたね。色々把握してふと思った。


「人、待たせてるんだっけ?」


 頭が働いていなかったとは言え、婚活女子設定的にまずい。慌てた方がいいかもしれない。


「昨晩中に集まったのは司祭見習い以下ですのでお気になさらず。ここの見習いは司祭以上が日の出前にいらっしゃるとは思ってもいませんよ」


 男性脳内補足を付けたら彼を含む司祭二人に見習い以下四人が用意されていた。もう一人の司祭が来る前につけば問題ないらしい。一晩で六人もよく集めたな。ちょっと感心する。室長は結婚相談所にでも転職した方がいい。

 急がないでも良いらしいので身支度と言ってトイレや洗浄をしてから男性についていく。どうでもいいけどゴージャス教会でもトイレは地獄への洞穴でした。


「ところで名前を聞いてなかったね。私はハンナ。ガルドからの通信要員として五日滞在する予定だよ」


「これは失礼を。私はスペンサー。魔道具申請室に所属する司祭です。と、いいましても最近司祭になったばかりなので見習いとかわりませんが」


「私はあまり教会にいないからよくわからないのだけれどその昇進ってどうなっているのかしら?」


 あくまでアデン大教会の話として軽く説明を受ける。正直、知識すっかすかで潜入とかちょっとおかしいことをしている自覚はあった。

 見習いと一括りにしているが司祭未満は基本、八階級もあるらしい。学ぶ期間という意味合いが強いので学習進度を示しているらしく、年齢や在籍期間は関係ない。

 これが司祭になると全般業務ができないといけないし、専門業務がつくそうだ。スペンサーの場合は魔道具申請室で経験値を上げて事務が強ければそのまま、魔道具が強ければ魔道具管理室、研究のできがよければそこから制作研究室と道が開く。そういう専門分野としてメヌールのような零細教会やニックがなりたい歩き神官も布教外務室というジャンルのようだ。私の場合はどこかわからない所属だがこの布教外務室を装った諜報員だと思われている。教会、神やファンタジーより企業化してないか?


「それでお待たせしている方たちはどのような立ち位置で?」


 名前も所属も覚えられそうにないので渾名をつけて優先順位をつけることにした。

 スペンサーと並ぶ司祭は『マッチョ』だ。マッチョは見た目通りの肉体派で教会警備関係をしている。魔法使えよと言いたいが、魔力切れを想定して杖での物理攻撃を極めていた。魔法使い狩りをする部署じゃないと攻撃魔法なんて育てないようである。知りたいことが浮かばないので放置候補ナンバーワンだ。

 次に見習いだが司祭に最も近い奴は『不機嫌』。不機嫌は魔獣素材に傾倒しているので師匠は全員研究室の人間である。司祭昇進と同時に研究室まで一気にかけ上がるであろうが師弟合わせて獣萌えだ。魔道具での兵器情報あたりなら引き出し甲斐があるかもしれない。ただスペンサーの脳内でヒューマンには興味無さげとあるのでコストとリターンの天秤次第だ。

 その後に続くのは『昼ドラ』になる。昼ドラは家庭が複雑過ぎるので確実に還俗できないのだが、ドラマや漫画のように貴族復帰のサクセスストーリーを目指していた。スペンサーも観賞対象として絶賛している。昼ドラ展開により腹違いの姉と魔道具管理室長の弟子を巡って争っており、魔道具管理室の秘密を色々握ってしまっていた。非常に人物として気になるが情報収集の方向性が違う。場合によっては使い用と分類。

 残りの二人は師匠について既に教会暗部に関わる人物だ。本命と言ってもいい。魔法使い狩りをしている『暗黒微笑』と清め段取り屋の弟子『エタブリ(エターナルフォースブリザード)』。ニックと変わらない中高生ルックスで厨二の世界にどっぷりだ。表にでない教会の主戦力に詳しいだろう。情報を持ち帰りたい。


 スペンサーから手に入れた情報を手に対面する。全員洗脳も有りかもしれない。真面目に相手するのどれも難易度高くないか?

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