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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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12日目 スパイ

 結果だけ述べるとアデン大教会からガルドの伝令と認識された。させたという方が正しいかもしれないが。魔信や他領と連携がいる部署の神官達にあれこれたらい回されたり増殖されたりもあり計十五名。揃いも揃って田舎者や嫁き遅れと嫌味をくらった。五日ほど王都に滞在しろと命令され見習い用の小部屋に押し込まれる。夕日が見れる頃に鐘がなるのでそれまで休んでおけとのお言葉だ。

 勿論過酷な旅などしていないので結界を探しにいく。内部構造なんてわからないので適当にふらふら庭に出られる場所を探した。


 アデン大教会はガルド大教会と違い引っ越しなしで百年近く建っている。見た目はキリスト教の大聖堂のように随所に彫刻や絵画、硝子の窓も存在した。しかしながらその構造は最初から設計したものではないらしくゲームのダンジョンの用にいりくんでいる。二階の渡り廊下を歩けばその先は三階だったり、螺旋階段を降りればいつの間にか地下階にいたり。装飾の統一性だけで利便性は置いてきぼりだ。建物の移動で外に出るのは不可能だと理解した私は十分も経たずに音をあげて転位で庭に出ることにした。

 庭に出た私は歩き回りながらマップを展開し、聖域の結界をレーダー探索をする。メヌールのような一人司祭の場合は建物の柱より内側に設置するがガルド大教会のような場所では宿舎をカバーしていた。このアデン大教会も大所帯なので宿舎周りを探索する。散々うざったられながら聞いたのは見習い用の棟の隣に司教棟があり、更に上位はかなりの高さの塔にあるという情報。上位の塔だけ離れた位置にある。まずは見習い棟と司教棟周辺。探してみたがそれらしいものはない。上位の塔だけ守っているという話なのかと歩いていると見習いらしき三人組に出会った。


「こんにちは」


 軽く挨拶をしたが膝まづいて領主が受けていたような礼を受ける。


「私はガルド大教会から来た者です。そんな礼は必要ないですよ」


 話を聞くと資格の権力格差は激しいようだ。とりあえず仕事できたので必要そうな施設の場所を確認していると嘘をつき、三人組に案内をさせることに成功。彼らは今向かっていた上位塔からの帰り道だったらしい。


「司祭様はお幾つで司祭になられたのですか?」


 他領の出世情報をやたら聞きたがるニックを先頭にちゃんと舗装された小道を歩む。


「二十歳くらいかな? 養父が継げって言ったもんで」


 レイナードの設定で話を盛りながら進む。メヌール曰く出世させたい養父母ならば若くに譲ってしまうらしい。


「貴族出身の方なのですね。その結縄は養父様が?」


 すっかり忘れていたが庶民マークをして歩いていた。ニック以外の二人も失礼だといいつつも興味津々。仕方がないのでそれっぽい設定がついた。

 司祭ハンナは大司教アランの外向け諜報員として戸籍ロンダリングされている。通信と移動の魔法を持っていたのでスカウトされたが元は師匠のいる魔法使い出身だ。父親でもあった師匠は死期が近いために娘ハンナの幸せを願い教会へ預けているのだがお便利な魔法を幾つも持っていたので未だに教会所属。そこそこの縁談を餌に出張三昧という設定。

 ニックは羨ましげに、二人は残念な人を見る目で納得してくれた。うまいこと三人の上司に扱いやすいお便利だと伝えてもらえれば助かる。設定が浸透すれば近付いてくるカモが増えそうだ。


「なるほど。先住市民が受け入れやすくなるのですか」


 出張道具の一つとして興味深げに結縄を見つめてくる。そこは嘘ではないのでうんうん言っておこう。

 そうこうしていると塔の前まで来た。敷地内なのに更に囲いと門兵らしき司祭もいる。


「ありがとう。今はすぐ用事があるわけでもないから、ここがわかれば大丈夫。」


「では御滞在の棟までご案内します」


 来た道を帰りながらまた雑談だ。レーダー探索で聖域の結界の位置は把握できている。夜にでもこっそり取りに来よう。三人からアデン大教会の常識を聞きながら部屋につく。




 このまま教会にいた方が良いか領主に確認がとりたい。転位してもいいが折角なのでテレパシーみたいなので連絡を取ることにした。送受信できる改造版の方が使い勝手が良さそう。適当に作り上げて領主に直接話しかける。


『聞こえますか? 花子です。聞こえたら頭の中でお返事を』


『ハラーコ嬢? こんな魔法も持っていたのか。そろそろ時間だと思うが追加は十名程しか用意できていない。呪いの破壊は終わったのか?』


 あまり驚かない領主は直ぐに適応した。少しつまらなく思いつつも現状報告をする。脳内通信なせいか喜色が乗った声がした。


『予想以上だ。素晴らしい。ガルドの話をしたらしいがゾンビの話を知っている者がいれば一人の時間に接触してくるだろう。

 アデンの呪い破壊は呪いの研究具合なんかを調べてから帰り際でかまわない。追加料金を出すので中央の魔法管理関連もわかれば引っ張ってきてほしい。

 ホラ村の方がどうなっているかが気掛かりではあるが』


 このまま大教会潜伏で良いらしいが、確かにホラ村がどうなっているかは気になる。テレパシー通信にベッチーノを追加して三者通話を狙ってみよう。


『ベッチーノ。花子です。脳内応答求む』


『え? 何ですと? ハラーコ様は多芸すぎでは?』


 普段のしゃべりよりフランクなのは脳内だからかもしれない。


『領主様も繋がってます』


『驚きなのはわかるがホラ村の現状を聞きたい。無駄にハラーコ嬢の魔力を使うわけにもいかぬだろう』


『おおお。領主様お初に御目に……御目に? ええ、はじめまして。最北村の村長ベッチーノです。裁定からずっとホラ村に滞在しており、襲撃から軍に保護されております。

 現状ですがそちらからいらっしゃった領軍の方が追加人員を使い、警備を強化なさいました。村長やナルガ家の話は村に伝わっているだろうからと、炊事場に何人かおき正しい情報を伝えるそうです。明日の朝死刑を行うことも伝わるそうですので、変化の確認は夕刻を過ぎてからまたお願いしたいです』


 つまり夜まで警戒はいらないということのようだ。


『何か追加でいるものはあるか?』


『レイナード魔導師がいらっしゃれば助かります。一人見習いの方もいらっしゃいますが事が起きれば対応しきれないそうです』


『ハラーコ嬢、彼と十名の転移を』


『日が完全に落ちたらまた繋ぐのでその時に。場所はカルアの会議室に。転送希望者のみいれといてください』


 お仕事が回ってきたが離れにくいので見ないで転移させてしまう計画だ。ホラ村の引っ越しまでのつもりだったが何気にスパイとして大成し始めている。最後まで付き合う気はないが置き土産はたっぷり残して気持ちよく出ていこうと思う。色々言い訳をしているけど、メヌールが襲撃されてから本当は少しこの世界をごちゃごちゃさせてやりたいのだ。復讐とも違うが主体性のなかった私も人に悪意をぶつけたくなってきている。性格悪くなったなとも思うが環境のせいと開き直った。目標は教会が魔法使い狩りをできなくすることになる。

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