文学少女の夢
少し推敲しました。
皆さんの理想の死に方は何だろうか。
私は本に埋もれて死ぬことだ。
ただし、条件がある。
とある文学全集の、しかも平安期の作品群でならねばならぬ。
小学生の頃から、本棚の前に立つのが好きだった。
受験期には、
「終わったら本棚の前でどれ読もうかなって悩むんだ」
と本棚を尻目に勉強していた。
そんな私は今、高校の薄暗い図書室の奥で、白い背表紙の本に読みふけっている。
これは好きだ。持って帰ろう。
私はそれほどその本が好きだった。
その本は平安時代の日記やエッセイ、土佐日記ではなく蜻蛉日記とか枕草子とか、紫式部日記に讃岐典待日記をまとめたものだ。
そんな夢を十年も温めて、その出版社に勤める友人が出来た。
「挨拶代わりに辞書を持っていきたいんだけど、国語辞典と漢和辞典どっちがいい?」
「敢えて漢和辞典でお願いします」
「そのセンス好きですよ」
そんなやりとりをインターネットでした後で、安いラーメン屋で私は話したのだ。私の夢を。
「そうなの?あれ編纂してるのね、いいおばあちゃんなのよ。私も手伝ったことある。伝えとくね」
彼女は笑顔で言った。明るい店内を、私は今も覚えている。
高校の薄暗い図書室の片隅で誰も借りない古典文学全集に夢中になっていた文学少女の思いは、もしかしたら編纂者に届くかもしれない。それは私にとって大変な喜びだ。
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