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雲、立ちぬ

何故か三人称にしてみるなど。

 二年ぶりに全員が揃った、トッカンジャーの面々。

リーダーである〈神祇官〉(カンナギ)級長津彦しなつひこ、通称“級長”もしくは“シナ”。メイン回復役ヒーラー担当の〈施療神官〉(クレリック)のひびき。魔法火力マジックユーザー担当の〈森呪遣い〉(ドルイド)のOB・FES、通称“島田”。メイン盾役タンク担当の〈守護戦士〉(ガーディアン)のヴァイス=ゼンゼンマン通称“ほわい”。物理火力メレーアタッカー担当の〈武士〉(サムライ)盛野景唐もりのかげから、通称“しずこはん”。サブ盾役タンク担当の〈武闘家〉(モンク)のアルジェント通称“銀”。

加えて、級長津彦の教え子である〈吟遊詩人〉(バード)のなか邑の計七人が、ギルド会館内のテーブルの一つに顔を並べていた。


「よしっ! そんじゃ、みんなでギルド名考えよっか!」


 級長津彦が宣言した直後、他全員が勢いよくテーブルに突っ伏した。


「そこは決めとけやー?!」


 すぐに復帰した島田がすかさずツッコミを入れる。

残りのメンバーも続々と顔を上げつつ、シナに苦言を呈する。


「いやー、普通そーゆーのは考えとくもんだろー?」


「うち、名前とか考えるの苦手なん、級長知っとるやん?」


「最終的に見切り発車なとこまで相変わらずかよっ!」


「うわぁ・・・そういう肝心な事を面倒臭がるとこまでお兄ちゃんそっくりとか・・・」


「あー、確かに。システムが承認しちゃってたら〈D〉だったんだよね、あのギルド」


「「マジか!?」」


「「MAJIDE!?」」


「マジダ小隊。偶然立ち会った僕とひびきが証人です」


「『字数が足りないと言われました。どうしましょう?』なんて聞いたから、結成メンバー全員でズッコケてたよね」


「あらぁ・・・クラさんたら、いけないお人やねぇ」


 彼等がこれまで所属していたギルド〈D.D.D〉。

ギルド名の由来には諸説あるが、その実情は「“D”だけでは決定出来なかったので仕方なく」だと知っているのは、結成メンバーのみである。

余談だが、〈D.D.D〉に現在残っている結成メンバーは片手で数えられる程度である。他のメンバーは、外部の互助ギルドのマスターになったり、ミナミ名物のピーキー兄妹ペアになっていたり、ギルドを点々とし、最終的にとある偏屈ギルドに落ち着いていたりと様々だ。


「それはともかく、ご心配には及びませんぜ? 候補はちゃーんと絞ってあるから、そこから決めようぜって話ですんで」


 級長津彦の言い分を聞き、とりあえずホッと息を吐く一同。何故か得意げな顔になった彼は、鞄から一枚の紙を取り出した。そこに書かれていたのは。


〈マッスル☆オクレ団〉

〈ばけつぷりん〉

〈フライング・ダッチャワイヤー〉

〈ディラン・マッ(白目)〉

〈セルデシアの果てまでイット⑨!〉

〈天高く聳え立つ富士 海を湛える浜名湖の畔で 僕たちは夜明けの宴を開く〉

〈G細胞がトップギアだぜっ!〉

〈計画性 ZERO~♪〉


・・・等々。


(((((マトモなのが見当たらねーっ!)))))


 最早、絶句するしかなかった。


「あるぇー? なんかリアクションがうっすーい。ご不満です?」


 周囲の反応に級長津彦が首をかしげると、なか邑が感情の無い瞳を向け、


「絞ってある、って・・・言ったでしょ?」


疑問とダーツを投げた。


「ディっ!? 死ろされる!?」


「絞るっつったら、普通多くて六つぐらいだら? これ明らかにその数倍だやん、しかも全部しょんないし。つか、六つ目のやつだと『字数が規定値を超えています』って言われるら」


「んー・・・うち、〈ばけつぷりん〉やったら、まぁ、ええかなぁ? って」


「いやー、志津子の推しでも、流石にそれは」


「これもう、みんなでイチから考えた方がいいんじゃね? あ、『シナ抜きで』の間違いだった」


「えー。僕ギルマスなのにー」


「まだ(仮)だろー?」


「こんなノイズだらけの残念ギルド名ばっか思いつかれたじゃやってられんだよ」


「仮に一緒に考えるにしても、もう少しシャキッとした名前にして下さいよ?」


 全員の反応を見てもさほど堪えていない様子の級長津彦。それどころか、むしろ楽しんでいる風にも見てとれる態度を見たひびきは、彼の思惑を見抜いて諌める。


「シナ。そろそろ真面目なやつを出そうか」


 すると、「バレたか」と言わんばかりに頬を緩め、


「やー、さすがにひびきには敵わないなあ」


 鞄からもう一枚、紙を取り出した。


「・・・はあ。なんだよ、あるんじゃねえか、ちゃんとしたの」


「真っ先に出してやー?」


「そーそー。悪ふざけはやめろよなー」


「ほんになぁ。うち、頭ん中真っ白んなってもぉたわ」


「あー・・・この人がお兄ちゃんと同類だってこと、すっかり忘れてたわ・・・」


 各々苦情を挙げつつも、一様に安堵する。


「ディヒヒヒ、悪戯好きですいません」


 微塵も反省していない調子で級長津彦が謝罪すると、全員が彼にチョップを見舞った。


「そんじゃ、これで登録してきまーす」


 全員が記名した羊皮紙を持って、級長津彦はカウンターへと歩いていった。


「しっかし、あいつ。変なとこで気が利くっつーか、意外と洒落た事をするっつーか」


「ほぇ?」


「ああ、確かにそうだやなー」


「ん? 何が?」


「・・・あ。ひびきさんのお店の名前だ」


「・・・ん」


 新たに立ち上げたギルド、その名は───


     〈綿雲の旅路〉キュラムス・ジャーニー     

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