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8.怪しい店主

 いろんな店がある。あ! 服売ってる!!


「類!」


 私の指差す方を類が見る。


「ん? ああ、そうだな、札の前にこれだな」


 そう。いくら港町とはいえ、服装が目立ってる。港町でこれなら、この先もっと大変になるだろう。さっきは田舎道からだったし水菊の大量さも手伝ってか門を通れたけど今度はそうもいかなくなるだろう。せめて服装だけでもこっちに染まらないと。

 店には男女両方置いてる。なんか意外。魔法の世界ってもっと発達してないのかな?

 うーん。可愛いのとか売ってない。微妙。しかも値段、結構するし。

 二人は動きやすさを重視したの選んでる。まあ、そうだね。目的はひたすら歩く! だもんね。決めた! 私も動きやすさを選ぶ。これならまだ手頃。次に二人は靴も選んでる。ああ、靴もだ。足がもう痛い。うーん。スニカーなんてないしな。

 二人の持ってるのは軽そうな靴。スニーカーないし、仕方ない、可愛さなんてまるでないけど、これで我慢、我慢。


「お客様あぁ! 外から来られたんですねえぇ!」


 店員がどこからか飛んで来た。嫌なタイプの店員だ。この店選んだの失敗?

 ここは無言で通してみよう。


「ミ国からですか?」


 あ、これはジュンさんも言ってた。巳国だ。龍国の隣の国でずっと王様がいないって。やばい? 巳国から逃げてきたんだと思われてる? 巳国に送り返されるー?


「い、いえ」


 慌てて隆が答える。


「そーですか。そーですよね。ええ、わかります。わかります。」


 何がわかったんだろう。ってか怖いよ、この人。


「あ、あの?」


 類も怖いと思ったのか服も靴も台に置いて聞いている。私も隆も持っていた服と靴を手近なところに置く。いつでも店を出ていけるように。


「これは内密に……」


 この店員はこの店にたった一人でいることと年齢からいっても店主だろう。店主は私たちに近づき他にお客もいないのに急に声をひそめる。


「従兄弟がね役人でしてね。この国の龍国の札を作れますよ!」

「えっ?」

「本当に?」


 それはいい話なんだけど……この人信用ならないな……。

 私達の反応を見て当たりだろうと確信したんだろう。怪しげな店主は話を続ける。


「そうですね。一人三百、三百万ペギーですかね」

「ええ! そんなに?」


 持ち金では一人分にしかならない……。

 それだと、一人札をもらって例の水菊取りに行くしかないけど……。

 私達が困っているのを見てまた声をかけて来た。


「では一人二百万ペギーにしましょうかね。どうすか?」


 それでも服を買いご飯を食べて宿に泊まると使っていくのだから一人分ずつ買うのが賢明だろう……。

 有り金全部出すのは怖い。やっと手に入れたんだし。この国のお金。


「じゃあ、この服と靴もらえますか?」


 何も聞いてないかのように類が話を続ける。


「ええ、じゃあおまけで二千四百ペギーですが二千にしておきましょう」

「あ、ありがとう」


 類は支払い。服を受け取る。


「そちらに試着室もありますから、お使いいただけますよ」


 どうしようと私達は顔を見合わせる。怪しい店主だけど、ここで着替えられたら嬉しいのは確かだし。

 宿までこの格好だと宿で着替えても皆に見られてるしなあ。


「ささ、お嬢さんはこっちで、お兄さん達はこっちに」


 私達の無言でいるのを了解だと店主は解釈したみたいでドンドン奥に行くき、試着室の前で止まって言う。


「アリス前で待ってるから、一人ずつ着替えよう」


 類の提案を受け入れる。


「わかった」


 店主の怪しさは全開だけど、ここでこの話を終わらせるのは惜しい。それにさっき聞いた。役人が腐敗してるって、お金で札がもらえるくらい腐敗してるんだとしたら……。やってみる価値はある。多分。お金に厳しい世界だから容易に信用するのは怖いけど。

 逆にお金に絡んでるから信用できるのかも。さっきの男もそうだったし。ただここの店主怪しすぎ!

 私が先に入り着替える。簡素なTシャツに綿パンって感じ。靴は簡素な物。どれも新品らしく体になじまない。けど、着替えが出来てホッとした。

 私が出ると類が着替えに入った。

 また店主が近づいて来た。


「服の買取も出来ますが、どうされますか?」

「あー、どうするアリス?」


 どうしよう。服を持っているのが怪しいかもしれないし、徒歩での移動だし……でも帰る時困るし。

 と、類が出てくる。私同じようなチョイスだ。それしかないもんね。


「もう、いいんじゃない? どうせ荷物もないんだし。どこまでも行けるかわかんないけど、邪魔なのは確かだし」


 聞こえていたんだろう出てくるなり言った。

 だよね、お金の稼ぎ方がわかって、もう少しこの先に進める道が見つかったんだしと、この世界をもう少し見てみたい気持ちに変わっていた。

 隆を試着室に入れた類は聞く。


「いくらですか?」


 店主は嬉しそうに答えた。


「そうだね。三人分で三千ペギーってとこですね」


 服代より高い? 珍しいっていうのはプレミアなんだろうか。

 類は少し考えてた。出した答えは


「札は……札と一緒でいいですか? 取り敢えず一人分いつ出来ますか? その時に服売るか決めますんで」


 やっぱり店主の怪しさに時間をおくみたい。そうだよね。


「はい、どうもありがとうございます! ええ、お代は現物との交換で。服もその時にで結構ですよ。期日は今日はもう遅いんで明後日でいいでしょうか?」


 この商人口調、やっぱり怪しい。でも、仕方ないこうするのが最善だよね。



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