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7.ロイリの店

 今度はこれをどうするかだ。さっきの人達について行く。みんな同じ場所を目指しているようだ。だけど、皆量が少ないし、私達を見ると必ずギョッとする。

 何があるんだろうか、これに?

 皆は店だろう場所から順番待ちの行列に並ぶ。私達も並ぶと前も後ろも距離を空けられる。何なの?

 店の名前は『ロイリの店』。これじゃあ、ロイリさんの店って事しかわからないじゃない!

 順番はドンドン進む。出てきた人にもギョっていうリアクションをいちいちされるし、嫌な順番待ちだった。


「なー、何の店かな?」

「これってどうなるんだろ?」

「避けられ過ぎじゃないか? これって、なんかあるのかな? 有害? とか」


 類と隆の会話に入る気力もない。限界です。はい。もうこれ終わったら類に頼もう。

 そんなこんなで順番回って来て店の中へ。店の中も並んでる。皆少ししかやっぱり持ってない。

 うわ! なにこれ? 気持ち悪いよー! いろんな生き物やらが乾燥されて置いてある。もちろん草花も。あ! これもある!

 散々取って来ただけに乾燥してても同じってわかるよ。乾燥もドライフラワーっていうよりそのまま乾燥って感じ。

 よく見たら前の人のは違っている。あ、その前も。皆違う種類をいろいろ持ってる。

 私達だけ大量に同じ種類だった。たまたま前にいた人のを参考にしたんだけど……大丈夫だろうか。こんなに取ってきたのに。

 私達の番になった。店主のロイリさんは私達の持ってるのを見て慌てて店の奥へと消えた。

 嘘……逃げられた?


「やっぱりこれまずいんじゃないか?」

「ああ、別のと間違えたんじゃあ」

「えー、今さらだよ」


 もうヘトヘト! 店の中に入りさっきからのお客と店主のやり取りで、どうやらこれは売れるんだと気づいた。ご飯が……ご飯が食べれる! という私の期待は風船のごとく膨れ上がり針で突かれたよ。

 バーン

 って。

 類も隆も同じらしく三人で役にも立たない、いや、無駄以上に危険かもしれない草花を見つめている。

 違う種類のも取っといたら良かった。

 と、店主がかなり後悔していた私達のもとに大きな樽をフワフワ浮かせながら持ってきた。


「お待たせいたしました!」


 と、張り切ってる。


 あ、これかもジュンさんが私達を運んだ方法。結局あの場所から朝から夕方までかかって歩いたけど、こんな方法ならたいして遠くには運べないだろう。家から川までで精一杯だっただろう。3人もいるんだし。


 と店主が樽をすぐ脇に置き、ありったけの商売人スマイルで話してきた。


「これはこれは! よくそれで水菊の毒に侵されませんでしたね。生は毒があるから少ししかとれないんですが、それに水菊の毒は特に強い!」


 ああ、だから、乾燥してるんだ。まあ、このまま放っておいたら腐るけど。


「は、秤にそれぞれ載せていただきたいんですが」


 そばに居るのも辛いのか店主は話しながらドンドン後ろへ下がって行く。

 私達はそれぞれ持っていた草花を秤に載せていく。それを店主がメモを取ると今度は樽へと移動していく。店主は相変わらず距離を置いている。これってそんなに危険なものなのかな? 私は店主の様子を見ていて心配になってきた。

 持っていた草花を樽へと移したあと腕を観察したけど軽く花粉がついている程度で特に異常はないし、類も隆も異常ないようだった。

 そこに今まで抱えていた草花がなくなったからだろう、一生懸命計算している店主に聞こえないように後ろに並んでるいる人が類にゴショゴショ話をしている。何の話だろう?

 計算が終わった店主は発表! とばかりに息を吸ったけど、声ちっさっ!

 後ろにまだ並んでる人達に聞こえないようにするためだろう。


「では、百万ペギーでどうでしょうか?」


 どうでしょうといわても単位も価値もわからないじゃない。どうしようと思ってたら類が自信ありげに答える。


「話にならない」


 一刀両断だ。店主はあわてて言い直す。この様子だとめっちゃ足元見られてたみたい。


「ああ、すみません。計算間違いで三百、三百万ペギーでどうでしょう?」


 三倍になってる……どんな計算ミスよ。


「帰ってもいいんだけど」


 類がさらに釣り上げようとしている。しかもすごい自信だし!

 あ、さっきの後ろの人! あの人になんか言われたんだ。きっと。


「あ、あ、では、四百、四百五十七万六千ペギーでどうでしょう?」


 うわ、数字が細かくなってる。きっと正確なんだろう。さっきまでのざっくり感がないし。


「わかった。じゃあそれで」

「はい」


 類がやっと承諾した。店主は落ち込んでる。が樽の方を見て顔がほころぶ。もっと取れたんじゃないのかな。でも、皆この店に来ている、ふっかけすぎて話がなくなりお金を逃したら元も子もない。私達には余裕はないんだから。


 お金を手にして店を出る。


「類! なんて言われたの?」


 例の後ろの人にだ。


「ここの店主はがめつい。いつも値を下げて言う。君達は服装が変わってるから外から来たんだろう? 絶対に誤魔化してくる。四百だ。四百万以上店主が出したら受けろって」

「へえーいい人もいるんだね!」


 ラッキーだった四分の一以下で売るとこだった。まあ、価値はわかんないけど。


「おう! 坊主達言ったとおりだろう? こっちは、店主の奴、珍しい水菊が手に入って上機嫌になってたから今日の交渉は簡単だったよ」

「ありがとうございました!」


 私達は頭を下げた。まあ、相変わらず価値わからないんだけどね。

 そんな私達に男は手を差し出す。

 はあ? え! やっぱり世の中そんなに甘くないよね。


「端数の六千ペギーで手を打とう」


 六千ペギーがどのくらいの価値なのかわからないけど、この人がいなければ半分以下だったんだ、仕方ない。

 私達は目を合わせて頷く。

 男に六千ペギーを渡した。男はすぐにこの場を去ろうとした。

 類は六千ペギー払ったからか、男を引き止め話を聞く。


「あのー、さっきの水菊が最高額なんですか?」

「知らずに持ってきたのか?ああ、あれが草花では最高額だよ。その辺によく咲いてはいるが毒の強さが一番でね、魔力がやられるから、少量しか取れないんで高額なんだよ。それに使われる時の魔法も強い魔法に使われるし。それ以上は動物が高額だよ。動物は皆森にいるから都会になればなるほど高額になる。森には小人もいるしな。動物は使われる魔法もさらに強力だしな。まあ、知ってるとは思うが」

「え、ええ」


 適当な相槌を打つ。さらに類は男と話を続ける。払った以上の情報を入手するつもりなんだ。って相変わらず価値はわかんないけど。


「この、龍国のこの街では泊まるのにいくらぐらいかかりますか?」


 もうすっかり暗くなってる。確かに現金がある。泊まれるかも! 野宿を覚悟していたとはいえ野宿でない方がありがたい。


「まあピンキリだけど一人三百ぐらいからあるけど、お嬢ちゃんいるならもっと上にした方がいいだろうな」


 この人私達を他国から来たんだと思ってるようで気軽に話してくれる。私をチラリと見ていう。

 って、一人三百から泊まれるなら……六千はボリ過ぎじゃない? もう渡しちゃったけど……。類もそう思ったのかまだまだ話を続ける。


「次の街に行くにはどうすればいいですか? それと次の街まであと何日かかります? あ、あの歩いて」


 そういくらお金を手にしても魔馬車買っても意味ないのよね。私達魔力がないし。馬いないし。ただの魔力のない人間なんだから。お金があっても移動は全て徒歩になる。

 ああ、ケンタウロス……ただの人間に魔法の国治めさせる意味がわからないよ。もうこうなってくるとそこもどうなんだろうとか思えて来るけどね。いったいなんの為なんだか。


「次の街かい? でも他国の者はここまでなんだよ。この街、塀で囲まれてるだろう。こっちとこっちは左右に沢山ある田舎から、こっちが次の街への門でこっちが港へ続いてる。他国の者はここで宿をとったり商売をするのは許されてるが港への門以外は通してはくれないよ」


 男は地面に魔法で地図を書いてくれる。ちょうど十字に門がある。さっき門番の前を通過したけれど水菊の大量さに目がいってたからこの服装でも通れたのかもしれない。


「しかし、船旅であれだけ新鮮な水菊を大量に運んで来るとは、龍国の事知らないわりになかなかやるね」

「あはは。ええ」


 また適当な返事で誤魔化す類。本当はさっき門の近くの道の付近で取ってきたばっかりなんだけど。


「あの、行きたいんじゃなくて知りたくって龍国は次の街までどれくらいかなー? って。あ、自国民はどうやって区別を?」


 類はどこまでも貪欲だ。私はお腹減ってご飯のことばかり考えてるのに。


「ああ、そういう事か。次の街へは徒歩で三日だね。自国民がわかるのは札だよ。札。どこの国でも同じかと思ってたけど。君たちの国では違うのかい?」

「あー、そのどこも一緒なのか知りたくって」

「若いもんは好奇心旺盛だな」


 なんか勝手に納得してくれている。っていうか想像以上に荒れてないよね? どういうこと? もっとこう荒んでたりしないのかな。

 類も私と同じことを思ったらしい。


「龍国は王様が亡くなって、てっきり荒れてるのかと思ってました。全然荒れてる様子じゃないですね?」


 そう、ジュンさんは貧しかったけど、皆そうは見えない。もちろん貧富の差なんてどこにでもあるんだろうし。


「いやいや、そう一見は見える。裕福なものは打撃を受けにくいからな。まずは最下層の貧民層が打撃を受ける。そして徐々に広まる。俺なんてその最貧民層だ。皆毒が回るの承知で取ってきてこの店で金にするんだ。命がけだよ。君達さっきの一体なんて魔法なのかい? 他国の魔法は進んでるねえ」

「いや、あれぐらい」


 と、またも類が誤魔化す。


「役人もすっかり腐敗しちまって、すっかりお金の世界さ」

「ああ」


 だから……ジュンさんもこの男もだ。そんなに悪い人じゃないのに。お金に左右されるんだ。国がそうなって行ってるから。そうしないと生きていけないんだ。


「じゃあな!」


 と、次の質問をされる前に男は去って行った。


「類、ご飯も宿も早くしないと」


 私はやっぱりこれが心配だった。


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