表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/34

4.この世界には

 人影が次第に近づいてきてすっかり見えるようになった。良かった。とりあえず小人ではない。そして見る限り人間で、女性だ。ドキッとした。小さな人影が女性の後に続いて駆けてきたから。すぐに人間の子どもだと確認出来た。二人は何か話しながら家に入って行った。


「どうする?」


 隆の問いかけにまた三人の相談がはじまる。


「小人じゃないし、大丈夫じゃないか? 子どももいたし」

「ここにいるのも怖いよー」


 私は後ろの森を見て言った。もう暗闇が迫っている。


「じゃあ、あんまり喋らず、やろう。さっきもそれで助かったんだし」


 わかったと隆と私が答え、その家へと向かう。


 *


 怖がらせない様に私が先頭に立つ。


 トントン


 ドアを叩いた。こういうのってないよなー。職員室のドアぐらいだなー。なんて考えていたらあっさりドアが開いた。


「どちら様?」


 女性の方が出て来た。中は狭いのですぐに見渡せる。子供は何かで遊んでいるらしくこちらに背を向けている。


「あのー、すみません。道に迷ってしまって」


 嘘じゃない。私達はここがどこだかわからないのだから。


「ああ、ミ国から逃げて来たんだね。ミ国はずいぶん長く王様がいないから、まあ、こっちに逃げてもこっちもすぐにミ国の様になるだろうから、逃げ損だね。それにしてもよく国境を越えれたね。ミ国から国境越えなんて。この森もあるしね。小人に狙われなかったのかい?」

「なんとか逃げ切りました。あ、あの小人はここには入ってこないんですか?」


 この類の質問に女性は怪訝な顔をする。


「あ、すぐそこで小人を見たもんですから」


 隆が付け加えると女性は笑いながら言った。


「ミ国は小人除けの魔法を使えないんだね。ほら、あそこ」


 と指差した先は先ほどの木の棒である。何か彫っていたさっきの木の棒。


「あれに呪文を彫っているんだよ、だから小人は森からは出られないんだよ」

「ああ」


 呪文だったのね。あれ。ていうか、魔法使いなんだやっぱり。小人の言っていた魔力があるわけだね。こんな農村の女性でも当たり前に魔法を使うのか。この世界は。


「その俺達行くとこなくて……」


 類が待ちきれなくて話を切り出した。


「ああ、そうだね。ミ国から逃げて来たんだものね。何もないけど一晩は泊めてあげるから、さあお入り」


 中に入り本当にこれだけ? って言う粗末な食事をした。申し訳ない。私達が食べてるからいつもの倍以上食べてるよね絶対。



 女性は名前をジュンと名乗った。子供はキョウ。

 食後また話がはじまる。ジュンさんはおしゃべりなようだ。

 キョウはまた背を向けている。静かな子供だ。


「王様が亡くなってからは、普通は龍国には逃げて来ないし、森もあるからね。はじめて見たよ。他国の人を。変わった服装だね。ミ国は荒れてる時代が長いから特別なのかねえ」

「さあ、俺たちもこれが当たり前なんで」


 類が話を合わせてとぼける。


「あの龍国の中心地はどの方角ですか?」


 ナイス! 隆! いい質問だよ。


「それじゃあ、これを見てて」


 ジュンさんは板を取り出した。黒板みたい。と思っていると何やら囁く。そうするとその黒板のような板に地図が浮かび出てきた。全ての国の地図だ。突然の魔術に思わず声が出そうになる。みんな必死に押さえた。ジュンさんはどう説明しようかと迷っているのか地図を見ていたので、助かった。私達の様子は怪しいだろう。

 地図がこの世界の全てとわかったのはそこに干支の文字が並んでいたからだ。形は八角形をしている方位磁石に似ている。それが綺麗に線で区切られている。十二等分に。結構狭くて、縦長な土地になる。こんなに国境を綺麗に区切るなんて、普通では考えられない。きっと、王様や側近が決められているんだ。国境も決められていたんだろう。


「これがこの世界。それじゃあ、龍国の中ね」


 また何か囁く。今度は縦長の龍国の地図が出る。

 文字はなんと書いてあるのかわかった。では呪文がわからないんだ。私達には魔力がないから。さっきから囁いてる言葉も全くなんと言っているかわからないし。

 地図をよくみると国境には森があったり山がある。

 区切られるように地形もそうなってるんだ。そして他国に行きにくい。森には小人がいるしね。

 ていうか、小人に捕まって魔力を取られるとどうなるんだろう。気になるけど聞けない。あまりに無知だとさすがに疑われる。今ここで放り出されるのは困る。いくらそんなに寒くなくても野宿なんて考えられない。

 ジュンさんはさらにアップにした地図に変えて説明してくれる。


「で、今いるのがここで、中心地、王都はここよ」


 王都って絶対王様がいるとこだよね。意外に近い。あ、縮尺わかんないからどうなんだろう。


「どれくらいで着きますか?」

「そうねえ。マ馬車だとすぐなんだけど……あなた達徒歩みたいですものね。徒歩だと一ヶ月ほどかしら。私も行ったことないから正確にはわからないけど」

「そうですか」


 隆が相槌うったけど、一ヶ月! 無理、無理だよ。事件になるよ。マ馬車って魔馬車よね。ないし。魔馬車も魔力もない! っていうか馬はいるの?

 まあ、ケンタウロスはあの時、自分達で王都に行けとは言ってなかったもんね。王都まで行けるだけ行ければいいか。

 類も隆も地図に見入っている。大雑把だし方角わかんないしそんなに見ても、と思っていると隆が尋ねた。


「方角は?」

「ああそうね。こちら向きその前の道をずっと行くと川があるんだけどその川がこれよ。次の街までその川が続いてるからわかりやすいわよ。その街までは一日で着くわよ。その街はここ」


 地図には小さな丸が記された。近っ! そして小さい。街だけど、王都に比べたら点じゃない。

 マジで遠いよ王都。ケンタウロス! 何を見ればいいわけ?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ