32.私たちの世界
周りの気持ち悪い色が青、群青色にかわっていく。そして、夜の色へと変わって行った。
そこは私達が歩いていた道。通学路。ファウルと出会った場所だった。
「やったー!」
「何時?」
「とにかく急いで帰ろう!」
「うん。家に!」
「そう。家に」
「家に帰ろう!」
私はかなりなダッシュだったけど二人には軽いダッシュだったんだろうな?
息切れした肩を揺らした私と違い二人は呼吸乱れてないし。いつもの習慣からか、夜だからか、近いのに私の家まで二人は付き合って送ってくれた。
「じゃあ、アリス。また明日」
「明日ね!」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
異世界へ行く前のように私達はいつものように解散した。ずっと同じ部屋で「おやすみ」と言って寝てたのに。不思議な気分。
私は家の中に入ろうと鍵をさした。途端にドアが開く。そこにはお父さんがいた。
「お、お父さん。」
ヤバイです。かなり遅いんじゃない。ファウル! 日が暮れたってくくり大雑把じゃない!
「アリス! 今何時だと思ってるんだ」
ああ、わかりません。マジでわかりません。
「ごめんなさい!」
私は頭を下げて謝りました。時間わかんないけど、心配してくれていたんだ。鍵の音で玄関を開けれるくらいに。待っていてくれてたんだ。
「まあ、いい。とにかく入りない。」
家に入って時計をチェックしたら九時を少しまわってるぐらいだった。お父さん今日は早かったんだ。いつも帰ってくるの十一時をまわることの方が多いのに。
この時間だと類も隆も大丈夫だな。と、人の心配してる場合じゃない。
「アリス、ご飯食べたのか?」
ああ、そういえば夕方時間だった、向こうで。お腹すいた。思い出してお腹も鳴る。
「そんなになるまで食べずにこんな時間まで何やってたんだ?」
異世界、魔法の国で王になるか検討してました。なんてね。お父さんはブツブツと言いながら、ご飯私の分と自分のを用意してる。
食べずに待っていてくれてたんだ。帰って来て私が家にいなかったから。
ぐー
レンジで温めたら、いい匂いが食卓に漂いだした。さらに食欲は増すけど、今のは私じゃない!
「プッ! お父さんも」
「お前のも鳴ってただろ?」
「だから、も、って言ったもん」
一瞬の間、二人で笑った。あれはいつだったんだろ、お父さんの笑顔を、見たの。
友達とカラオケに行ってて盛り上がり過ぎて時間忘れてた、と適当な嘘をついた。類と隆を出すと話がややこしくなりそうだから止めた。いくら幼馴染でも男の子だしね。
まあ、似たような話なんだし。友達と盛り上がり過ぎて時間を忘れたって。まあ、カラオケじゃなく異世界を旅してたんだけど。
あー気持ちいい。一日ぶりなんだけど、二週間以上ぶりな湯船。疲れ癒されます。あー、宿題してない。ゆっくりしてられないや。
「お先に! 宿題やって寝るね。おやすみなさい」
「ああ、アリス。おやすみ。なあ?」
「ん?」
「お前何かあったのか?」
ドキっ!
「な、なんで?」
「いや雰囲気変わったなあと。なんか丸くなったというか、昔のアリスに戻ったようだなと」
昔の私か……成長じゃないじゃん! 旅したら普通成長するんじゃないの?
「そうかな」
「うん。まあ、いいことだ。そうだ、週末また稽古するか?」
稽古とは剣道の稽古。しかも防具なしなんだよね。
「えっ? 嫌だよ。痛いし」
「いや、今日みたいな事もある。週末明けとけ!」
ええ! お父さんすっかり変なモードに入ってるし。これ以上なんか言われるの困るんで退散することにした。
「おやすみなさい」
そう言い放ってリビングを出て部屋に入る。私の部屋。なんか懐かしい。たった二週間なのに。
とっとと宿題を終えてベットに入る。うう、自分のベット最高! 一人で眠るの久しぶりだな。




