30.王宮
「アリス朝ごはんの時間なくなるぞ!!」
早起きやっぱり無理でした! ムクムク起き上がります。ベットの寝心地最高! 出たくないよ。
昨日の食堂、いやレストランへ。朝食は決まったメニューで問答無用で座ると出てきます。はあーやっぱり朝ごはんも美味しい!
部屋に行くともう洗濯が置いてありました。リッチな気分だねー。この宿屋で最低ラインだったのに、最高はどんななの?
*
さて、類いわく王宮見てここには帰って来れないというので自転車を押しながら見て回ることになります。
宿を出てしばらく歩く……。
「ねえ、類。自転車乗ってる人結構いるよ。乗って行かない?」
「そうだな」
「じゃあ乗って行こう」
人がいっぱいなんで乗りにくいです。が、歩いてる人が自転車に慣れてるのか避けてくれるんで思ってるより快調です。
類は時々止まって地図を見て確認してる。
確認してる類の後ろで地図見てもサッパリなので、地図は見ない私がふと上を見ると。
あ、ああ、ああああ!
「あ、あれ!」
上を指さしてます。
「ええ! そこ?」
「魔法かよ!」
類も隆も突っ込んでます。
私達のイメージじゃなかったです。はい。王宮。
そこからは興奮のあまり自転車を降りて、押しながら話します。
「あれ予想した?」
「いいや。和風とか洋風とかどっち的に考えてた」
「僕はあえて中華もありかって思ってた。料理もあるしね」
「私は洋風なお城だよ」
「でも、まさかな」
「いや、でも、ここ魔法の国だよ」
「だよな、そこを忘れてた」
うん。そうなの。日常になってたからね。
王宮、形どうこうではなく、浮いてました。ぽっかり空に。
そうだよね。魔馬車浮いてるもんね。荷車はガタガタいってるけど。浮かせてたもんねロイリの店の店主さん樽を。
王宮の形は洋風の城に一番近いかな。予想は当たってたんだけど。浮いてるとは考えもしなかった。まさかね。
とりあえず近くで見ようと話がまとまり、一応みんなの気持ちも落ち着いたので、自転車に乗って浮いている王宮の近くへゴー!
*
類の言うとおり、自転車に乗らなかったら一日中歩いても着かない距離だった。あの店員さんもそれくらい言ってよね。あ、あの宿屋だと魔馬車が当たり前だからか。まさかの徒歩なんだろうな。
すっかり空が赤くなってきている。まさか、空に浮いて見えてたのに昼ごはん食べて夕方になるまでここに来れないなんて思いもしなかった。すぐに着くものだと思っていたのにその道のりは遠かった。
あ、でも高層ビルとかマンションとか遮るものがないんだもんね。しかもすっごい上だし。今ここからだと見上げたら首痛い。
「下はやっぱり空いてるんだ」
「王宮の下にはさすがに住めないだろやっぱ」
「だよねー」
「どうやって上がるんだろ?」
「魔法だろ?」
「もしかして、街入ってすぐに見えてた?」
「かもなー。王都を見るって気を取られてたからな、俺たち」
「だね」
「アリス気持ち固まった?」
類が心配そうに聞いてきます。
「うん。固まった!」
という言葉とともに赤く染まった空が嫌な色に、そして王宮も周りの街もその色に塗り替えられていく。
「ケンタ、あ何だっけ?」
「ファウルだよ」
「ああ、それそれ」
「アリスその扱いは……」
「お決まりになりましたか?」
まるでメニューのオーダーを取りに来たかのように、目の前にケンタウロスが現れた。ケンタウロスに会うのは久しぶりだな!




