26.眠り姫
なんか景色変わらないなー。奥にみえるのが山なのか森って程度だなーただ国境の方にしかない。反対側には見える限り何にもない。
ヤバイ眠くなる。温存し過ぎだよ体力。
鼻歌でも歌いたいなー。ああ、音楽ずっと聞いてないな。
特に音楽好きってわけじゃないんだけどな。
暇すぎなんで前を行く類を見る。後ろからは隆が来る。一応気を使って挟んでくれてる。類……なんかいつもの類よりずっとしっかりしてる。この旅でずっと仕切っていてくれる。はじめは何だかんだとついて来る気なさそうだったのにな。
そうだはじめからだ。類がまとめたんだ話を。類って弟なのに意外だな。隆には妹がいるからしっかりしてるのは知ってた。面倒見もいいのも。ずっと一緒にいても見えないことがあるんだな。
「おっ! 一個目!」
うーん太陽? は? まだ大丈夫そうだ。あと一個頑張れ私、いや私達!
もう今何日経ったって考えるのは止めた。向こうを思って悩むから。でも、こうなったら王都まで行くって決めたんだ。悩んでしんどくなるより考えない方がいい。
それに何かちょっと思ったんだよね。ここは異世界なんだからって。魔法の国なんだからって。まあ、都合のいい話をね。
「着いたぞー!!」
夕暮れがくる前に二個目の宿屋街到着! 計算ではこうなるとはわかってるけど一歩間違えば……なんだっけ? 化け物に襲われるんだもんね。
やっぱり一日こぎ続けは、歩くよりは楽だけどしんどいのはしんどいね。
早くに着いたんでいい宿取れました。
ご飯食べてお風呂に洗濯といつものコース。部屋に戻りロープ張って洗濯干します。布団敷いて雑談タイム。
「わあ!」
いつもは外で見る夕焼け。あれ? そういやここに来て……。
「ねえ、雨降らないね」
「あ、そうだな。良かったじゃない? 雨降ったら旅できないよ」
「うん。そうなんだけど。雨降らなくていいのかなあ?」
「そういう時期なんじゃない? 川の水はいっぱいあったし」
「そっか。まあまだ……そうだよね」
そうだ。まだ一ヶ月いるとかじゃないんだからね。言いそうになって押さえ込んだ。
あー、足ダル。
「なんか自転車旅で疲れたー! もう寝るね」
「ああ、おやすみ」
「おやすみ」
***
「アリス! 先に寝てまだ起きないってお前眠り姫か?」
類が起こしてます。ごめんなさい。だって! 足だるくって寝れなかったんだもん。……たぶん。
「アリスー! わあ」
ああ、もう起きます! 隆の言葉と同時に起きました。ご飯って言わなくても起きるって、犬じゃない! いや犬はそんなことそなことしなくても起きるんだけどね。
「おはよう」
「おはよう」
二人は声を揃えて返事。
じゃあ、今日も行きます!
今日の行程は昨日より少ないはず! 七日のうちの四日分はもうこなしたんだからね。
あ! あああ!
「ねえ、類!」
「ん?」
と類は振り向かないで返事する。
「一週間って七日ってこと? 一か月って三十日?」
「あ!」
「ああ! 本当だ!」
これは後ろにいる隆です。
「単位が一緒とはかぎんねえ」
類が悔しそうです。でも本当にそうなんだよね。甘かったのか、一ヶ月はどれくらいなんだ。
と、程なく一個目の宿屋街を通過しました。ああ、これから幾つ通るんだろ。
「これって確認誰にも出来ないよな?」
「ああ。めっちゃ怪しいだろ?」
はい、小学生じゃあるまいし、いや、小学生でも知ってます。
「ああ! もう! 行くとこまで行くぞ! 一日の単位はわかったんだから!」
類がやけっぱちです。でも、同じ気持ちです。くそう! 異世界めどこまでも異世界なんだから!
たぶん異世界へのキレ方は間違ってるんだろうけどそんなこと構ってられないよ!
出口が見えたと思ったのにー!
と、そこへ街が見えてきた。
「見て! 街!」
予想を裏切る感じだけど、まだ一週間が六日ってわかっただけ。
なんかすっごいテンション低いです。
*
という訳で街で昼食食べて、進もうという話になりました。
まあね、街で必ず止まるって決まりじゃないもんね。
私達は進みます。また門番に財布チェックにドキッとしながら。
はあー嫌だー。出口が見えたからの張り切りだったのに!
自転車をひたすら走らせる毎日なんてー! いつまで? わかりません。ああ、嫌だー!
一個目の宿屋街を通過して、あ? 次の区間も聞いてないし。ああ、やる気がドンドン失せるよ。やばいね私。
私が行くって言ったのに!
二個目の宿屋街でストップです。
三人とも無口です。ああ、何にも会話浮かばないよ。余計な事言いそうだ。
ってことで今日は別の意味でさっさと就寝です。おやすみなさい。




