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2.旅立ち

「アリス! なんでわかるんだよ」

「だってわざわざここに王と側近をファウルは招きに来ないといけないのに、向こうでやれる人が出来たら困るじゃない。あ、誰でも出来るんだって思う。皆そう思って王になる」

「確かに。じゃあ、俺らが行かないとどうなるの?」


 類も聞き出した。


「次の王の印が出るまでそのままになります」

「どれくらい? その間、龍国はどうなるの?」


 いつの間にか話に入って隆も聞いている。


「印が出るまでの期間は五年から二十年ぐらいです。国が王を失った時点で王の統治が乱れていますので、統治されない国はそのまま荒れ果てて行きます」


 だろうね。不老不死なのに次の王が必要なんて、王が国を見放したか運に見放されるような事して不老不死じゃなくなって死ぬ。それしか考えられない。



「ね、印ってまさか」


 隆は自分の腕の袖をまくる。その仕草に気づいて私も類も慌ててまくりあげた。

 三人には同じアザが腕にあった。星形をした珍しいアザが三人とも同じ位置にあって、すごい偶然だねと。夏場などアザが見えていると言ったりもするが、小さな頃からあるんで、今さら取り立ててじっくり眺めた事なかったけど、こう見ると本当にそっくりだ。


「そう。それです。王と側近は同じ印を持っています。本来なら私が王と側近を見分けるのですが、長く一緒に居られた為にわかりません。申し訳ございません」


 あ、あ、またケンタウロスは膝から足を折って謝っちゃった。


「その珠は何? てか、受け取ると王になる、了承したってことになるの?」

「この宝玉は王は異世界人ですので、通訳をします。受け取ると龍の国を見ていただき、王になると決意されればその宝玉が光りを放ちます。王は光った宝玉を胸につけ即位する決まりとなっています。もちろん王も側近がたも決意がなければこちらの国へお返しします」


 あの珠思っていたより意外に地味な力だった。通訳するだけなの。


「決意のない王の統治よりも、王のいない玉座での無統治の方がいいよね。次の王までの期間が短くてすむから」

「ああ、そういう事。俺たちの都合じゃないくてか」



「ちょっと待ってて」


 私達三人は額を寄せ合った。


「どうする?」

「どうするもなにも受けないだろ?」

「でも国民が大変な目にあってるかも」

「えー信じる?」

「だってこれは、ここまで来たら、そうなるでしょ?」

「なるって決意しなかったら返してくれるっていってるし」

「通訳ないと……あ……」


 私は思い出し再度ケンタウロスに質問する。


「あの、通訳する珠は首にかけてないと通訳されないの?」

「近くにいれば大丈夫です。私が今話してるのも向こうの言葉です」


 あの珠範囲意外に広っ。



「ねえ。少しだけなら行ってみたら、あのケンタウ……じゃなくて、ファウルも引かなさそうだよ」

「もう、アリスは……あ、昔アリスの見た夢ってもしかして……」

「うん。あのケンタ……ファウルもいた」


 私は幼い頃に見た夢があった。二人に話すと、不思議な国のアリスだ! ってからかわれたけど、今でも覚えている……あの国が見られるのかな。


「あのさ……実は僕も見たことが……そのアリスが話してた夢」


 こんな時に突然の隆の告白。


「えーなんで類と一緒にからかったのよ」


 あの時は散々二人で人にことをからかったくせに。


「その後だったんだ。だから、言うタイミング逃して」


 隆、酷い!


「あっと、俺も」


 頭をポリポリかいてまさかの類の告白。


「嘘!?」

「いや、アリスのこと散々からかってたし、その後で見たからアリスの話の影響だろうと思って。ごめん」


 類が目の前で手を合わせる。類まで!……まあもう昔の事だからいいんだけど。あの夢、このアザ。三人一緒になんて、どう考えても繋がり過ぎる。



「龍の国へ来ていただけますか」


 ファウルは手をグイと差し出して球をこちらに向けてくる。あーもーファウルもやる気全開だよ。こっちは完全に三人とも混乱状態だし。


「ねえ、どうする?」

「あ、あの。危険だったり、嫌になったりすれば返してくれるんですよね?」


 隆は安全確認を怠らない。


「はい。もちろん」

「で、でも、あなたいないんでしょ? 他の人には姿を見せられないって」

「はい。ですが、宝玉が濁り出してきますので気づきますのですぐに駆けつけますので」



 また三人の会議に入る。


「……なんか怪しくない?」

「利用されてるんじゃ」

「いや、はじめから利用だよ。見も知らぬ国を統治してって」

「確かに。でも異世界人にやらすメリットは?」

「勝手な統治者を防ぐ」

「だよな」

「異世界人ってなんでわかる?」

「外観が違ってる……」

「なんかやばかったら? どうする? ケンタウロスも来なかったら」

「だよね。そこは確約ってできないでしょ?」



「あのお……」


 三人での会議の行方に不安を覚えたのか、ケンタウロスいやファウルは珠を右手? に持ち左手に今度は綺麗なブルーの珠がこれまた粗末な麻の紐につけられた物を出してきた。どこにしまっていたんだろう? ケンタウロスの胴体が気になる私。


「これも王家に伝わる宝玉でして、この宝玉でこちらの世界へと返って来れますので。それではどうでしょうか?」


 三人会議再び。


「ねえ。用意してきた感があるよね」

「だな」

「やっぱり皆そこが気になるからだよ」

「じゃあ、あれなら信じる?」

「いや、試したいな」

「確約だね。やっぱり」


 類が代表して言う。


「その、この変な世界からもそれで帰れますか?」

「もちろんです。どうぞ」


 類はケンタウロスからその珠を受け取った。


「あの、使い方は?」

「願ってください」


 急に目の前が赤くなった。

 すっかり夕焼けになった空だ。街も人も真っ赤に染まったいつもの景色が見える。


「凄っ!」


 類の一言。


「なあ、どうする?」


 目の前にファウルがいなくて話やすい。


「どうしようか。僕はこれなら行ってもいいけど」

「私も! 夢と一緒か見てみたい」

「ああ、あそこなら行ってもいいけど……本当にあそこかどうか」


 あそことは夢の中で見た国。けれど、類は慎重だ。

 と、またあの気持ち悪い空が戻ってきた。

 ファウルが目の前にいる。……さっきの私たちの会話、聞いてた?



 類は心を決めたようだ。ヨシっ! と静かに気合をいれる。


「じゃあ、二人ともいいな?」


 類の言葉に私達二人は頷く。

 類が手を差し出し、例の虹色の珠をファウルから受け取る。


「では、龍の国へお連れします。しっかりと、龍国を見ていただきたい。ではっ!」


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