19.急ぐ、急ぐ
夕方までいつもの調子で歩いてたけど……どこにも街っぽいの出てこないんですけど。
「ねえ、ヤバイ?」
もうそろそろだと、いつものではなく、皆が取ってたくらいより少し多めに草をとってた私達不安に襲われます。
「宿屋もないぞ!」
「急ごう!」
周りにも急いで通り過ぎた人がいたし、今も魔馬車や荷車に追い越されてます。
ハアハア……つ、着いた。
「門番!」
小さな声で二人に告げる。慌てて門を通り過ぎようとして、門番が見えた。あの服着てるから間違いない。
大急ぎで札を出す。緊張する。あの話聞いた後だし。
はあー。走って来たことより、門番通過に息を吐く。
門から離れ、少し歩きながら話す。
「ヤバかった。宿屋の距離感おかしくない?」
「気を抜いてたからじゃない」
「確かにもう街だって気持ちはあったな」
「でも、門番が一番緊張した」
「あの話聞いてたからな」
とりあえず一安心。
街が遠くからだと見えないはず。宿屋街の壁とか門と同じ作りなんで遠くからは全く見えないし。港の壁を想像していたから全く見えないことに焦った。
やっぱり本当に戦争ないんだな。と、再確認。壁や門は完全にビッグダース対策用に作られていた。
「あ、ヤバ! 宿屋行くぞ!!」
類の言葉に街の中を急ぎ足で歩きだす。ただ街っていっても港町とは比べ物にならない。町と言うよりかは宿屋街を大きくしただけだった。港町みたいなのを想像してたからちょっとガッカリ。
宿屋やっぱりいいのは残ってなかった。洗濯なし、まあシャワーあるだけましか。
というわけで宿屋も取ったのでこの草を売りに行くことになった。
……どこへ? 街は狭いのでウロウロしてたら、
「あ! あれ!」
「ロイリの店!」
「なあ、あれってこれの総称?」
類の疑問にさらに付け加える。
「そういうのを乾燥したもののとか?」
「港町のロイリさんの血縁とか?」
隆の疑問も十分にありえる。
「と、とりあえず店わかったし、いいじゃない」
「そうだな、これ持ってウロウロするの嫌がられたもんな」
私に類が同意してこの話はこれでお終い。だいたいわからないことばっかりで正解がわかんない事ばっかり。
というわけで、いつもより皆に敬遠されずにロイリの店に並んだ。
だいたいの計算は終わってるけど、ここの物価みたいんで類も隆も店の中が気になる様子だ。
ここは港町より並んでないんで、そんなに時間もかからず中に入れた。
いつもよりずーっと少ないからなー。
「1万がやっとだな」
類の計算にも隆も頷いてる。
やっぱり少ない。まあ、金額的に悪くはないけど、これから先が心配だからなー。いったいどこから都市に入るのか?
都市なら草ないよねやっぱり。
王都を一応目指してるから、都会に向かってるのは間違いない。収入源がなくなり、物価が上がるのが心配なんだよね。
「はい、次の方!」
あ、順番だ。秤に載せるのもすぐに終わる。私は港町の店主と似てるか確認中。……わかりません。
「では八千ペギーでは?」
「もっとでしょう?」
あ、そこは似てる! と類の頑張りよりもそこが気になる私。
「んー、では一万二千五百ペギーでは?」
「じゃあ、それで」
*
お金を受け取り店を出る。
「ねー! ふっかけてくる時っていっつもザックリした値段だよねー! あっちもこっちも」
「確かに! 計算しなくても良さそうだな」
「おい! ご飯はいいのか?」
類なんか怒ってる?
「食べるー。お腹すいたー!」
「アリスっていつも」
隆の笑い混じりの声。
「なによ! そんだけ動いてるに! 運動部にはわかりませんよーだ」
「ごめん。ごめん。悪く言ってないって。いつもと変わらないから、いいなあ、と思って」
隆あんまりフォローになってない。っていうか余計にグサリときたよ。私いつもこうだった?
類も笑ってる。うう、そうだったみたい。
二人に笑いをもたらした私はこれ以上笑われないようにお腹鳴らないでーと思いつついい匂いのする方へ。さあ、何料理だ?
*
結局は最初に戻ったように中華料理風の店へ。
遅くなったし最後は早足からのダッシュだったので無言で食べて終わりました。
なんだよ、量は完全に二人が多いのに! ご飯で笑われるの納得いきません。
「なーどうする? このまましばらくここにとどまる?」
歩き旅で疲れた足を引きずりながら宿屋へ向かってる途中に隆が聞いてきた。
きっと無言の食事中にいろいろ考えたんだろう。
しんどいので休憩したい! けど。
「王都まで一月だよ留まってる場合じゃないよ」
「そうだな。あ、そうだ。ただ、寝る時に着るもの買わない? これやっぱり寝づらいし、洗濯もいつもできないし」
「うん。それは言えてる!」
「じゃあ、ここではそれを買おう。あと次の街までの日数知りたいな。まだあの乾燥食品あるけど」
類の言葉に考え込む。うーん。聞いても怪しまれないかな? 街を出て聞いても意味ないしなー。
「とりあえず今日店開いてる?」
「無理だろう。真っ暗になってるし。とりあえず宿へもどろう」
皆それぞれに考えるってことでお腹もいっぱいになったのでシャワー浴びて布団敷いて寝ます。
暗闇……考える事なく眠りにつきました。




