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16.野宿は覚悟の上

 道は今までの道ではなかった。石で敷き詰められていた。荷馬車が通りやすいようにだろう。徒歩の私達は端っこを通るしかない。


「まだ草あるねー」

「まだ門を出てすぐだよ、アリス」


 隆につっこまれる。だって未知なる道だったんだもん。変化は石畳になったくらい。あとは川もない。水筒は大正解だ。宿で二本ともそれぞれ水を入れて来た。


「そうだけど、雰囲気違うもん」

「だよなー」


 歩きの人は少ないからほとんど合わない、たまに魔馬車や荷車が通り過ぎる。

 お陰で自由に話が出来る。


「あの服屋マジで怪しかったんだな」

「危なかったよー。あのおじいさんいなかったら捕まってたよ」

「だなー」

「私達にお金がないと踏んだんだろうね」

「最初から突き出すつもりだったのかも」

「制服も安かったしね」


 服屋とのやり取り思い出す。あー腹立ってきた! ケンタウロス! 何が見せたいのよ!


 *


「人間不信になりそう」

「魔法使い不信にしとけよ」


 類の言葉に吹き出す。


「聞いたことないし!」

「魔法使いなんて普通いないからな」


 冷静な隆の言葉。


「ここのはたくさん、ってか私達以外全員魔法使いだけどね!」

「おーし。歩くぞ!」


 気を取り直すかのように類が言う。だよね。結果、騙されなかったんだし、三人とも無事だったんだからいいよね。くよくよ恨んでも始まらない。

 どうせなら楽しもうこの世界を。私達は踏み出す新たなるこの国の道を。


 ***



 歩くのに石畳って向いてないかも。昨日より足痛いよ。もうすでに。


「そろそろ弁当食べよう。類!」


 遅れがちになってる私を見て類に隆が言ってくれた。はあー。助かった。

 石畳がきついんでその外も歩いたけど、結局違いわからずで、二人においてかれそうだったんだよね。


 *


 魔馬車や荷車通るんで道から離れた草むらでお弁当を広げる。もちろん背後は森じゃないよ。ただの草むら。森は怖いからね。すっかり森恐怖症です。


「いただきます」


 三人で食べはじめた。無言の時間。良かった二人も疲れてるみたい。足でまといかとずっと気にして歩いてたんだよね。


「類、急ぎ過ぎだよ。アリスの事も考えなきゃ」


 食べ終わった隆が類にいいます。


「いいよ。宿を気にしてるんでしょ?」


 野宿を嫌がった私を気にしてつい急ぎ足になってるんだ。類は。


「わかった。気をつけるよ。アリス、宿はあるかわかんないし、歩けなくなる方が困るしな」


 類にしては素直に言う事きいてるな。確かにあるかわかんないもんね。宿。

 でも門を出ると決めた時点でもう決意してたんだもん。野宿意外に寝れたしね。疲れてるから、大丈夫。寝れるよ。




 あと三日歩くんだ。水の補給も出来るかわかんない。大事に水飲んで立ち上がる。

 ちゃんとしたご飯はこれで終わり! あとは何だかわかんない乾燥したやつだ。食べ物ってわかるだけましだよね。




 ってことで、その後は話をしながら歩いた。どうせ長い道なんだ、急いで疲れるよりこの方がいい。まるで学校の帰り道のように三人で歩いている。服屋の愚痴からおじいさんの事ロイリがどうやって乾燥さすんだろうから、持ってる食品の乾燥も似てる! とかみんなが思ってた、この世界に来ての感想が溢れてくる。

 こうやってそうだよねー。とか言い合う人がいて良かった。

 やっぱりそこにもどってくる。一人の孤独がないのがいいよね。わけわかんない世界にいるのに何故か焦りも怖さもそんなにない。

 のんびりこの国見てケンタウロスに言ってやるんだ!……なんて?


 *


 夕日に空が染まり始めた。どこに野宿しようかと寝心地求めて歩いてたら、隆が道を指差し言った。


「荷車の人も歩いてる人もなんか急いでない?」

「あ、確かに」


 皆急ぎ足で通り過ぎてくし、荷車も乗ってる人も急いでるような雰囲気。

 と、荷車の人が少しスピード緩めて声をかけてきた。

 それまで誰にも声かけられなかったから、ビクッとなる。


「お嬢ちゃん達! 急いだ方がいいよ、この辺りはもうビッグダースがいるからね。この先に宿があるから急いで行くんだぞ!」


 いうだけ言って、またスピードあげて去って行った。




「なんかいい人だな」

「うん。タダで良くされたのはじめてじゃない?」


 隆と私の会話の間から類が飛び出る。


「のんびりするなよ。行くぞ! 何か化け物でるみたいだし。そうだ! アリスこれ持っとけ」


 それは隆も持ってるが、類の持っていた小刀だった。


「いいの?」

「お前のが戦闘能力高いからな。効率的だ」

「わかった」


 類から小刀を受け取り、取り出しやすい場所にしまう。隆もリュックから取り出してしまう場所移動してる。

 確かに私と隆は小さい頃から剣道を習っていた。隆は小中と。私は父に小学生の頃から剣道と護身術を中学半ばまで習っていた。父は女の子は自衛できないとと言って教えてくれた。……ああ、父は今どんな気持ちだろう。

 急ぎ足で急いでる二人について行きながら、父を思い出して後悔しだした。せめて何か言って、って何言っても同じか。異世界行ってきますも。学校休んで類と隆とで旅行行きますも通用しないよね。

 ハアハア息がきれて来た。さっきまでゆったり歩きだったから疲れはそんなにない。そろそろ暗くなる。何かわかんないのに襲われるなんて嫌だよ。護身術も剣道も役立つ相手かもわかんないのにー!

 恐怖で足も速くなる。




「あ、あれ!」


 門だ小さな門で壁に囲まれてる。港町の塀とは比べ物にならないほど低いし本当にただの壁って感じ。


「ヤバイ閉められる!」


 類の言葉に三人で駆け足になる。せっかくここまできたのにー!

 私達に気づいたようで門を締めていた人は私達を待っていてくれた。

 どうやら門番とは違うみたいで一般人みたい。通りすぎる時お礼を言って通り過ぎた。

 中に入って息を整える。と、さっき門を閉めてた人が声をかけて来る。


「どうだい? うちは一泊二食付き五百ペギーだよ!」


 どうやら、やっぱり門番ではなくて一般人みたいだ。壁も家の作りと同じだし、きっと歩きの人用に宿と壁と門を作ったんだろうな。門が道からそれてたのがいい証拠。門は反対側にもあり、そっちも閉じてる。

 どうしよう? あれ? 安すぎない?


「部屋は?」

「うちは雑魚寝だよ。ああ、お嬢ちゃんがいるからダメだね。急いだ方がいいよ宿が埋まっちゃうよ」


 慌てて何軒か周りに何とか部屋有りを確保した。


「どうやら洗濯も風呂もないけど、いいかアリス?」

「うん!」


 雑魚寝はさすがにハードル高い。野宿と雑魚寝なら野宿が勝つのはなぜだろう。他の人がいるのはやっぱり嫌だな。

 それにしてもあんなに田舎! しかも小人もいる森が近くにいるところでは平気だったのに街と街の間に化け物がいるなんて。森だけじゃないんだ怖いの。


 *


 宿屋でご飯を食べる。値段は値段だし、場所も場所だし、期待してなかったけど、意外にいける! ご飯が美味しいのが一番だね。ちなみに中華っぽい。朝ごはん中華……なんだか微妙だけど、まあいいか! 美味しければ!

 お風呂も洗濯も出来ないので暇つぶしに話をしてたが、灯りもないのと疲れで皆すぐ寝てしまった。

 また布団端っこにされる。なんか嫌がられてるみたい。



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