15.新たなる旅立ち
「アリス! 今日は早目に動くぞー。っても時計ないからわかんないけど」
引きずり出されるように布団から出る。歯磨きと顔洗い、洗濯物を畳み鞄に入れたら、はい完了。着替える必要がない。そのまま寝てたから。
良かったー。洗濯物乾いてて。室内に一晩って不安だったんだよねー。
ってなことで、早速、時間短縮の為に昨日の朝ごはんと同じ店に。周りの頼んでるのを見つつそれぞれ注文。
「じゃあ、昨日の要領で草を取ってすぐに売りに行くけど、洗濯石鹸だけは買ってたほうがいいな」
類が注文したものが来るまでの時間も惜しいのか相談が始まる。
「うん。あの店にあったかな?」
あの店とは石鹸を買ったお店。すっかりこの街にある店を見回った感じ。寝袋とかないかと探し回ったからね。そこまで大きな街だったわけじゃないし。
「あーどうだろう? あったかな?」
「木彫りの店は?」
私は類に聞く。二人で二度も行ったし。
「あ、そういや。また粉だと思ってた奴、昨日の洗濯場で見たのと同じだったかも!」
「ラッキーきっとそれだよ!」
探している時間も惜しい。見つかればすぐに門を出れる。
と、そこに料理の到着。
美味しい。ここだけじゃなくてこの先も美味しいのがいいなあ。なんて贅沢な願い。異世界来てる実感ないなー。ダメだ。もっと緊張感持たないと。
*
朝食が終わり、また門を出る。やっぱり札使う時は緊張する。が、あっさり三人とも通り過ぎる。
そして、またまた覚えているだけ取りに取る。
はあー、これ道づたいに取って歩くならいいんだけど、これ取るぞ! って意気込みでやると疲れる。まあ、量が多いしね。
三人とももう持てないってとこまで頑張って、門から街へ、そしてロイリの店へ。
まだ購入客しかいなくって私達を見た途端、店主は奥へ消えました。例のごとく樽をセット。周りのお客さんは私達を避けてます。次々に秤に乗せては樽の中へを続けます。今日の類と隆の見たては二百万ペギー。昨日よりも高い値の物を狙って取ったから。
店主のロイリさん? は計算中。
「では二百六十五万ペギーでどうでしょう?」
一度目のが効いたんだろう妥当な値段を出してくるみたい。まあ、私達もおおよそなんだけどね。
「じゃあそれで」
類にお金が渡される。
店を出てホッと一息。さあ、次は買い物!
類の記憶通り、すぐに洗剤が見つかった。
「あ、これ!」
「あった、あった!」
と、のんきに隆と私は洗剤指差してました。
洗剤購入終わり。
「意外に早く終わったな」
時間わかんないけど腹時計ではまだです、お昼。
隆は空を見て
「太陽が太陽で正午が真上ならまだだな」
「お弁当!」
「え?」
「何?」
私の言葉に疑問符を投げかける二人。
「持ち帰りできそうな店とかは?」
「あー、そうだな。当分非常食みたいなご飯だしな」
うう、そこなのよ。ここで食べる最後の食事なんだから!
ってことでお持ち帰り出来そうな店を探し、ようやく見つけた。今度は和食。できたものは本当にお弁当って感じだった。
*
「よし、これで、終わり! 行くぞ」
「ああ、次の街へ!」
「うん!」
皆気合の入れ直し。ここでなんとかやってけてご飯も寝るとこも確保でき、さらには収入源まであったんだもん。そんな場所を離れて未知なる所へ向かうのは気合がいる。
それぞれ何か考えてるのか無言で進むと、前方に!
「ねえ、あれ!」
門番と同じ服装の人達がお店を囲むように隠れようとしている。その店は!
あの怪しい服屋の店。
周りに人だかりが出来てるので類と隆に目配せしてそっとその群れに近づく。
「巳国の子供が三人来たんですって! 札を売るって言って役人に突き出すつもりだって、あそこの店主!」
マジで!
「巳国の者一人あたり百万ペギーだもんねー。三人もいたら……そりゃー突き出すかもねー」
類に袖を引っ張られその場を去る。出来るだけ目立たないように。
別ルートから街への門を目指す。
「危なかったね」
「アイツ俺たちには払えないって思ってたんだよ」
「服と靴処分した方がいいんじゃない?」
パジャマがなくなるがこの先野宿ならそんなの必要ない。それよりもそこからバレる方が怖い。
「だな、手配署みたいなので門で捕まるかもしれないしな」
類の同意に隆も頷き私達は建物の影に服を捨てた。
「時間がかかるほど危ないかも、急ごう」
類の言葉に目立たないように急ぎ足で門へと向かう。列はまだ短かった。
順番が来た。握る札に汗が移りそうで慌てて手のひらを拭く。
荷物を開けて、札を渡して息を詰める。
「はい。どうぞ次!」
フー。途中で現金が多すぎるのは危険じゃないかという話になり、財布を購入し多分妥当な金額を入れてあとは三等分してそれぞれの服に入れておいた。やっぱり役人に財布を見られた。財布のお金が多いのもワイロ要求だけならいいけど、怪しまれたら大変になる。
「財布正解だったな」
「ああ、チェックされたな」
「私もー」
類と隆も門を無事に通れた。良かったー。




