14.小人の森にキャンプはね
靴屋さんに入り、歩く事と値段を考えさっき買った服をイメージして靴選びです。難しいけど何とか見つけた。
「類これなんだけど」
はき心地試しながら靴を類に見せます。すかさず値段を見る類。
「まあ、いいよ」
一発で許可もらったよ。いい加減疲れて来てたから良かった。
類に急かされるように脱がされて、お会計へ類が持って行きました。また、気に入らない靴に履き替えます。
「アリス疲れた?」
隆が優しく聞いてくれる。
「うん。疲れた。お腹減ったし」
でも、まだキャンプ用品的なものは見つけられていないし……。
「先にご飯食べようって類に言おう。僕も疲れたし。ここご飯屋さん多いしね」
そう、昨日ここら辺をウロウロしてたのもご飯屋さん探しの時だったしね。いい匂いがただよっているから余計にお腹すく。
類が戻って来たのでご飯食べようと誘い、昨日見て回ったのでどの店にするか討論中。私はイタリアンっぽい店を押します! ここは一度は食べてみなくちゃ! ここを離れたら何食かわかんないんだし。
「アリス予算が……」
類の言葉に怯まない。
「量が多いって昨日見たもん!」
ってなわけでもう一度店へ。
「おお! 多いなっ!」
「でしょ」
ということでこの店に決定!
だんだん慣れてきたので食事中にも会話が出てくる。
「なあ、寝袋とかないけど、食べるものは確保した方がいいんじゃない? 水とかもさ」
隆が私見て言う。うう、どうせご飯、ご飯うるさいよ、私。
「そうだな。この先の道わからないもんな。魔馬車移動が当たり前ならこの先厳しい戦いになるしな」
ってな訳で昨日入った雑貨店風の店を目指します。隆が見かけたって言ったので、というわけで雑貨店風の店へ。あった! 水筒は一人、二つずつ。
さらに食べてる絵に続き嬉しそうな顔が書いてる売り場に。食べれるものか確認出来るからこの店いい! 書いてる人の目的は違うんだろうけど、何もかも違ってる私達には確認出来て便利。食べ物かの確認が出来ないのに口に出来ないよ。というわけで三日分、三人分の食料を買い込む。
見回すけれど、テントや寝袋のたぐいはない。あ! これ!
「ねえ。類、隆、これいるよね?」
洗濯干すための物も探してた私はロープをみつけた。これで、我慢するしかない。
「ん? ああ、洗濯物か」
「アリス服は無理だぞ!」
類の鋭いツッコミがある。
「わかってる。下着だけ! 最低それだけでも! お願いします」
「ああ、まあ、ロープなら他に使うこともあるだろうし」
と類、隆とロープの強度を見ている。店員さん見てるって、っていうか他に何に使うつもり?
ロープも買って店を出る。そんなに長いと重いし邪魔なんだけど、類も隆も何かの時のため用だろうな、小刀まで二人分買ってたし。これからの旅に備えているんだ。買った物を物色しつつ、まだまだ探すのかと思ったら、類は宿屋街を目指しているみたい。方向音痴の私にもだんだん道がわかってきた。
「類もう宿?」
「ああ、先に取っておこうと思って」
そうだった昨日はいっぱいだと断られてたもんね。
昨日、部屋に風呂があって安値の宿が何軒かあったのでそこを目指す。まだ早いこともあってすぐに取れた。良かった。ウロウロしなくて済む。外出することを告げてまた、街へと探しに行く。
……結局夕暮れまで探したけど見つからない。宿屋へと帰る。疲れ切った私達に宿屋のおかみさんらしき人が洗濯場はあちらですからねと教えてくれた。やった! 洗濯! 出来るのかな?
コインランドリー&お婆さんが川で洗濯的なものがあった。コインランドリーはお金を入れて多分魔力を使うんだろうけどお婆さんが川で洗濯方式はタダな上に完全な手作業だった。
「あれって魔力いるよな?」
コインランドリー的な機械には電気のコンセントなんてない。きっと魔力が必要なんだろう。
「そうみたいだな」
隆の言葉に頷く私。
「まあ、いいじゃないこの手作業でも道具があって」
「貧富の差の境目みたいな宿なんだろうな」
そうだね。魔力あっても洗濯にお金をさけないんだ。
「じゃあ、風呂上がり来ようよ!」
下着が洗える。しかもすっごい方式、レタスの水切りの大きいバージョンの脱水まである。洗えるけど、脱水が心配だったんだよね。乾かないとそのあと困る。これで一安心。
という訳で部屋へ行き、それぞれシャワーを浴びて新しい服に着替えることになった。本当はパジャマ変わりにしたい服だけど洗える時に洗いたいし、動きやすい服にしたから一晩なら大丈夫。
今日は歯ブラシもして、全身綺麗になってさらに新しい下着に服だ。幸せ。一つ一つ今までの当たり前が幸せとしてしみてくる。
これは魔力を持たないから得れたことなんだ。皆は魔力がある代わりに必死にやってほんの少しのお金しか持つこと出来ないんだ。
*
今日は先に隆がシャワーに入る。交代にしてるのかな?
「キャンプ用品ないな」
ボソッと類が言う。
「うん。やっぱりキャンプしないからかな?」
「ああ、森な」
小人の森にキャンプだと完璧なサバイバルだ。するわけないよね。命懸け過ぎる。
「でもさあ、あの門から次の街まで三日じゃない? 門で見た人皆が魔馬車持ってなかったじゃない?」
「そうだな荷車っぽい感じの人のが多かったよな」
「昨日門に入る時には荷車のひと引いてはいなかったし乗ってたけど、たいしたスピードじゃなかったよね?」
「ああ、魔馬車よりかははるかに遅かったな」
類に続きを言おうとしたら隆が出てきた。相変わらず早っ!
「何?」
「キャンプ用品ないな。って事と荷車の話。俺入るな」
類がシャワー室へと消える。
「荷車?」
「魔馬車より遅いから、もしかしたらだけど途中に宿があるかもって思って、街への門にも荷車の人がいっぱいいたから」
「商売しにきてるんだね。ここは港町だから品物が集まるから」
「そうだね。あのおじさんの店みたいに珍しい物も」
隆はすっかり雰囲気が変わってるさっきまでの服はどう見ても貧乏人丸出しだったけど、今はお坊ちゃんほどではないけど、中間階級っぽい。まあ、もちろんわざとそうしたんだけど。あまりに裕福だとまた騙されることになりかねないし。
「アリス?」
「ああ、うん。でね、荷車は歩くのより早くけど、歩きで背中に荷物背負ってる人もいたし、キャンプ用品諦めて明日朝から出発した方がいいかと思って」
「そうだなー」
隆が考え込むと類も出てきた。二人とも早っ!
ってことで私の案を類にも話したら、類もいろいろ考えてたみたいですぐに話をはじめた。
「アリスの案も最もなんだけど、俺たちの唯一の収入源がなくなることも考えられる」
「あ!」
「ああ、そうだね。都会に行くんだし」
そうかこの先の道で草生えてる保証ないしね。都会になればなくなって行く可能性高いし。
「なので、朝は草をとってあの店で売る。で、ご飯も食べれるか保証ないし昼飯食ってから出発! どうだ?」
「そうだね。最後に稼げるだけ稼ごう」
「賛成。どうせ宿屋あるかわかんないんだもんね」
「じゃあ、洗濯に行きますか?」
というわけで明日の予定も決まったし、洗濯場に来てます。さっきは誰もいなかったのに結構人がいる。
あ! あの洗濯機みたいなの使ってる。あれは完全な魔法だね。手作業での洗い方を参考になると見ていて、やっぱり洗濯の手作業ってこうなるんだな。脱水も想像通りだったし。あ、洗濯洗剤ないや。
「類、洗濯洗剤……」
もう気付いていたらしくてあの全身シャンプーの粉を見せて来た。ナイス! 類。
今日も備え付けの石鹸があったんで買い損かと思ってたよ。こんなところで役に立つとはね。
私達の番が来て類と隆は仲良く二人で私は一人で洗った。いいよどうせ私だけ女だよ。
なーんてすねてる間に洗い終わった。何せ少ないからね。
部屋に戻りどう考えてもこれ用だろうという引っ掛けを見つけそこにロープをはり洗濯物を干して行く。……下着は私の寝る方の端っこに干す。
……何よ! ここ以外ないでしょ? 二人とも無口に布団敷いていく。もう! 私も敷くと、今日は無言で隆が間をあける。私はもういい加減三人で寝るのに慣れて来たんだけどな。
幼馴染とはいえ、こんなに長く三人だけなんてはじめてだった。
まあ、いいけどね。
「お休みー」
お! 昨日よりいい布団。昨日より安いし洗濯場あるし。だから早い時間に満員だったんだね。
「お休み」
「お休みー」
二人も遅れて言ってくる。だいたい部屋の灯りが魔法だから私達にはつけられない、日がくれっちゃったら暗闇にいるしかない。だんだんこれにも慣れてくる。
今日も疲れた。




