表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/34

12.お札

 店に入った。ドキドキしながら待っているとすぐに店主が出てきた。


「確認はされましたか?」

「ああ、もらうよ。それとこれ」


 類の声に私と隆も制服と靴を差し出す。


「おお! 三組も! 待ってて下さい。今持って来ますんで」


 店主のテンションはマックスに上がってる。よっぽど変わった物が好きらしい。奥に入って行く足取りが違う。


「大丈夫かな?」

「ん」


 私は思わず不安を口にする。隆は答えられないんだろうただ一言そう答えた。

 私達の緊張をよそにすぐに店主は戻ってきた。若干息切れしている。

 違法な札だから。やっぱり隠してるんだろうな。どこまで取りに行ったんだろう。


「お待たせしました」


 私達の前に札が並べられる。


「こちらが女性でこちらの二つは男性用です」


 私と類は札を手に取りよーく見る。うん。一緒だ。この焼印、変わってるな。きっと魔法でつけてるんだろう。角度の加減で七色に光って見える。

 他は何の変哲もないただの札だし。この焼印をつけるのがきっと役人しか出来ないのかも。じゃなきゃ、ここの店主も服屋も役人がって言わないだろうし。


「では、よろしいかな?」


 店主は目を輝かせて手を差し出す。


「あのー。服の数も増えたし差し引き二百九十六万八千ペギーを二百九十六万にまけてくれない?」


 ギョッと類を見る。類大胆だよ!

 でも店主はニコニコしてる。


「では、それで」


 ええ! いいの? 声には出さないけど。まあ、どっちも価値が決まってないもんだしね。服も札も。

 類は支払い、私達は制服と靴を店主に渡した。うう、着てたのそのまま渡すの嫌だなー。

 店主はご機嫌だ。


「おお。巳国からこれほどの大金か何かを持ってこられるとは」


 いや、値段言ってたじゃない。持ってると思ってなかった? もしかしてもっと値切れた?


「あ、ああ。持ってきた物を売ったんだ。いろいろ」


 そう持って来た物は取られちゃったから、門の外の水菊をね。隆のフォローに心の中でチャチャを入れる。

 ああ、少し余裕出てきた。


「そうですか。この店に来てくださればもっと高値で売れたでしょうに」


 店主悔しそう。大丈夫、ジュンさんが売りに来るよ。多分。それに、私達が売った店はロイリの店だし。


「ああ、そうだったろうね。残念。じゃあ、僕らはこれで」


 隆は上機嫌な店主の話を終わらせた。そう私達にはすることがある。



 店を出た。


「ふうー」

「やったのかな?」

「まだ門で確かめないと」


 だよね。まだ通用するか確信がない。なにせ魔法使いなんだ。どういう仕組みかわからない。



 でも!


「とりあえずご飯! ホッとしたらお腹すいた!」


 もう店主の話あたりで限界だったんだよね。


「じゃあ、行くか! 飯食いに!」


 不安もあるけど札が手に入り一安心。ある程度はだけど。昨日の服屋はやっぱり怪しいし。




 また何軒か回ったあとに手頃な店に入る。今日は和食っぽい。港町だから? 何料理まであるんだろう?

 とりあえず私達はバレては困るから黙々とご飯を食べる。それにしても二人ともよく食べるなあ。昨日、よくあれだけ我慢できたよ。



 食事が終わり店を出る。ご飯美味しくて良かった。口に合わないと最悪だよ。

 歩きながら小声で話す。


「王都に行く門並んでた人見てたら服装が違うんだ」


 そう服装が違う。私達のとは。貧富の差がそこまで出てる。


「怪しまれたら困るから買い直そう。値も張るかもしれないだろうから、昨日みたいに草を取りに行こう。ちょうど門で札も試せるだろうし」

「そうだな。じゃあ、ロイリの店に行って何が高いか見てこよう。水菊は昨日あんなに持ってったから値下がりしてるかもしれないし、売る時も参考にもなるだろうし」


 隆の提案に賛成してロイリの店に入った。門が閉まる直前に売る人は並ぶんだろう。今日は行列はなかった。けれど、繁盛していてお客さんはたくさんいたんで私達だとバレずに見て回れた。乾燥の仕方が違うのか原形を留めてくれているんでこれなら間違わずにとって来れそう。一種類だと不安なので何種類か高いのをチェックして私達は店を出る。



 門の前まで来た。


「じゃあ、行くか!」


 札を握りしめて類が言う。やっぱり門を出る時には例え田舎方面の門でも門番がチェックしていた。荷物チェックはなかったけど。

 私も隆も札を出し三人で門番の方へ。

 あっさり通れた! 怪しまれないようにしばらく歩いて息を吐く。

 使えた! 門番も田舎方面だからかチェックも甘く、札には軽くしか目を通してないけど。


「通れたな」


 類のため息混じりの言葉。


「ああ」


 隆もホッとした表情。


「さあて、取りますか?」


 あえて軽い口調で言う。

 あのおじいさんインチキじゃなくて良かったと思いながら。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ