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11.あれって欲しいの?

 昨日ご飯の店を探してる時に見つけた質屋? っぽい店だ。

 相場がわからないし取り敢えず値段だけでも聞いておこうということにんたった。鞄があるからそんなに急いで売らなくてもとか思えてきた。元の世界に戻った時に不便だし。だいたい着替えもないままだし。まあ、ここから先制服着るのは危険になってくるから着替えることはないんだろうけどね。

 それでも何屋があるとか、値段もチェックしつつ、何だかかんだといつものように話しながらその店に向かう。

 まるで場所が変わってないみたいに。異世界にいるのに、いつもの三人みたい。

 王か。ケンタウロスの言葉を思い出す。類なのかな? 隆なのかな? どちらも考えられる。二人はいいコンビだ。類を隆が上手くサポートしてる。逆もある。ってか私が側近って。ついでか何か? そこが一番しっくりこない。



「お! ここか?」


 類の声で店を見る。


「ねえ。本当に売る?」

「ああ、どうする?」

「値段聞いてちょっと考えよう」

「そうだな。別にセッパ詰まってないしな」

「それにここ質屋かどうかも……」


 といわけで、まずは質屋なのか様子を見に中に入る。中にはなんだこれって物から見慣れた物に似てるものまであった。

 店主は私達の気配に気づいたのか奥から出てきた。

 どうしよう? 変わった物を売ってるだけなのかな? 変わってるのかも判断出来ない。やっぱりあの服屋でいいんじゃと思っていたら店主が声をかけてきた。


「何か売りに来たのかね?」


 おお! その言葉! 良かった売る店だ。


「あ、あのこれ」


 類が鞄から制服を取り出した。


「なんと! これは!」


 店主は身を乗り出した。


「いくらぐらいです?」


 類は一応靴も見せつつ聞いてみる。


「そうですなー。これですと一万ペギーですな」

「え! この靴と服で?」

「はい」


 余程珍しいのか、まあ珍しいよね制服、無愛想だった店主がニコニコと答える。

 ちなみにと思いつつ私のも見せる。


「ほーこちらは一万二千ペギーですな」


 ええ! 金額違いすぎ! あの服屋やっぱり怪しい。

 でも、速攻決めるのはな……私達がためらっていると、店主が声をかけて来た。


「他国のお方でしょう。それを持ってここいらをウロウロなさるのは危険ですよ。なにせ王のいない世の中、皆の心が寒くなってますからすっかり冷たくなってしまいましたからね。無知な他国のお方はカモに見えるでしょうな。どうでしょう、それを売っていただいたお礼にと言っては何ですが、この国のお札を格安でお売りしましょう。どうやら観光でも商売でもないようですし……お札必要ではないのですか」


 ああ、バレた。バレるよね。この年で外国にしかも王のいない国に観光なんて、しかも服を売りに来た。怪しいよね。

 どうしようと類と隆とお互いの顔を見る。そんな私達にさらに声をかける。


「そうですな。巳国ならば国に帰されますしな。巳国以外にこの国に来たい者はおりませんしな」


 あれ? 巳国の人、ウマには行かないのかな?

 順番、隣だよね。巳の次、ウマ。


「巳国の人がよく来るんですか?」


 思わず聞いてしまった。


「いや、わしは初めてですよ。だが、ゴ国は他国との貿易をしなくなっていますので。龍国に行きたくなくともゴ国には船は着きませんからね。ゴ国は船を持っていないと噂になってますからね。とてもとても入れないでしょう」


 ゴ国って午国か。ウマね。そうか、だから皆、巳国だって決めてかかってるんだ。


「安くっていくら?」


 類が思い切って札の値段を聞く。聞かないと話進まないもんね。


「百万ペギーでどうでしょう?」


 安い! それならすぐに三人分払ってもまだ蓄えが残ってる!


「いつ手に入りますか?」

「今ありますよ」


 と店主は奥に行く。

 途端に私達は相談を始める。


「どうする?」

「すぐには買えないよね?」

「本物か確認しないとな。俺ら本物知らないからな」

「じゃあ、見てから本物を確認するって事で」

「そうだな」


 と相談している間に店主は奥から出てきた。手には想像してた札、そのものがある。もっと違うの予想してたんだけど……本当に魔法の国ですか、ココ?

 三枚、札を並べて店主はニコニコ私達を見る。

 類は実際手にとって、表裏をしきりに見ている。覚えているんだろう私も手に持ってできるだけ記憶する。幸い魔法はなく、わかる言葉ばかりなので助かった。

 そんな私達の様子を見て店主は言った。


「やはり本物か、まあ、ニセモノなんですがね、確かめないと納得できませんよね? 街へと続く門は必ず札を確認してますから、門のそばで見てもいいでしょう。札は普通、他人には見せませんからね、気軽には」


 やっぱりその手しか無いか。三人で話していた、あの服屋が本物を売るか確かめる為に、本物の札を見る方法を。


「そのニセモノはどうやって? なんで持ってるんだ?」


 類が札の出どころを店主に聞く。


「王が亡くなってから田舎の者はこの街から先には行けなくなったんです。なので、暮らしは苦しくなっても移動して新たな職にはつけなくなった。それで札を、王都在住者か又は王都近くの街の在住者の札が売れるようになったんです。娘婿が役人でしてな、生活の足しにと作っていたんですよ」

「こんなこと、いいの?」

「もちろんバレればクビどころではないですが、役人も給料を上司に持っていかれることも多くなりましてな、生活の為です。まあ、ワイロも横行してますんでな、今さらそんな取り締まりもわざわざしないでしょう」

「ワイロ……」


 役人の腐敗はやっぱりあるんだ。王って大事なんだ。

 札をよく見る。表も裏も。見ると名前っぽいのの下に王都の文字がある。続きは住所なんだろうけど、王都の者か近くの街の者しか王都に行けないんだ。裏? には焼印が押してあるこの国のマークかな? 龍の図柄だし。舟の帆にあったのと同じような龍をマークの模様をしている。

 類も手にとってまだ見ている。


「さあ、お客様。札を見てきてお決め下さい」


 *


 私達は店を出る。

 昨日怪しい服屋はやっぱり怪しいかったんだ。値段違い過ぎ。


「なあ、服屋よりいい話だし確認してこよう。ただ、こっちの店に異変があるか確かめないと役人に突き出されたら嫌だしな」


 うん。確かにここに来て人を信じてたらヤバイのは良く分かった。


「じゃあ、僕が残るよ」


 隆が言う。隆が札をあんまり見てなかったのは、はじめから店の方を見張る気だったんだ。


「じゃあ、アリスと俺は門へ行ってくる」

「ああ、なるべく自然に見て来いよ」

「あ、これ」


 ブルーの方の宝玉を類は隆の首にかける。


「危なくなったら使え」

「ああ」


 そう、ここは異世界なんだ。しかも皆に巳国から来たと思われている。役人に見つかって巳国なんかに送られたら大変だ。まだ一人で元の世界に戻った方がいい。


「じゃあ、頑張れよ。見つからないないように」

「ああ、お前らも」

「確認したらすぐ帰って来るからね!」


 私も隆に声をかけて、その場を後にする。異世界で離れてしまうのは心配だった。


 *


 門に着いて私達は札を見る困難さにぶち当たった。

 門から出て行く人の列には加われないし、札を確認するのは門のそば。どうやって怪しまれずに門のそばで札を持ってる人に近づいて札を確認すればいいのよ!

 あんまりその場にウロウロしてるのも目立ってくるし……あ!これだ! と類を見ると、類も目を輝かせて私を見てる。



 そう、門の列には売り子みたいに商品を売ってる人がいる。これだ。あの売り子になればいい! ちょうど着ている物も似てるし。何を売ってるか確認して類と再び街へと行く。


「あれってここの名産品?」

「だろうね。お店で売ってるかな?」

「あ!? そういや昨日見たような! アリスこっち!」

 類に手を引かれて、昨日来たらしい店まで来た。私、実は方向音痴なんだよね。類は知っているから、急ぐし人でいっぱいだから、手を引いてくれた。

 店の中に入った。本当だ! あった。なんかわかんない木彫りっぽい見たことない動物に、目だけ宝石なのかキラキラ光る珠が入ってた。値段は思ったより安く三百ペギー。キラキラ光る珠は宝石じゃないね。それを四個買った。まるで、それ用かと会計する場所にカゴ、ちょうどそれが載せれるくらいのカゴが置いてあった。

 類はそのカゴも二つ買って、またまた手を引いてくれた。門へと急いで行く。類も隆が心配なんだ。


 *


 私達はカゴに木彫りを二個ずつ載せて、離れすぎないように門へと近づいて行く。


「四百ペギーだよー!」


 売れては困るので一番の高値で売り歩く。案の定売れない。っていうか、これ売れるの?

 門に近づいた時、類が勝負に出た。門へと近づいて皆札を出してるけど、札を握りしめてて見えない。


「二百ペギー、二百ペギーだよー!」


 これ売れるの? って感じなんだけど買い値よりずっと下だ。売れるのかな? 私も徐々に値段を下げて行く。私も確認したいし。

 あ、類が買い手を見つけたようで交渉している。類からは札がよく見える!


「お嬢ちゃん! お嬢ちゃん!」


 あ、私だ。類ばかり見てる場合じゃない。


「は、はい」


 こんなことしたことないから緊張する。おまけに目的は札を見ること! 気を入れ直す。えーっとどこまで値段下げたっけ?


「前の兄ちゃんが二百だよ、もっと安くならないかなー?」


 ある意味ほっとする。いくらにしてたか思い出せなかったから。


「じゃあ、百八十ペギーで」

「百五十は無理かな?」

「じゃあ、百七十ペギーで、どうでしょう?」

「よし!」


 おじさんは購入を決めたようだ。これ、欲しいんだ……。そこに納得いかないけれど、交渉中にもお金を出す時にも札がよく見える。表も裏も、名前っぽいのの下に王都って文字と続きが見える。裏? にはこの国のマークなんだろう焼印と通行証という文字がある。

 良かった写真とかなくて。ま、まさか魔法でわかる仕組みだとか……。

 門のすぐそばまで行って確認する、どういう検査があるのか、気になったから。類も気づいたらしくやってきた。

 門番にさえぎられて遠目にしか見えないけど。大丈夫、ただ札を見てるだけだ! あ、でも荷物検査がある。みんな鞄の中を見られている。

 やっぱり制服手放すしか無いか。三人ともが持っている。珍しいもの買ったにしては無理があるかもしれない。

 類も私も最安値で売ったからだろう、残りの木彫りもあっという間に売れた。あんなの欲しいんだ。まあ三百で買ったのを二百以下で売ったんだから他のよりも絶対安い。安いんだろうけど……あれ欲しいの?



 教科書やラケットも高く売れるのかも。この国の価値観がわかんない。制服もすごい値段だしね。


 *


 マイナスだったけど収穫はあった。リスク回避がこれだけで出来て良かった。

 類と私は急いで隆の元に戻る。


「隆!」


 小さい声で物陰からあの店を見張れる場所にいる隆に声をかけた。隆は振り返った。


「どうだった?」

「店には時々客が来てたけど、他は何も動きなかったよ。そっちはどうだった?」

「近くまで寄って確認したけど同じだったよ。さっき見せてもらった札と」


 隆の問いに私が答える。それに類が付け足した。


「門番、札はパッと見て終わりなんだけど、荷物の確認は必ずしてたんだよ」

「じゃあ、制服は手放した方がいいね。どうせあのおじいさんこの制服目当てっぽいしね。制服売らないなら札の金額跳ね上げるか売らないって事もあるしね」


 隆のセリフで決まった。


「じゃあ、行きますか?」


 類の問いかけに私達は頷く。どうか上手くいきますように。


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