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1.出会い

 今日もいつものように三人で帰る。学校からの帰り道。いつもの事。いつもの風景なんだけど、これで何人の女子を敵にまわしているんだろう。

 私の両サイドにいるのは柏木 隆と坂崎 類。二人とは家がご近所さんで気づけば小さい頃から一緒にいる。



 隆と類はよく似ている。全体的な雰囲気とかがだ。よく見ればいろんなところが違うんだけどね。

 隆は丸顔で類は面長、目は隆はクリッとしてるが類は切れ長。性格も隆は温厚だけど、類は少しキツイところがある。なのになんだか二人は似ている。幼馴染みでずっと一緒にいるからだろうか。そして、二人ともモテる。

 たまにどちらかが告白されているのを見かける事がある。内心ドキドキしながら見ている私。今までのこの私達三人の関係を変えるのが嫌で。私は二人とこうしているのが心地いいから。


 学校から帰ると三人で必ずそのまま私の家に寄る。はじめは家を交代してたのに、何時の間にかこうなっていた。

「何で私の部屋ばっかりなのよ!?」

 と言えば、

「アリスの家は誰もいないから」

 とか

「俺の部屋は汚い」

 とか

 二人は勝手な理由ばかり並べる!


 まあ、私の部屋でも別にいいんだけど。

 私の部屋で宿題してくだらない話をしてなんとなくして時間が過ぎていく。これが、私の、私達の毎日の習慣になっている。

 今日もなんだかんだと話をしている。

 二人が帰りため息をつく私。友達にどっちが好きなのと聞かれても、どっちも好きなタイプじゃないなんてトボけてるけど、本当はタイプなんだよね。どっちがじゃない。どっちも。

 欲張りだけど、選べない。だから、こうやって三人でいるのが好きなんだよね。




 翌朝、いつものように二人は私を迎えに来た。朝の苦手な私を二人で迎えに来るのが毎日の習慣になっている。

 高校に着き類は二年三組へ私と隆は二年一組へと別れた。


 放課後になり隆は陸上部、類はテニス部、私は美術部へ。

 いつも、二人が私がいる美術部の部室に迎えに来ることになっている。美術部は完全フリーで最後の人が鍵をかけることになっているので、いつまでも待てるから、何時の間にか私は二人を待ち、ここに集合となっていた。


「よう、やっと色か?」


 振り返ると隆がいる。


「うん。やっと納得できる下絵が描けたから」

「そんなに時間かけて大丈夫なのか?」


 これは類だ。


「いいのよっ! 納得出来ないものを描くのは嫌だから。さあ、帰ろう」


 私は道具をしまい、片付けをする。一つの絵に時間をかけているけれど、美術部員の誰よりもここにいる時間が長い私には時間は有り余っているのだから。

 私が最後なので職員室に鍵を持って行く。門のところで二人と待ち合わせている。


「お待たせ!」


 何か話し込んでいた二人は振り返り手をあげる。いつもの帰り道だ。




 帰り道、空を見るとなんだかいつもの空とは違って気持ち悪い色をしてる。雲が多くてその雲に夕焼けの光と暗くなった空の色が混ざり合って、いつもは綺麗な空がやけにどんよりした感じだ。雲が多いからだろうか。なんて二人の話を聞きながら空を仰ぎ見ていた。


「どしたあ? アリス」

「空があ」


 私の言葉に両サイドの二人も空を見る。


「何か不気味だな」

「だな」


 隆の言葉に類も頷く。

 と前を見て……


「きゃあ!」


 思わず悲鳴を上げてしまった。だって、だって、目の前に……


「ケンタウロス?」


 類の声。そうまさに、それ! それがこっち見て目の前にいる。あれ? 周りが……


「ここどこ?」


 私の問いに二人も周りを見る。あの気持ち悪い空が周りを覆い尽くしていた。


「道がなくなった!」


 隆も驚いて自分の立っている地面を見ている。類はケンタウロスを見ている。と、


「リュウのオウよ。これを受け取り、リュウのオウになられるかお決めください」



「しゃべったー!」


 思わず正面から大声で言っちゃた。ケンタウロスは何時の間にか麻かなにかの粗末な紐に色んな色に光る珠がついているものを差し出している。こちらの色は虹色に光り輝いていて綺麗だ。


「あの、リュウって名前のこと? 隆の事で?」


 ああ、思わずケンタウロスに話しかけちゃった。だって、さっきから私に差し出されているんだもん。ケンタウロスが珠を。

 私は隆を指差し聞いた。


「いえ、リュウとはこちらの世界の干支の中のタツのこと。龍です。龍の国のオウになっていただきたい」

「オウっていうのは王様? そこを、龍の国を統治するってこと?」

「はい。さあ、これを」


 と言ってケンタウロスは、また、私に珠を差し出す。いや、嫌だし。ていうか二人とも黙りすぎ!



「いや、あの、その私に?」

「それが申し訳ございません」


 そう言ってケンタウロスは頭を垂れた。ああ、ケンタウロス頭下げ過ぎ。前足を膝から折るからすごい低姿勢なんだけど。


「王と側近がこのように長い時間側にいるとは……どなたが王で、どなたが側近かわからないのです」

「えっと、一人が王様で一人が側近で一人は関係ないってこと?」


 ついに類も話に入ってきた。


「いえ、側近はお二人です。ここに関係のないものは入れません。私の姿を見てもいいのは王と側近だけですので」


 ……三人で顔を見合わせる。



「おい、隆もこの……こいつが見えて聞こえてんだろ」


 さっきから反応してないのが気になったみたいで、類は隆に小声で私の後ろから話かける。


「あ、ああ」


 隆は普通に返事をかえす。


「ねえ、その龍の国ってどこにあるの?」


 何の話なんだろう。何が何だかさっぱりわからない。聞いてみるしかない。なんかこのケンタウロスって無視出来ないんだよね。こんな場所だし。


「ここではない場所、世界に十二の国があります。こちらの世界ではちょうど干支になっている十二支がそれぞれの国名です。その中の龍の国……」

「王になったらどうなるの? 側近は?」


 ケンタウロスの言葉を遮り私は矢継ぎ早に質問する。


「王には国の統治を側近にはその手伝いを。王、側近ともに不老不死になりますが……」

「統治を失敗したら死ぬ?」

「はい」


  私の推測はケンタウロスにすぐに肯定される。


「おいアリス! 大丈夫かよ」


 類が見兼ねて声をかけてくる。

 一人なら幻想とかいろいろ言えるけど、三人ともが今のこの光景を見ている。ケンタウロスは危害を加えるつもりもないが戻す気もないみたいだし、このまま知らん顔しても話は終わらないだろう。


「じゃあ、なんでわざわざここに王や側近がいるの? 自分の国で世界で調達したらいいじゃない」

「王と側近はこちらの世界から私達ファウルによって招かれるのです。そういう決まりなのです。でなければ……」

「そちらの世界の国の国民が統治をすると国が乱れる?」

「は、はい」


 私の推測は当たって行く。



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