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争いと安心



悲しい。哀しい。

そんな感情ばかりが私の体を駆け巡る。

争い事はよくない。

昔からずっと思っていた。

なのに私は黒崎君を止められない。

怒りのままに動こうとする黒崎君を。



黒崎君を止めたくて、言葉を投げかけようとするが私が話したいことを話せない。

その代わり違うことを話してしまう。

口が勝手に動いて勝手に言葉を発する。

まるで、もうひとりの私がいるみたいな感覚。



「それじゃあ用意ができたところで始めようかぁ♪楽しい楽しい戦いをぉ♪」


「潰してやる。」「覚悟しなさい。」



争い事はよくない。

でも今私達が思っていることはひとつ。


(こいつは絶対許さない!)



こいつは転校してきたばかりの私に優しくしてくれたクラスのみんなを苦しめた。

みんなを守れるような力を持っている私が逃げたらみんなに優しくされる資格なんかない!



「ここからがやっとはじまりだねぇ♪楽しもうよぉ!!」



そう足立が言い放った瞬間に私達の戦いが始まった。



私は黒い男が言っていた「遠くにある物を操る力」を思い出し使ってみようとする。


(あそこにある脚立を.....)


私は普段働いてくれない頭をフルに使って、屋上に置かれていた脚立を動かそうと右手を伸ばし集中する。


(動け!!)


しかし、脚立は少しも動かない。

どうして?

「見えない壁」は作れるのに。



私がそうしている内に黒崎君は足立を睨みながら黒い翼で空へと舞い上がり、足立との距離を詰める。

しかし足立は分かっていたようにその場から消え黒崎君の後ろに回り込む。



「甘いよぉ!甘すぎるよぉ♪」


「甘いのはあなたよ。」



私は脚立を操るのを諦め、伸ばしていた右手に集中して、黒崎君の背中に「見えない壁」を作る。

これで足立の攻撃は通らない。

そう思っていた。



「だから甘いんだよぉ!!!」



足立がそう言った。


(黒崎君に向かったのはフェイント!?)


そう気付いた時にはもう遅く。

足立は一瞬で私の目の前に現れた。

黒崎君がそれに気付き、私を助けに向かおうとしている。



「はははぁぁぁあぁ♪」



足立は私の鳩尾めがけて拳を振るう。

しかし一瞬の事で私は反応できない。

力を使う時間もない。


私は鳩尾を思いっきり殴られる。

私は呼吸ができなくなり倒れこむ。



「足立ィィィィィイ!!!」



黒崎君はさらに加速して笑っている足立に向かう。



「君もうるさいなぁ♪そんなに名前を呼ばなくたって逃げないよぉ?」



足立はまた一瞬で消え、黒崎君の後ろに回り込む。

私は間に合わないとわかっていながら倒れこんでいる状態で黒崎君の背中に「見えない壁」を作ろうと手を伸ばす。

黒崎君も足立のスピードについていけない。



「黒崎く......!」


「君もうるさいだけのばかだねぇ♪」


「ッつ!!!」



足立は笑いながら黒崎君の背中を思いっきり殴ろうとする。

その時足立は言った。



「僕のモーメントアーツの力は移動するだけじゃないんだよぉ♪」



その瞬間、黒崎君の背中を狙っていた拳が消えた。

いや正確に言えば足立の拳だけが瞬間的に加速した。

足立のモーメントアーツは体を瞬時に移動させるだけでなく、体の一部分の動きを瞬間的に加速させることができる。

その加速は「速くなる」どころではなく、「消える」と言った方が正確だ。


その速度から繰り出される拳は私の鳩尾を殴った力とは比べ物にならない力だろう。

そんな力の拳が黒崎君の背中に突き刺さる。



「そらぁ♪!!!」


「ぐあっッ!!!!」



黒崎君はものすごい速さで屋上のコンクリートに叩きつけられる。



私はなんとか呼吸を整えて立ち上がる。

黒崎君の叩きつけられたコンクリートを見るとかなりのヒビが入っていた。

私はおぼつかない足取りで黒崎君の元に走る。



「やっぱりまだだねぇ♪今の君達の力じゃそんなもんだよねぇ♪」



私は足立の言葉を耳にも入れず黒崎君の元でしゃがみこむ。

黒崎君は頭から血を流しながら苦しがっていた。



「黒崎君、大丈夫?」



今思った事をしゃべられた?

しゃべられる。

あれ?さっきまでしゃべられなかったのに。

それに気づいて黒崎君に言葉をかける。



「黒崎君!大丈夫!?」


「ん、あぁ。大丈夫だ....」


「全然大丈夫そうじゃないよ!!」



黒崎君も今はしゃべられるみたい。

どうしてかはわからないけど。



「微笑ましいねぇ♪」



私は足立を睨みつける。

それに対して足立は笑いながらゆっくりこちらに歩いてくる。

私は足立に警戒して黒崎君の前に両手を広げて立つ。



「もうやめて!」


「わかったわかった♪もうやらないよぉ♪」



意外すぎるほど素直な返事が返ってきて力が抜ける。

しかし気は抜かない。



「今君達の力を奪うことくらい簡単にできるけど、今奪ってもあんまり意味ないしねぇ♪」


「どういうこと?」



今力を奪っても意味がない?

意味が理解できない。



「さっき言ったよねぇ?君達が持つ力は僕よりも強い力だってぇ。なのに君達は僕に面白いくらいボコボコにされちゃってさぁ♪」


「そ、それは私達が能力を使ったことないからで.....」


「それは違うねぇ♪白井さんだっけ?白井さんは力を使えたけど「見えない壁」を張っただけだし、黒崎君に至っては覚醒しただけで能力を使ってないんだよぉ?」



そうだ。

私はまだ「見えない壁」しか使っていない。

というかそれしかできない。

さっき「遠くの物を操る力」は使えなかった。


黒崎君は覚醒して容姿は変わったが、力らしい力は使っていない。



「だから今君達の力を奪ったとしてもカスみたいな力しか貰えないんだよぉ♪だから今回は力を奪うのはやめて見逃してあげるよぉ♪僕は優しいからねぇ♪」


「ほ、ほんとうに?」



もしかして助かるの?

いや、今回だけは助かる......か。

次は本気に奪いにくるっていうことだ。



「君達はまだまだ力を使いこなせてないんだよぉ。もっと使いこなせしてもらわないと奪う気にもならないねぇ♪」


「ど、どうやったら使いこなせるの?」



もしかしたら力を使いこなせたらこいつを倒せるかもしれないし、これから襲ってくる敵だって倒せるかもしれない。



「君達の力の使い方を僕が知ってるわけないじゃん♪」



だ、だよね.....。

少し落ち込んでいると足立は倒れている黒崎君を反応させるようなことを言い放った。



「でもねぇ?黒崎君のお母さんなら何か知ってるかもねぇ♪あ、これ言っちゃいけないんだっけなぁ?まぁ、いっかぁ♪」


「か、母さんが?どういうことだ.....。」



倒れている黒崎君の力のない言葉。

そうとうダメージが大きいのだろう。



「そこから先は言えないよぉ♪言ったらあの人に怒られるしねぇ♪」


「あの人?」


「あぁ、また言っちゃいけないこと?あれ?いいのかなぁ?まぁ、いっかぁ♪」



そして足立は私達に背中を向け、顔だけをこちらに向ける。



「あんまり長く話しているとまた余計な事をしゃべっちゃいそうだから僕はこれでいなくなるよぉ♪強くなるヒントはあげたからねぇ?来週の土曜日また君達を訪ねるよぉ♪」


「来週の土曜日!?そんなに早く?」


「大丈夫だよぉ♪あの人は.....おっとぉ♪またしゃべっちゃうとこだったぁ♪あ、それじゃあねぇ♪」


「ちょっ......。行っちゃった。」



足立は色々言っていなくなってしまった。

でも気になるキーワードがあった。

足立が言っていた「あの人」そして「黒崎君のお母さん」。

これは重要な事で間違いないだろう。

それより今は黒崎君を!



「黒崎君っ!」



私は黒崎君に駆け寄り、肩を貸して起き上がらせる。

黒崎君は苦しそうな顔をしている。



「大丈夫っ!?」


「あぁ.....。それより聞いたよな?俺の母さんが何か知ってるって。」


「う、うん。」


「黒い服の男が父親とか言ったりわけわかんねぇな。」



黒崎君は血がでている頭を抑えながら悩んでいる。

私はどうしていいかわからずに俯いてしまう。



「ま、まぁ!今回はこれでよかったよね!!なんか漫画みたいなミラクルパワーもすごかったしね!!」



私はとりあえず明るくしようとしてそんな事を言ってしまった。

すると黒崎君は。



「.....っぷ。ぷっははっは!!......お前はこんな状況なのにのんきだな!」



黒崎君に笑われた。

私は笑う黒崎君を見て頬を膨らます。

少しでも明るくしようとして言ったからいいんだけどさ?

そんなに笑わなくても.....。


でも安心した。

覚醒中の黒崎君怖かったから。


その瞬間に二人の容姿が元に戻った。

どうやら感情が落ち着いて覚醒が解けたようだ。


笑う黒崎君を見て私は言った。



「初めて黒崎君の笑顔見た.....。」



小さな声で言ったはず。

しかし黒崎君に聞こえたようで。



「あ、あぁ。あんまり笑わないからな。そ、それに、その、人付き合いが苦手でな.....。」


「っぷ!ふ.......あはっはっはっ!!!」



なんだか可愛くて今度は私が吹き出してしまった。

そんな私を見た黒崎君も笑いだした。

私達は一緒に大声で笑った。

今までの辛いことがなかったみたいに。




私達は今黒崎君の家に向かっている。

体のダメージが残ってあまり動けない黒崎君に肩をかしながら並んで歩いている。


なんだか黒崎君が近くて緊張する。

い、いや!黒崎君だからじゃなく、男の人とこんな近い距離でしかも二人きりで歩いたことないからだよ!?

すると、黒崎君が急に話しかけてきた。



「白井、これからよろしくな。」


「どうしたの急に?」


「いや、お前が転校してきて初めてあいさつしてきた時あったろ?あんとき俺適当に返事してたからさ。今ちゃんと返した。」


「ちゃんと返すの遅いよーぉ!それに、私の事は「白井」じゃなくて「夢香」って呼んで?」


「え!?」


「ほら!呼んでみてよ!!」


「.....ゆ、夢香。」


「なーに?爽人君♪」


「ちょっ!」


「私もこれからは「黒崎君」じゃなくて「爽人君」って呼ぶからさ!これでお互い様だよ?ね?」


「ま、まぁいいけど...。」


「じゃあもう一回呼んでみてよ!」


「も、もういいだろ!恥ずかしいんだよ....。」


「もう一回だけ!ね?」


「じ、じゃああと一回だけな?......ゆ、夢香。」


「爽人君♪」



なんて事を言いながら爽人君の家に向かった。




爽人君の家に着いた。



「おじゃましまーす。」



爽人君をソファーに座らせて、救急箱の場所を聞いて爽人君の怪我の応急処置をしようとした時、玄関のドアが開いた。



「ただいまー.....ってあれ?女の子?え?って、爽人!?その怪我はどうしたの!?」



お母さんは多分40歳くらいの方だったけどすごく若く見えた。

爽人君のお母さんは怪我をしている爽人君を見て慌てていた。

しかし、爽人君は落ち着いてお母さんにこう言った。



「母さん、よく聞いてくれ.....。俺の父親の事、そして「特別な力」について教えてくれないか?」


「え?」



爽人君のお母さんは驚いていた。

顔にはあまり出さないが心の中ではすごく驚いていると思う。



「わかるよな?何か知ってるんだよな?俺とそこにいるしら.....ゆ、夢香は黒い服の男に突然「特別な力」ってやつを与えられて今さっき変なやつに襲われたんだ。」



爽人君が私を見てきたので私はお母さんの方を見て頷いた。

すると爽人君のお母さんはこう言った。



「そう.....。やっと全部話すときが来たみたいね。確かに私は「特別な力」について知ってるわ。」


「やっぱりか......」


「それじゃあこれから私が話す真実をよく聞いていて。」



爽人君のお母さんは私と爽人君を見て言った。

私と爽人君は真実を受け入れるため深く頷いた。




これからあんなにも驚きの事実が聞かされるとは......










はい!ちゃです!

今回は「黒い王子と白い姫」を読んでいただきありがとうございましたm(__)m



今回は初めての戦闘シーンですね!

初めて書く戦闘シーンですが、戦いの様子をみなさんが想像出来ればと思い、自分なりに分かりやすく書いたつもりであります\(^o^)/


そして二回目の夢香目線!

二人の雰囲気が.......ねぇ?

夢香みたいな性格の女の子を友達に欲しいものですw



次の話はついに爽人の両親についてです!

どんな話が爽人のお母さんの口から出てくるか!

みなさん考えてみてくださいなwww



いつものようにアドバイスや感想を頂けたら嬉しいです!もちろんレビューもですけど.....(チラッ


それでは今回は「黒い王子と白い姫」の第5話を読んでいただきありがとうございましたm(__)m



ブログもよかったら読んでね☆キラッ


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