真白の部屋
辺りが眩しい。朝まで眠ってしまったのだろうか。
カーテンは閉めていたはずだ。なのにやたらと明るい。
困惑しながらも起き上がった大飛は自分の目を疑った。自分の部屋ではない。
夢?
お決まりのように目をこすろうとしようとした手に硬いものが当たる。自分の顔を弄る。
「仮面…?」
それだけではなかった。自分の着ている服。それは道化師の格好だった。
「…!?」
後ろにヒヤリとしたものを感じた大飛は後ろを振り返る。誰もいない。あったのは大きな縦長の鏡。
そこに映っている自分と思わしきそれは、まさしくピエロ。ただ、ごく一般的に思われるピエロの印象とは違く、鮮やかな色をしていない。完全なモノトーンだ。いわば、トランプのジョーカーの白黒版だと、大飛は思った。
試しに右腕を上げてみる。鏡のそれも同じ行動を取る。
「性質の悪い夢だな…」
鏡を見ながら元の方向に向きなおすと今までそこになかった扉が現れていた。
茶色く、金のドアノブが付いている、古風な扉だ。
夢だと思いながらも恐る恐る近づいてみる。頑丈そうな、立派な扉で、古い洋館などにありそうだ。裏へまわってみても特に何もない。
ゆっくり、静かにドアノブに手をかけた。冷たい鉄の感触が手に伝わる。
「夢…なのか?」
怖いもの見たさ。その言葉が今はしっくりとくる。
少し重いその扉をそっと開くと、フワッと柔らかい風が頬を撫でた。
けれど何故か大飛はそれを風だと思わなかった。よくはわからないが、それを「吐息」だと感じていた。
扉の先にあったもの。
漆黒の闇。
それとは真逆な、今居る部屋から伸びる白くまっすぐな一本の道。
思考よりも先に、体が動いた。本能的にと言ってもいいかもしれない。
大飛は道を踏み外さぬよう、ゆっくりと歩き出した。




