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村も町も都市も次々死に見舞われ水に沈んでいく。

目隠しの少女の歌はいつしか絶唱に変わっている。


 ──わたしはここにいる

   胸が張り裂けるほど

   ここにいるのに

   わたしはここにいる

   心臓が抉られるほどに

   ここにいるのに


   わたしを見つけるのは

   鏡の向こうのわたしの目だけ

   いいえ もう

   鏡の向こうのわたしすら

   わたしを見つけることはない



       ***


 山の上の洞窟。

 暗闇で囁かれる不安げな子供たちの声。

「もうみんな沈んでしまうの」

「もうみんな沈んでしまったの」

 ませた女の子の声が返す。

「まだ違うって」


「ねえ、暗いのは怖いの」

「僕、マッチを持ってる」

「大人のいないところで使っちゃダメなのよ」

「平気よ。大人ならいるから」

「嘘つき、大人なんていないよ」

「いるから火をつけても大丈夫よ」


「嘘だよ、あれしろこれしろって言う人なんかいないじゃないか」

「彼、喋らないもの」

「大嘘つき!」

「だったら火をつけて確かめてご覧なさいよ」

「嘘だったら髪の毛引っ張ってやるからな」


 シュッと音がしてひしめく子供たちの顔が浮かび上がる。その中心に大儀そうに死神が座っている。


「死神がいる!」

 明かりがあっという間に消え、子供たちがざわつく中で、ませた女の子の勝ち誇った大声が響く。

「ほーら、彼は大人だから火をつけても大丈夫よ」


「あたしたち、みんな死んじゃったの? お母さんとお父さん、どこ?」

「生きてるわ」

「だって死神がいたじゃないか!」

「彼の仕事、とられちゃったんだもん。仕事がないと奥さんも貰えないって、彼しょげてるわ。──え? もう行くの? だってあなたがいないと明かりがつけられないわ」

 

黒い鬼火が現れ、不気味に洞窟を照らす。小さな子が泣き出す。

「こんな黒い明かりじゃなにもできやしないわ」


死神は困ったようにごそごそとたもとをあさって溶け崩れた蝋燭ろうそくの塊を取り出すが、ませた女の子は眉を吊り上げ腕組みして首を振る。

「そんなの、全然ダメ」


「…………」

ダメ出しに悩む死神。

だが子供の一人が持っているスライムのぬいぐるみに目を留める。

 

ませた女の子が通訳する。

「貸してって言ってる。壊さない、汚さないって指切りげんまんする?」

 

子供は差し出された死神の骨だけの小指を気味悪がってブンブン首を振る。


「死神さん、スライムに謝ってるの?」

「スライムって、実は死神より偉かったのかな?」

「扉になってくれって礼拝してるのよ、静かにして」

「レイハイってなに?」

「丁寧に頼んでるの」


スライムが膨張ぼうちょうし、扉型に変形する。

かちりと扉が開くとともに白い光とシャボン玉があふれ、白ピエロがこわごわ顔を出して子供たちを見るとさし招いた。

 

ませた女の子は扉のこちら側に一人残り、光から逃れるように影に立つ死神に寄り添う。

「あたしはもう大人になるからそっちには行かないわ。彼についていってあげないと。悪い歌には耳栓をするから大丈夫。道を照らすものをくれない? 洞窟の外の世界もとても暗いみたい」

 

死神は舟に乗って、水と霧に覆われた世界へ魔物の腕の少女を探しにいく。ませた女の子がカンテラを持ってお伴する。




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