オーケストラの音
ーここまでの話ー
主人公の成田 将はクラシック音楽が大好きな高校生だった。楽器の経験はないが、オーケストラに所属する人を羨ましく思っていた。大学進学が決定したとき、親戚の伯父さんにホルンを買ってもらった。初心者であったが、毎日必死に練習をした。目指すは大学オーケストラの所属。友達にも協力してもらい、努力を続けていた。
俺は成田 将。今日から大学1年生だ。入学式には多くの学生が来ている。保護者も多い。俺と母は会場に入った後、一旦別れた。生徒席に来た俺はプログラム表を見て驚いた。オーケストラの演奏があるようだ。この大学のサークルだ。俺はここに入る。そう決めていた。
入学式が始まり、学長の挨拶などが淡々と行われていった。そしてついに待ちに待ったオーケストラの演奏だった。曲目は、
・大学祝典序曲/ブラームス
・行進曲『威風堂々』第1番/エルガー
俺は衝撃を受けた。下手すぎる。なんだこれ。弦楽器と管楽器が全く合っていない。音ミスも多い。オーケストラの音ってこんなのだったかな。でも俺が入れそうな楽団はここしかなかった。同時に俺はこのオーケストラに入りたいと思った。このオーケストラを建て直すために。
入学式を終え、母と合流したら母は言った。
「ここのオーケストラに入りたいの? 正直上手とは言えないわ。」
でも俺は言った。
「ここで良い。ここに入りたいんだ。」
俺は誰よりも多くの曲を聴いている。楽器は初心者だが、演奏のアドバイスはできる。そんな気がした。
次の日から大学が始まった。サークル勧誘があった。オーケストラの勧誘はあるかと思ったがその日はなかった。必死に探したがなかった。大学をあちこち行ってみると、ボロボロの看板が見えた。お化け屋敷の看板のようであったがうっすらと「オーケストラはこちら」と書いてあった。微かに音が聞こえる。入ってみると練習していた。曲はブラームスの交響曲第1番か。とても形になっていない。
「どうしましたか?」
声をかけられた。女の人だ。部長のようだ。
「ここに入部を考えているのですが。」
するとその人は言った。
「あら珍しい。このサークルに入る人は中々いないんですよ。ほとんどがOB・OGですから。」
下手な理由がようやくわかった。このオーケストラは忙しい社会人の中からかき集めて成り立っていた。以前は大きなサークルだったんだろう。
「私は教育学部3年の水野 冴子と言います。ここのオーケストラの部長です。」
「ここに入ることはできますか?」
水野さんに聞いてみると、
「もちろん良いですよ。よろしくお願いします。」
すぐに決まってしまった。
初めてのオーケストラ。すごく不安である。ここから俺のオーケストラ人生が始まる。




