祝合格!
俺は成田 将。勉強に集中している。後少しで受験生が終わると考えると感慨深いものがある。ここまで頑張ったことはない。
試験を難なく乗り越えた俺は、東京の市立大学に合格した。合格発表は3月上旬だった。4月6日の入学式までに俺はやりたいことがあった。それは楽器の練習だ。ここで少しでも上達したかった。家には母のヴァイオリンがあった。しかし俺は好きな楽器があった。それは「ホルン」だ。オーケストラの花形楽器。音色を自由自在に操ることができるあの楽器が大好きだった。
ある日、俺の伯父さんが電話してくれた。
「将。祝合格! 良く頑張ったな。俺は嬉しいぞ。」
そして続けて言った。
「合格祝いは何がいいか? 何でもいいぞ。」
この伯父さんは、俺の亡き父のお兄さんだ。父と同じく優しい性格で、俺をいろんな所へ連れていってくれていた。ドイツへの留学を勧めてくれたのも伯父さんだった。そんな伯父さんは言った。
「そう言えば音楽はまだ好きなのか?」
俺は言った。
「もちろん。大学ではオーケストラに所属しようと思っているよ。」
すると、伯父さんは言った。
「おぉそうか。良いじゃないか。どの楽器をするんだ?」
俺は悩んで言った。
「ホ…ホルンがいいな。」
伯父さんは少し考えて言った。
「ホルンか、いい楽器だな。俺も昔吹奏楽をやってた頃に友達が吹いてたよ。その友達は上手でね。」
伯父さんは話すことが大好きだった。長話になった。俺は伯父さんが吹奏楽をやっていたという事実に驚いた。伯父さんは話の最後にこう言った。
「将。来週の土曜日空いているか?」
俺は何のことかわからず思わず言った。
「空いているよ。」
伯父さんは言った。
「そうか。わかった。じゃあな。」
そうして電話を切った。何か楽しそうであったが、伯父さんの思い出話に付き合うのは疲れた。俺はそのままリビングのソファで寝てしまった。
気がつくと、夕方だった。母が少し早く帰ってきていた。
「将。今日はプレゼントがあるの。」
母は私に本をくれた。中を見るとベートーヴェンの交響曲第6番『田園』の総譜だった。
「古本屋で見つけたの。将が好きだった曲だったよね。」
俺は震えた。初めて触った指揮者の楽譜。俺はその日の夜、総譜を読み込んでは曲を何度も聴いた。新しい感動があった。
それから俺は母に教えてもらった古本屋を訪れた。楽譜がいっぱいあった。小遣いはそこまでなかったが、買える限りの楽譜を買った。




