合宿なのに…
ー群馬県ー
俺は成田 将。東京と比べるとかなり涼しい群馬県にやってきた。合宿の経験はなかったので少しワクワクしている。教育合宿を終えて何とか参加できた水野さんは毎年来るこのイベントが一番好きだと言う。
俺は練習場所にくるとすぐにホルンを出した。自然に囲まれた木造の建物であったが天井が高い。ホールに近い環境だった。ホルンを吹けばその音が響き渡る。練習に絶好である。
合奏が始まった。まずは威風堂々。ホルンを始めて半年も経っていない俺にとってかなりハードな曲である。周りの人たちも難しそうである。クラシック音楽としてはそんなに長くはない曲ではあるが、その中にはそれぞれの楽器にとって難易度の高い技術が詰め込まれている。そうしてできた大作だ。
合奏が終わった頃にはもう夕方だった。夕御飯を食べ終わると夜は譜読みをする。自分の分だけでなく、他のパートがどのような動きをしているのかを把握しなければならない。俺は夜中の1時半まで1人で過ごしていた。合宿なのに…。
2日目は運命の合わせだった。様々な楽器が行き交うこの曲は誰でも知っている名曲である。この曲で迫力が感じられるようにするにはホルンという楽器が必須なのだ。気がつくとあっという間に昼になっていた。第1楽章しか通すことができなかった。昼食は水野さんと一緒に食べた。
「楽しんでる?」
楽しめる暇がない。俺は必死だった。学指揮という立場である以上、自分がしっかりできていなければならない。
「正直楽しめてはないです。毎日夜は譜読みに追われています。」
思わずそう言ってしまった。すると水野さんは言った。
「余裕無さそうだね。この前教育実習に行ったときにあるクラスを担当したんだけどね。そのクラスは…」
水野さんは教育実習での話をしてくれた。長い話だったが楽しかった。最後にこう言った。
「子供の頃の純粋な気持ちを忘れたらダメだよ。楽譜に書かれていることはもちろん大事だけど、自分が思ったことを素直に表現してごらん。」
確かにと思った。俺は譜面の記号ばかりに囚われ続けていたのだ。譜面の音をただ演奏するのではなく、表現するのだ。俺はそれに気付いた。
昼からは第2楽章を演奏した。第2楽章はチェロの優しいメロディが特徴だ。その中に管楽器も入っていき、まとまりのある曲となる。俺はこの楽章が特に好きだ。
第2楽章、第3楽章の練習で今日は終わってしまった。今日は早く寝ようと心に決めていたから、すぐ眠った。いよいよ第4楽章、フィナーレだ。




